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15 初クエスト

 俺たちは繁華街に着くと、早速溝掃除に取り掛かる。


 俺が石蓋を取っていき、ミラは横に付けた荷台に浚ったモノを上げていく。

 数年やっていなかっただけあって、溝はかなり汚れている。

 ある程度石蓋を上げた後、俺も浚うのに合流する。


 思ったよりも結構な重労働だが、ミラはどうだろう?

 ミラは涼しい顔をして作業している。

 これは俺も負けてられないな。


 作業をしていると、近くの店の人から「助かるよ、頑張ってね」と、激励をされた。

 直接言われると嬉しいもんだな。特にこれは初クエストだし。

 ミラも笑顔で対応している。


 作業をしていると、あるモノを見つける。

 これは……硬貨だな。

 黙っていればバレはしないだろうが、報酬も貰えることだし…。商工会へ持って行くのが筋だろう。

 俺は一応ミラに相談することにした。


「おーい、ミラ。これどうしよう?」


 ミラは作業を止めて俺の方へ来る。


「なになに~?え、お金じゃない。うーん…担当者に渡したほうが良さそうね」


 ミラも同じ考えだったようだ。

 近くにいた人は「貰ってもいいんじゃないか?」と言っていたが…さすがにな。


「ミラは商工会へ確認しに行ってもらっていいか?俺は作業を続けるからさ」


「わかったわ。こっちはお願いね」


 ミラは商工会へ向かって行った。



 俺はその後も作業を続けていた。

 すると、声を掛けられる。


「あれ?君は昨日の…。お連れの女性は今日は居ないの?」


 手を止めて声のする方を見ると、昨日ミラに絡んでいた男だった。


 げっ……疲れる作業をしているのに、見たくない顔を見るとは…。精神的にも疲れてしまうな。

 昨日とは違い、顔はにこやかではないし、声のトーンも低めだ。

 顔には出さないようにテキトーにあしらうか。


「ああ、どうも、こんにちは」


 俺はテキトーにそう答える。


「それで、今日は女性はいないの?」


 なんなんだよこいつは……。やけに馴れ馴れしいし、別にいなくたっていいだろうが。


「ええ。一緒ではないですね」


「へーそうなんだ。どこにいるの?」


 は?また絡むつもりかコイツ…?


 残念ながら、俺は気が長いほうではない。このまま話していたらどうにかなりそうだ。さっさとどこか行ってくれ。


「あー今日は海の方に行って鍛錬するって言ってましたね」


 テキトーにも程がある。海なんてここからしばらく歩かないとつかないような場所で、往復だと夜になるくらいの距離だ。何言ってんだ俺!


「そ、わかった」

 

 男はそのまま海のある方角へ歩いて行った。 


 え、信じるのか?アホだろコイツ。

 てか、どれだけ執着してるんだよ。キモすぎだろ。絶対に近づけたら駄目なやつだ。



 それから少ししてミラが戻ってきた。

 ミラが言うには、拾ったお金は自分のものにしていいらしい。断ったらしいが、落とした人を特定するのも難しいし、それくらい貰ってしまっても構わないだろうという事だった。

 ただ、明らかに落とし物だと分かるようなものは、商工会に預ける。ということになったらしい。

 お金、貰ってもいいのか…とりあえず、出てきた金は一か所に集めておくか。


 それと、さっきアイツが偶然?来たことを話した。

 ミラは身震いしていた。そりゃそうだよな。よくわからない奴が探してるんだから。

 今回はテキトー言ってはぐらかせたが、次は会った時はキッパリ断ろう。ミラも同意してくれたしな。



 順調に作業は進んでいる。時間はちょうど昼くらいだ。

 俺とミラが休憩していると、商店街の人たちが昼飯や飲み物を持ってきてくれた。ものすごく感謝されてしまった。


 魔物を狩って感謝されるっていうのは分かるが、溝掃除でもこれだけ感謝されるとはな。


 昼飯も貰ったし、食事にしよう。



 昼飯も食い終わったし、作業再開だ。


 作業自体もだんだんと慣れてきて、効率化してきている。

 俺が浚っていって、ミラが後から水魔術で細かい所を掃除するって感じだな。

 掃除し終わったところは臭いもかなり消えている。町の皆も満足のいく仕事になっているとは思う。



 日も傾いてきたな。もう少ししたら、今日の作業は一旦終わりにするか。

 ミラにそう伝えようとしたところで、担当者が来た。


「いやー、お疲れ様です。一日でこんなにも進むなんて…本当に助かります!」


「いえいえ。依頼ですのでしっかりやらないと!」


「ははは、ありがとうございます。今日はこのくらいで上がってもらって大丈夫ですよ。人も増えてきますし」


 周りを見ると、昼よりも人は増えていた。担当者が言うように、今日はここまでにしておこう。

 ミラにも伝え、今日の作業は終了した。


 再び担当者が口を開く。


「それで、その…明日も来てくださいますか…?」


 こっちが本題だったのかな?そう勘ぐってしまうくらいの低姿勢だ。

 俺はミラの方を見るが、ミラも大丈夫なようだった。

 それじゃあ話は早いな!


「ええ、明日もよろしくお願いします」


「本当に助かります。ありがとうございます」


 担当者はペコペコとお辞儀をしている。


 それはそうと…コレどうしよう…。

 俺が見ていたのは、掃除してた時に出てきたお金だ。

 途中で数えてみたが、結構な金額になってしまっていた。額は一万より少し少ないくらいだ。

 貰ってもいいとは言われたが、一応伝えておかないとな。


 俺は担当者に伝えたが、そのまま貰ってしまってもいいとのことだった。

 いや…いいのか?さすがにこの金額だと両手を上げて喜ぶのも躊躇してしまうんだが。元々は誰かの落とし物だし…。


 そういう風に考えていると、俺の顔を見たミラは言う。


「それなら、夜は少し贅沢をして町にも還元しましょう!」


 そうか…それはいい考えだな。

 担当者もいい笑顔で頷いている。

 今夜もいいものが食えそうだ。



 商工会の宿舎へ戻り、風呂に入る。

 やっぱり風呂は最高だ。今日は一日臭かったこともあって、余計にそう思う。

 これから飯を食いに行くし、臭いが残らないようにしっかり洗わないとな。

 

 風呂から上がって、準備をした後ロビーで合流する。


「今日は昨日よりも早い時間だし、どこか行きたいところはあるか?」


「私、冒険者ギルドの酒場で食事がしてみたい!」


 確かに…俺も気になるな。他にも食事処が多いから選択肢から外れていた。


「それじゃ、今日はギルドで食べようか」


「うん!楽しみだな~♪」


 ミラはご機嫌だ。



 冒険者ギルドに着くと、やはり昨日と同じように賑わっていた。


 俺たちはテーブルにつくと、そこそこ高そうなものをいくつか注文した。

 昨日と同じ轍は踏みたくなかったので、最初に量も聞いておいた。そうするとミラは笑っていたな。


 明日からはどういう風に作業するか相談をしながら待っていると、料理が来た。


 これは凄いな…。

 まず最初に思ったのは見た目が豪華って事だ。他の冒険者の人もこちらを見ている。

 匂いもいい。空きっ腹を刺激するいい匂い。これだけでパンが食えそうなくらいだ。

 サラダも彩りが良く、掛かっているドレッシングもあって、より美味しそうに見える。

 ミラも少し驚いているようだった。

 俺たちは早速頂くことにした。


「ん~美味しい♪」


「本当だな。ギルドの酒場がこんなに美味しいとは思ってなかったよ」


 昨日も思ったけど、この町の料理は美味いな。

 村での料理も美味しいが、なんていうか…素朴って感じだ。こっちは客に料理として出されている感じ…か?うまく言い表せないな。



 そんな風に俺たちが料理を楽しんでいると、声をかけられた。


「よう!兄ちゃんたち。いいモン食ってるけど今日は稼ぎが良かったのか?」


 声の主は、俺と同じくらいの身長の大柄な男性だった。


「ええ、なんていうか…まあそんなところです」


 ちょっと返答に困ってしまうな。稼ぎがいいのはそうなんだけど。


「へーそうなのかい。そんなに狩りが上手くいったのか。羨ましいぜ」


「いえ、俺たちは溝掃除をしていたんです」


 隠すことも無いし、普通にそう答える。


「えっ!?そんなに稼げるのか!?おいおい、俺にも教えてくれよ!」


 男性はグイグイと迫ってくる。

 俺は説明することにした。

 一日千ルアな事。宿を貸してくれる事。拾った小銭は貰ってもいい事。それで一万ルア近く貰った事。


 全て話し終えると、「ありがとう!!」と言い、男性は興奮した様子で去って行った。

 ……嵐みたいな人だったな。


 二人で「凄い人だったね」と言い合って食事を再開した。



 食事も終わり、少しの間談笑していると、目の端に見たくないものが映る。


 はぁ……。


 俺は立ち上がり、半ば強引にミラを連れて会計を済ませ、外に出る。

 ミラは困惑していたが、事情を説明すると分かってくれたようだった。


 この町にいる限りはこういうのが続くのか…。そう思うと気が滅入る。



 明日は会いませんように!!!

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