13 気のいい人
俺たちは繁華街を歩いていた。
この時間でもこの辺りは賑わってるな。
やはりここも武器や防具を装備した人が目立つ。
それにしても…料理のいい匂いに混ざって、なんか嫌なにおいがするな。飯時には嗅ぎたくない臭いだ。そんなには気にならない程度だから、まあいいか。
「そういや、何か食べたいものってあるのか?」
「ん-特にないかも。入れる場所ならどこでもいいかな」
店を選ぶ必要がないのはありがたいな。
俺は辺りを見回す。どんなところが良いだろうか。普通の食堂でいいかな?
人が並んでいる店もあるが、待ちたくもないし並んでいない店に入るか。
丁度良く人が並んでいない店をみつけた。
「あそこにするか」
「はーい」
店の中に入ると、外に人は並んでいなかったが客席はいっぱいだった。
ん-どうするかな。また探すか…。
そう思っていると、元気のいい女性の店員さんが話しかけてきた。
「いらっしゃいませー!あいにく今は満席なんですけど…相席でよければご案内出来ますよ!」
「相席か…。俺は大丈夫だけど、ミラは?」
「私も大丈夫よ」
俺たちが了承すると、店員さんはお客さんと話をしに行った。相手の了承を得ているのだろう。
少し話をして俺たちの方へと戻ってくる。
「それではご案内しますね」
了承も得られたようで良かった。俺たちは席へと案内してもらった。
案内されたテーブルに着く。相席の相手は壮年の男性だった。俺たちは軽く挨拶をし、席に着く。
店員さんがメニューを渡してくれる。決まった頃にまた伺いますと言って業務へと戻っていった。
色々なメニューがあって迷ってしまう。でも肉は外せないよな!
値段もリーズナブルで丁度良い。俺は肉の盛り合わせにすることにした。
「決まった?」
「私は決まったわ。肉と魚のプレートね。クレイグは?」
「俺は肉の盛り合わせだ」
「やっぱり…というかなんというか。イメージにぴったりね」
まあ体がでかいからそう思われても仕方ないか。昨日も沢山食ってたしな。
いいタイミングで店員さんが来てくれて注文をした。こんなに忙しそうでも客の動きを見ているんだろうか?二十はあるテーブルを二人で回している。…凄いな。
「ああいう子が好みなの?」
店員さんを見ているとミラがそう話しかけてくる。
「いや、店員さんの動きを見ていたんだ。こんなに忙しそうなのに店を回してるから凄いなって」
「へーそうだったんだ。男の人みんな見てるからクレイグもそうなのかなって」
訝しむような目でこちらを見ている。
周りをみてみると、結構な人数の人が店員さんを見ていた。まじか…。
「いや、違うって!ホントに動きを見ていただけなんだって」
「へー。ふーん。そうなんだ。ふーん」
ミラの目はそのままだが…口は笑いをこらえているようだった。
はめられたぜ!こんな事もしてくるとは!
「からかうのもそこまでにしてくれよ」
「だって、全然動揺しないから見てみたくて。さっきのはちょっと面白かったよ!」
ミラは満足げにそう言う。
隣にいた男性も笑っているようだった。
「いやー、ごめんね。知り合いに似ていたもんだからつい笑ってしまったよ」
そう言い男性が話しかけてくる。
「こちらこそすいません。お食事中に」
俺はそう返す。くそ!俺もいつかお返ししてやらないとな。
「いや、いいんだよ。楽しかったからさ。二人はそういう関係なのかい?」
え?そういう風に見えたのか?
「いえ、違うんです。本当にからかってみただけなので…」
ミラはそう言い、顔を赤くして縮こまってしまった。
「そうだったのか。あまりにも仲良く見えたからさ。ごめんね」
そんな風に見えていたか。会って一日しか経ってないけど、仲は良いほうだとは思ってたが、そこまでに見えていたとは。
「君達も冒険者なのかい?」
「ええ、そうです。今日登録したばかりなんですけど」
「へーそうだったのか。俺もそうなんだ。俺はロニー。よろしく」
ロニーさんはこちらへ手を差し出してくる。
「俺はクレイグ、こっちはミラです」
俺は手を握り返しそう答える。
ミラとも握手をしていた。
「でも、あまり良くないタイミングで冒険者になったね」
「え?どういうことですか?」
ミラは間髪入れずに聞いていた。
「俺も今日来たばかりなんだが、森の中で異変が起きているみたいなんだ。森から出てこようとする魔物も多いから、そいつらを狩りに冒険者が沢山来てるらしい」
なるほどな。冒険者が多い理由はそういうことだったのか。
「普段なら薬草採取とかのクエストもあると思うんだけど、森があの状態だと初級の人たちは立ち入りが禁止されててね。それでも初級で受けられるクエストはあるとは思うんだが…」
うわ…本当にタイミングが悪いな…。
「そうだったんですね…。ロニーさんも討伐で来られたんですか?」
「俺は異変調査の方だな。冒険者だけど、本業は考古学者でね。普段は遺跡を調べたりしているんだけど、ギルドからの調査もたまにやっているんだよ」
「ギルドから信頼されているんですね。私たちも早くそうなりたいです!」
ミラの言うとおりだな。俺たちもギルドから直接の依頼を受けてみたいものだ。
「そう良いものでもないんだけどね…おっと、料理が来たみたいだぞ」
ミラの料理が先に運ばれてくる。いい匂いが漂ってくる。俺の料理も楽しみだ。
俺の料理が運ばれてくる…が、他の客がざわついている。なんだ?
俺の目の前に出されたのは肉の盛り合わせ…のはずなんだが、盛り合わせってレベルじゃない。…ドカ盛りだなこりゃ。
ミラもロニーさんも目をまん丸にしている。
「クレイグ…これ食べられるの?」
ミラは心配そうに聞いてくるが、これくらいだったらなんとか…。明日は腹が重いだろうけど。
「まあ大丈夫じゃないかな?」
「無理そうだったら手伝うよ」
「ありがとうございます」
ロニーさんも心配してくれているみたいだ。
…気合入れて食うか。
◇
俺はなんとか出された料理を平らげた。
ミラとロニーさんは話しながら食べていたが、俺はそれどころじゃなかった。
味自体は美味しかったが、量が多くてほとんど喋ることができなかった。
ミラに合わせて食べきりたかったが流石に無理だったな。
食べきった後は、近くにいた人から「兄ちゃんすげえな!」と、感心されてしまった。
「あの量を食べきるのは凄いね」
「本当にそう思います」
二人も驚いているようだった。あの量だったし、それが普通か…。
「いやー良い食べっぷりだったよ」
「ははは…。ありがとうございます」
正直、喋るのもちょっと苦しい。
「それじゃ、今日は二人の冒険者記念ってことで、ここの支払いは俺がしておくよ」
俺とミラは二人で申し訳ないから――と言ったが、「先輩だから奢らせてくれ」と言って譲ってくれなかった。
三人で店を出た後、ロニーさんとは宿の方向が別だったので、店の前で別れることになった。
「良い人だったな」
「そうね。宿で会った人とは比べ物にならないくらい」
ミラはまだ宿屋で会った人の事を忘れてなかったようだ。しつこかったって言ってたし、そりゃそうか。
「それじゃ、宿に戻ろうか」
「うん。明日から頑張るぞー!」
「寝坊はしないようにね」
「もう!忘れてよー!」
俺たちは冗談を言い合いながら宿まで帰った。
さあ、明日からは本格的に冒険者だ。俺も明日から頑張るぞー!




