12 役得…?
俺たち二人は、パーティーを申請するために改めてカウンターへと向かう。
パーティーの申請も記入するだけの簡単な作業だった。
タグが出来上がるまではもう少し時間が掛かるようだったので、さっき座っていたテーブルへと引き返す。
タグが出来上がるのを待っている間に、冒険者の人の数も増えていった。
入ってきた冒険者は依頼を終えたのか、カウンターへ行き受付の人と話をしている。
こうしてみると冒険者の数って多いんだな…。今までこの町に来ていた時には分からなかったが、今見ただけでも軽く五十人は居る。
冒険者の数が多いってことは、クエストも多いって事なんだけど…。この辺りは比較的に平和なはずなんだけどな。
周りを見ているとミラが話しかけてきた。
「ねえねえ、クレイグは何歳なの?」
そういえば言ってなかったな。
「俺は十八だよ」
「そうなの!?てっきりもっと年上なのかと思ってた」
「え?俺そんなに老けてるか?」
「そうじゃなくて、大人っぽいって意味ね」
そういう風に言われたのは初めてだな。村の皆には子供扱いされてたし。
「そういう事か。んー…ありがとう?」
こういう時はどういう反応をした方が良いんだろうか?
ミラは、どういたしましてといったような顔をしながら微笑んでいる。
「ミラは何歳なんだ?俺とそう変わらないとは思ってたんだが」
「私も十八よ。周りからは下にみられることが多いんだけど」
そう言いながら、ちょっとむくれたような表情をする。
「初対面の時は大人っぽく見えたよ」
「初対面の時「は」って…それじゃあ今は?」
正直少し下に見えるが…。
「年相応じゃないか?」
俺は無難に答えることにした。
「えー、何か無難な答えに走った気がするなー」
何でこういう時だけ鋭いんだよ!!
俺は笑って誤魔化すことにした。
そんな会話をしていると、ギルド職員の人がタグを持ってきてくれた。
出来上がったタグはネックレスになっていた。色は等級と同じ白色。
素材は何だろう?金属っぽくはあるけど見ただけじゃ分からないな。ルークだったら分かりそうなもんだけど…俺にはさっぱりだな。
今後は、これを受付に持って行けば色々とサービスを受けられるようになるみたいだ。
冒険者ギルドは世界機関だから、国を跨いでも通用する。俺たちみたいな旅をするなら必需品だろう。
さっきのパーティー名を決めた時もそうだったけど、実際にタグを手にしてみると、冒険者になった実感が湧いてくる。これから頑張ろうという気にもなってくるもんだ。
前を見ると、ミラも目を輝かせている。俺と同じ気持ちなのかもな。
「これで正式に冒険者ね!明日から依頼頑張ろうね!」
ミラは笑顔でそう言ってくれる…が、クオルには行かなくてもいいのかな?
何日か滞在するとは言っていたが…報告はしなくていいんだろうか?
「クオルには行かなくていいのか?」
俺は不思議に思っていたのでそう聞いてみた。
「ええ、大丈夫よ。試験の期限はまだあるから」
「そうなのか。騎士団への報告の方が先だと思ってたからさ」
「クレイグのお陰で、想定よりも早く討伐することが出来たからね。時間にも余裕が出来たし。ありがと!」
「どういたしまして」
改めて言われると照れるな。
「そういや、宿はどうする?この冒険者の数じゃ早めに宿を取らないと、宿無しになってしまいそうだけど」
「そうね。職員さんに聞いてみましょう」
俺たちは三度カウンターへ向かう。
職員さんに宿の事を聞くが、ギルドの宿はもう満室らしい。こんなに大きなギルドの宿でも満室なのか…。まだ帰ってきてない冒険者もいるのだろう。本当に沢山の冒険者がいるんだな。
他の町に行っても、宿の確保は最優先にした方が良さそうだ。
「ギルド以外の宿を探すしかないな。どういう宿がいい?」
「どこでも…って言いたいところだけど、さすがにお風呂がある所が良いかな。汗もかいちゃったし」
俺もいつまでも汗まみれじゃ気持ちが悪い。女性なら尚更だろう。
「了解。それじゃ、探すか」
俺たちは宿を探すことにした。
◇
ギルドに近い宿を何件か回ったが、どこも満室だった。
こんなに空いている宿が見つからないとは…。しかもほとんどが冒険者の客らしい。ここまで多いとは思わなかったな。
「ギルドからは遠くなるけど、他の場所も探そうか」
「そうね。ここまで空いてないとは思わなかったわ」
ミラも想定外だったらしい。
仕方なく他の宿を探すことにする。
◇
その後も何件か回り、やっとのことで空いている宿を見つけることが出来た。少々お高めの宿だったが仕方ないだろう。
「はぁ…やっと見つけられた…」
「俺も、まさかこんなに空いていないとは思わなかったよ」
俺もミラもクタクタだ。さっさとシャワーを浴びて飯を食いに行こう。
部屋は二階か…。こんなに疲れていたら階段を上るのも億劫になる。
飯を食いに行く約束をして、それぞれ別の部屋に入る。
荷物を降ろし、風呂の用意をする。
ふぅ…昨日とは違った疲れ方だな。俺は大きく背伸びをする。体をベッドに放りたくなるが、汗臭いままじゃ宿の人にも迷惑がかかるだろう。さっさと風呂に入ることにするか…。
◇
疲れていたから長風呂しちまったな。
風呂から上がり、飯を食いに行く準備をする。金は…五百ルアもあれば十分足りるだろう。
そういや、ルアの説明はまだだったな。
ルアってのは通貨だ。これも世界共通だからどこへ行っても使える。
大体は二万ルアで一家族一か月は生活できる。俺は村で暮らしていたから、もっと少なくてもよかったが…。
これからは回復薬や、武器や防具のメンテナンス、夜営用のテントとかも必要になってくるだろうから、ガンガン稼いでいかないとな!
ちなみに、今夜の宿は一泊五百ルアだ。
ルアの説明はこれくらいで良いかな。
さて、ミラももうロビーにいるかもしれないしさっさと行こう。
部屋を出て、階段を下りていく。
ミラは――あ、いたいた。ん?誰かと話してるな。男性だ。知り合いか?
俺はそのままミラの方へ向かう。
「お待たせ」
「あ!もう!遅かったじゃない!」
ミラはそう言って俺の腕を取る。自然とミラの胸が俺の腕に押し付けられる。やわらか…ってそうじゃない!
「どうしたんだ?」
「お一人の様子でしたので、食事のお誘いをしていたんですよ」
ミラが答える前に、ミラと話していた男性が答える。顔は終始笑顔で、声も柔らかい。
ナンパ…か?ミラは美人だしそういう事もあるのか…。これからは早く来ないとな。
「断ったのだけれど…しつこくて困っていたのよ」
俺にだけ聞こえるような声で教えてくれる。
「遅くなって悪かった」
俺も小声で伝える。
「それでどうでしょう?お連れの人もご一緒にどうですか?」
まだ諦めてないみたいだな…。ここは俺がしっかりしないとな。リーダーだし。
「俺たちは予定があるので遠慮させてもらいます」
「君達、白等級みたいだけど…。ボク、紫等級なんだ。一緒にいたほうが良いと思うなぁ」
俺のタグを見たのか、男性はそう言う。
顔はにこやかだが、声のトーンは低くなっている。
なんだコイツは?
確かに格好は騎士っぽい。タグも紫だし、嘘は言ってなさそうだが…。一応視てみるか。
………黒いな。
はぁ……。久しぶりにこんな奴に会ったな。前に会ったのはいつだったか…。村に来た商人だったか。あの商人もいけ好かない奴だったな。村で問題を起こして親父にシメられていたっけか。
こいつも同じような類の奴だろう。付いていくはずがない。
「いえ、遠慮しておきます。さ、行こうか」
俺はミラの手を取り歩き出す。ミラも俺についてくる。男は面食らったような顔をして突っ立っている。
俺たちはそのまま宿を後にした。
◇
少し歩いていると、ミラが話しかけてくる。
「良かったの?相手は紫等級の人だったけど…」
「いいんだよ。ミラも嫌がっていただろ?」
「まあそうなんだけど…」
ミラの嫌がっていた顔を見たのは初めてだったし、これでいいだろう。
「仲間を守るのもリーダーの役目だろ?」
「ふふっ。そうね。ありがと」
さっきまでとは違って笑顔も戻ったようだ。
「腹も減ったし、さっさと飯屋に行かないとな」
「私もお腹減ったー!早く行きましょ!」
そう言って、また腕に抱きついてくる。
意識していないんだろうが、そういうのはちょっと控えてもらいたい。
でも、こんなにいい笑顔でされたら振りほどけないんだよなー。まいったなー。
俺たちは、そのまま夜の町に繰り出して行った。
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