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10 旅の始まり

 小鳥のさえずりで目を覚ます。どれだけ疲れていても大体はこの声で目が覚める。

 俺はゆっくりと起き上がり、今日の事を考える。

 グノットの町へ行き、冒険者登録をして、可能なら依頼まで受けられたらいいな…。

 ………。顔でも洗うか。


 のそのそとベッドから起き上がり、顔を洗いに向かう。向かう途中にミラさんの部屋の前を通ったが、まだ起きている気配はなかった。早朝だし、まだ寝てるか…。

 顔を洗い終え、出発の準備…と思ったが、ほぼ昨日準備していたので、手持ち無沙汰になってしまう。軽く筋トレでもしておくかな…。いつもだったら薪割りもしていたんだが、昨日出発する前にすべて終わらせてしまっていた。


 外に出て、深呼吸をする。少しひんやりした空気が肺の中に入ってくる。ようやく目が冴えてきた。よっしゃ、やるか!

 ストレッチをしてから、軽いランニング・腕立て・腹筋・スクワットをこなす。いつもの日課だ。ここ何年かは、ずっとこのルーティーンが続いている。この後に風呂に入るのがまた格別なんだよなー。旅をしている最中も、出来るだけ続けていきたいもんだ。



 日課が終わり、日もそこそこ上ってきた。

 そういえば、ミラさんが乗せていってもらう予定だった荷馬車の人に断りを入れてこなきゃな。早すぎる時間でもないし、もう行っても大丈夫だろう。荷馬車を持っている家は村でも数件だから、すぐに分かるだろう。


 俺は鍛錬がてら、走って村に降りる。

 何件か訪ねる予定だったが、一軒目が頼んでいた人の家だった。俺は断りを入れると「元気だねぇ。うちらにはマネ出来ないよ」と言われてしまった。やっぱり異常らしい。ついでに、朝飯までいただいてしまった。家にはほとんど食べるものがなかったから、ミラさんの分と二人分ありがたく頂くことにした。


 家に帰り、ミラさんの様子を窺うが、まだ起きていないようだ。顔には出ていなかったが、相当疲れていたのだろう。予定は狂うかもしれないが、急ぎの旅でもないし、俺はそのまま起きてくるまで待つことにした。



 風呂や朝食、色々と準備を済ませて荷物のチェックをしていると、ミラさんが起きてきたようだった。


「おはよ~ございます~」


 今起きたのだろう。寝巻のままのミラさんが目をこすりながら現れる。


「おはようございます。と言っても、もう昼近いですけど」


「えっ!?本当ですか!?」


 急いで外の様子を見るが、日は高くなっている。


「すみません、すみません、寝坊してしまいました!すぐに準備します!」


 さっきの動きとは違って、慌ただしく動き始める。


「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。今日中にはグノットまでは下りることができるので」


 でも~、と言いたげな顔をしていたが、俺はそのまま朝貰った朝食をミラさんに渡す。


「ありがとうございます…」


 素直に受け取ってもらえてよかった。



 ミラさんも準備を済ませ、二人で外に出る。


「はぁ…ごはんもお風呂もいただいてしまって…申し訳ないです…」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


 ミラさんはまだ落ち込んでいるみたいだった。まあそのうち調子も戻るだろう。



 俺は親父の墓へと移動すると、ミラさんもついてきた。


「私もお参りしていきます」


「ありがとうございます。親父も喜びます」


 二人で墓参りを済ませ、出発する。



 昨日と同じように村の皆に挨拶を済ませ、ルークのもとへと向かう。途中でまた、おばちゃんから飴ちゃんを貰ってしまった。おばちゃんとミラさんは仲が良くなってたみたいだったし、会えたのは良かったな。俺はおばちゃんに「しっかり守ってやんな!」と背中をバシバシ叩かれた。



 さて、ルークの工房だ。

 俺は昨日と同じようにドアを開け、呼びかける。


「おーいルーク。いるかー?」


「はいよー。今行くー」


 今日は昨日みたく作業はしていないようだ。すぐにルークが出てきた。


「ずいぶん遅かったな。朝の早いうちに出て行くもんだと思ってたぜ」


 横にいたミラさんが恥ずかしそうにいている。


「…そういう事か」


 ミラさんの様子を見たルークは顔に笑みを浮かべながら言う。


「それはそうと、丁度いい所に来たな。ちょっと待ってろ」


 そう言い残し、奥の方へと消えていく。

 なんだろうか?俺とミラさんは顔を見合わせていた。



 少しするとルークが戻ってきた。


「はいよ」


 ルークが二人に手渡してくれたのはくれたのはサンドイッチだった。


「もうそろそろ昼飯だろ?ちょっと作り過ぎてしまってな。道中食いながら行けよ」


 昼飯は保存食で済ませようと思ってたからこれはありがたい。

 俺たち二人はお礼を言う。



「今度こそ本当の出発だな」


 ルークが口を開く。


「ああ、そうだな。今度戻ってくるときはもっと珍しい素材を持ってくるよ」


「東国のものも忘れんなよ!」


「分かってるって」


 俺たちは笑い合う。


「それじゃ行くよ」


「おう、気をつけてな。活躍も楽しみにしてっから」


「お世話になりました!」


 ミラさんもお辞儀をしている。


「ミラさんも気を付けてな」



 俺たちはルークに別れを告げ、村を出る。

 空も晴れているし、途中で雨に打たれることもないだろう。グノットまではそんなに距離もない。ミラさんのペースに合わせて歩くが、余程の事がない限り夕方までには着くだろう。

 

 道中、数回休憩をはさみつつ、山を下りていく。ミラさんのは俺よりも荷物が多かったから、代わりに荷物を持ったりした。思ったよりも速いペースで山を下りることが出来た。ミラさんも騎士団で鍛えているからなのか、俺が思ったよりもそんなに疲れていないようだった。



 ここまで来ればあと少しだな。もう少しだ、頑張ろう。


「ここまで来たらあと少しですね」


 ミラさんも同じことを思っていたようだった。


「そうですね。ミラさんもグノットで休んでいくんですよね?」


 俺は聞いてみる。


「はい。いろいろとやりたい事もあるので数日は滞在するつもりです」


 ミラさんもやりたい事があるのか。次の日にはクオルに帰るものだと思ってたから、ちょっと予想外だったな。

 

 グノットへの道を歩いていると、ミラさんが乗せていってもらう予定だった荷馬車の村の人と出会う。町での仕事も終わったのだろう。俺たちは挨拶をしてグノットへと向かった。



 さあ、グノットに着いたぞ。


 この町は、大陸の西側ではクオルに次いで大きな町だ。人の行き交いもそこそこにある。村で手に入らない物は大体ここに来れば手に入るって感じだな。町の周りには防壁があって魔物の侵入を防いでいる。大きな町は大体防壁があるって話なんだがどうなんだろうな。まあ世界中を旅する予定だし、自分の目で確かめればいいか。



 ミラさんともここでお別れだな。一日だけの付き合いだったが、濃い一日だったしそれなりに楽しい時間だった。数日は居るって言ってたし、また会うこともあるだろう。


 俺が別れの挨拶をしようとすると、ミラさんは口を開く。


「クレイグさんはこの後どうする予定なんですか?」


「俺は冒険者ギルドに行って登録をするつもりですよ」


 俺はそう答える。


「へーそうなんですね!それじゃあ一緒に行きましょう」


「え?ああ、はい。わかりました」


 グノットに来るのは初めてじゃないから場所は分かってるんだけどな…。無下に断るのも悪いし、ミラさんに案内してもらうことにした。



 ミラさんに案内されて冒険者ギルドに着く。


 建物は、まあでかい。俺の家の五倍はあるんじゃないかって規模だ。酒場もあるって話は聞いたことがある。外から見たことはあるが、中に入るのは初めてだ。

 俺は柄にもなく緊張していた。子供の頃からの夢が叶うと思うと感慨深いものがある。

 俺がそんな風に考えていると、ミラさんが口を開く。

 

「私とパーティーを組みませんか?」










 え?

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