01 旅立ちの日 1
初作品、初投稿です。
拙い文章ではありますが、温かい目で見てもらえると幸いです。
「行ってくるよ」
親父の墓の前でそう告げる。
親父と言っても本当の父親じゃなく、孤児だった俺を拾ってくれた育ての親だ。
生きる術や心得、戦い方を学ばせてもらった。
昔は傭兵団の団長をやっていて、それは強かったらしい。
実際、剣で打ち合っても勝てたことがなかった。
親父が死んだのは1週間前だった。
後天性のマナ……ああ、すまん。マナってのは魔術を使うときに使う力の事な。
マナってのは体に元々あるもので、全ての人にあるものらしい。それによって全ての人が魔術を使うことが出来る、とされている。
普通に使う分には問題もなく、時間が経ったり、寝たりすることで回復するんだが……何らかの形によって過剰な量を体内に取り入れてしまうと、人体にとっては有毒になってしまうものだ。
何でかは知らないが、俺の体には無いみたいだ。俺は魔術を使えないからな。
話がそれてしまったな。
親父は昔、事故に会って、後天性のマナの過多症になってしまった。その話はまた追々することにしよう。
2年前までは元気だったんだ。そこから段々と調子が悪くなっていき、1年前からは寝た切り状態だった。
拾ってくれた恩を返すことも出来ず、いろいろと教えてもらった恩も返せず‥
その言葉を言うと、病床に伏せていた親父が
「俺に付き合わせてすまなかった。これからはお前の好きなようにしろ。ガキの頃、毎日言ってた冒険者になるって夢を叶えて楽しくやれ。お前が幸せなのが一番の親孝行だ」
と言ってくれた。
俺はその言葉を実現することにしたんだ。
それで今日が出発の日ってわけだ。
さて、準備も出来てるし、そろそろ出発するか。
◇
山道を下りて村の方へ向かう。
「この村ともお別れか…」
10年前、俺と親父が流れ着いた時に快く迎えてくれたのが、この村【ペルナ村】だ。
大陸の西端にある山あいの小さな農村で、観光客もあまり来ないド田舎。
村の皆で協力し合っていて、俺と親父は、狩人や木こりのような事をしていた。
初めて獲物を仕留めたときは、村の皆で祝ってくれたっけ。
今となってはいい思い出だ。
少し感傷的になってしまったな。
せっかくの出発の日だってのにこれじゃダメだな。気持ちを切り替えていこう。
そうこう考えている間に村に着いてしまった。
「とりあえず挨拶回りかな」
一通り村の皆に挨拶して回る。
「応援してるよ!」
「頑張れよ!」
「あんたがいないと寂しくなるねぇ」
「たまには戻って来いよ」
皆、応援してくれたり、別れを惜しんでくれる人達ばかりだった。
◇
思ったより時間が掛かってしまったな…
みんな野菜やら何やら持っていけと言っていたけれど、使いきれないからと断るのに時間が掛かってしまった。飴ちゃんだけは貰っておいた。
最後にあいつの工房へ行くか。
頼んでいたアレも受け取らないといけないし。
気持ち足早に工房へと向かう。
途中、幌馬車の行商人の人へ挨拶をしたりしながら向かった。
工房に着きドアを開ける。
「おーい。ルークいるかー?」
――――――。
返事はない。
作業場の方か?
奥にある作業場の方へ向かう。
奥に向かうと目的の人物を発見した。
「いたいた。ルーク来たぞー」
「おークレイグ、やっと来たか。もう少しで終わるから、ちょっとだけ待っててくれ」
こいつはルーク。
年齢は10歳離れてるけど、昔からよくしてくれている友人で兄のような存在だ。
鍛冶の腕前は一流だ…と思う。他の職人の腕がどれだけかは分からないが、狩りに使ってる道具どれをとってみても質が良い。
ルークの手元を見てみると、研ぎ作業の最中のようだった。
「邪魔してしまったな」
「気にすんな。このくらいで集中力は途切れないさ」
そう言い目線を落として作業を再開する。
「んじゃ、カウンターの方で待ってるよ」
「あいよー」
カウンターの方へ戻り適当な椅子に腰かける。
少し待っていると一仕事終えたルークが来た。
「すまんすまん、もう少しで終わる仕事があったからさ」
そう言いながらお茶の準備をしているようだ。
お茶の一杯くらいは時間もあるし、頂いていこうか。
お茶を淹れたルークがやってくる。香ばしい、いい香りが立ち込める。
カップを二人の前に置き、自分もドカッと椅子に座る。
「しっかしまあ、村に来たときはこんなに小さかったのに、今じゃ俺の身長より高いんだもんなー。俺だって身長低くはないんだぞ?」
ルークは胸のあたりに手を当てて言う。
俺の身長は、今ではルークの頭の先が俺の口元くらいにある。
「俺だってこんなにでかくなるとは思わなかったさ」
まあそうだろうな。という顔でこちらを見てくる。
「あの時は親父さんの後ろに隠れてチラチラこっちみてたっけか」
「あまり恥ずかしいことを思い出すなよ」
「いや、可愛かったぞ。今と違ってな」
昔からこういう風にからかわれるのがいつもの風景だ。
まあ、それが心地良くもあるんだけどな。
「それがこうやって独り立ちするってなると‥感慨深いもんだなぁ」
「ジジくさいな」
「うるせぇよ!」
なんて話をしているうちに、カップの中は両方空になっていた。
するとルークは立ち上がって言った。
「んじゃアレ持ってくるから、ちょっと待っててくれ」
書きたいことを書いていたら長くなってしまいました。
2つに分けて投稿します