お隣さんとの呑み時間
ご飯の用意が出来た頃、お隣さんがお風呂から上がってきた。
俺にとっては少し裾が長いシャツも、小柄な彼女にしてみたら膝丈くらいあるワンピースみたいだ。
胸元が少しゆるそうだが、何処がとは言わないが大きいので、ぱっと見ちょうど良さそうに見える。
「温まりましたか?」
お風呂上がりのお隣さんを前に、心臓はバクバクしてた。
少し濡れた髪の毛。儚げなアンニュイな雰囲気。
色っぽいを超えエロっぽい。
ヤバい今にも破裂しそうだ。
そんな心の内を見せないよう冷静を装い、出来る限りの笑顔で尋ねる。
「おかげさまで助かりました。」
「そう言ってもらえると、声をかけたかいがありました。
良かったら、一緒にご飯でも。
えっと、望月さんでしたよね?」
席を勧めながら、確認するように聞くが、俺が間違えるはずがない。
何故なら引っ越しの挨拶の時にもらったお菓子に、部屋番号と名字が書いてあったから。
そして何より一目惚れした相手の名前だから。
名字しかわからないけど。
「あ、はい。
望月 希望と言います。
希望と書いてのぞみと読みます。
えっと、スミマセン。
引っ越しの挨拶に伺った時に、お名前聞いたのですが忘れてしまいまして」
申し訳無さそうに言うが、俺の頭の中は、
希望さん、希望さん。
よし、もう忘れないぞ。
名前を覚えるのにフル活動してた。
しかし奇遇だ。
「早川です。
早川 望です。
希望の望と書いてのぞむと読みます。
名前似てますね。」
「そうなんですね。
何だか親近感湧きますね」
そう言って彼女・・・希望さんは微笑む。
眩しい。
直視できない。
何はともあれ、少しは落ち着いたみたいだ。
良かった。
「あ、どうぞ食べてください。
それと、はい」
そう言って、新しい缶ビールを目の前で開けて差し出す。
「さっき呑んでたのは、捨ててしまったので、代わりになりますが、これも良かったら」
希望さんは、軽く目を見開いて、すぐに微笑んでビールを受け取ってくれた。
「ありがとうございます。
ちょっと気分が落ちてしまってお酒で気分を紛らわせようと思ったら、雨でびしょ濡れになって、さらに鍵までなくしてしまって、ついあんな所で呑んでしまって」
微笑みを苦笑いに変えながら、
「いつもは一缶をゆっくり時間をかけて呑むのですが、一気に呑んでしまって。
醜態をお見せしてしまいました」
そう言って、ビールに口をつける。
「それとバッグ拾ってくれたんですね。
しかも干してまでいただいて。
何から何までありがとうございます」
座ったまま、深々と頭を下げる。
「いやいやいや、困った時はお互い様ですよ」
そう言って俺も一口呑み、ツマミに箸をつける。
その後、希望さんも食べ始めてくれた。
俺が食べ始めるまではと、遠慮してたのだろう。
「あ、美味しい」
「ホントですか?
良かったです。
実は料理好きなんですよね」
「そうなんですか。
私はあまり得意ではないので、料理上手なのは羨ましいです」
しばらく他愛もない会話をしながら、呑み食いをした。
希望さんの、ビールが無くなったみたいなので、もう1本勧める。
別に酔わせてどうしようとかは思っていない。
ホントだよ。
「ありがとうございます。
普段あんまり呑まないのですが、食べ物美味しいから、ついつい呑んでしまいます」
嬉しい事を言ってくれる。
平静を装ってるが、内心はテンションかなり上がってる。
2缶目を空ける頃には、希望さんは目に見えて酔っていた。
もうすぐ日付も変わる時間だ。
名残惜しいけど、そろそろお開きにしないとだ。