瑠璃華の突撃予定日
「あぁ、部屋に居たから大丈夫だよ。」
『ホント?
なら良かった』
「で、どうしたんだ?」
『お兄ちゃんの所に行く日が決まったら、あらかじめ連絡寄越せって言ってたでしょ?』
「て事は、決まったのか?」
洗い物を終えたてあろう希望さんが近くに寄ってくる。
『ん。
今度の金曜日が終業式だから、次の日の土曜から行こうと思ってるんだけど、お兄ちゃんは大丈夫そう?』
どうやら夏休み初日から来るらしい。
「おぅ、次の土曜なら大丈夫だぞ。
泊まっていくんだろ?
何泊くらいする予定だ?」
隣に座った希望さんに聞こえるように復唱する。
『まだ決めてないけど、長めに泊まっも大丈夫って言ってたけど、今でも大丈夫かな?』
「それは大丈夫だけど、オヤジやオフクロはOK出したのか?」
『うん、何だか2人とも忙しいらしくて、しばらくは帰ってこれても夜中になるみたいなんだけど、お母さんは
“お兄ちゃんの所で預かってもらえるなら安心”
って言ってたよ』
相変わらず、仕事の鬼だな。
でも確かに、家で独りは寂しいだろうからな。
『それに、短期でやりたいバイトあるんだけど、お兄ちゃんの所からの方が近いんだよね』
「なるほど、わかったよ。
じゃあ、もしかしたら夏休みいっぱい泊まりに来てるかもしれないって事だな」
話を聞いてた希望さんが、何だか嬉しそうな表情をしてる。
『そうそう。
良いかな?』
「こっちは大丈夫だよ。
希望さんも喜んでるよ」
『っ!
あの女、そこに居るの?!』
あの女呼ばわりはいただけない。
「こらっ、人の事をそんな風に言うんじゃないぞ」
『でも!』
瑠璃華が反論しようとした時に、希望が俺の方に顔を近づけ、
「瑠璃華ちゃん。
約束覚えてるかな?
一緒に買物行くの楽しみにしてるね♪」
俺の口元近くにあるスマホのマイクに、希望さんは唇を近づけ瑠璃華に話しかける。
耳はスピーカーの裏側に寄せて来てる。
近い近い近い。
何だか凄い良い匂いがする。
横向いたらぶつかって、あわよくばキスなどしてしまうんではないか?
それほどに近い。
事故を装ってするか?
イヤイヤ、童貞の俺にはリスクが高過ぎる。
そんな煩悩と戦っていたら、希望さんの顔が離れていく。
どうやら俺が唇に気を取られてるうちに話が終わったみたいだ。
「と、ところで、バイトはいつからなんだ?」
平静を装い、瑠璃華との会話を続ける。
『面接もまただよ。
お兄ちゃんがOKしてくれたら、申し込もうと思ったてたから』
「そうか。
なら、電話終わったら申し込まないとな。
ちなみに何の仕事なんだ?」
『カフェだよ。
オシャレな感じで制服も可愛いの♪』
「なるほどな。
まぁ、良い社会経験になるんじゃないかな?」
俺は、ずっと在宅で仕事してるけどね。
会う人と言えば、担当さんくらいだし。
『うん。
じゃあ、申し込みするから電話切るね』
そう言って、電話は切られる。
「と言う事で、今度の土曜日に瑠璃華来るみたいです。
何時行くかわかりませんが、買物行くときは宜しくお願いします」
「はい、お任せあれ♪」
 




