慌ただしかった週末も終わる
何事もなく夜が明け、瑠璃華の熱も無事下がったままだった。
一緒に朝ごはんを食べ、一緒に買物に出かけ、一緒にお昼ご飯を食べた。
買物は1人で行こうと思ったたのだが、瑠璃華が無理矢理ついてきたのだ。
学校休んでるんだし、午前中の外出は控えたほうが良いと思ったのだが・・・。
一昨日風邪を引いて、反抗期が終わってからと言うものの、反抗期中を取り戻す勢いで、ベッタリが凄い気がする。
嬉しいような、困ったような。
話もたくさんした。
学校の事、普段の事、夏休みはアルバイトしたいということ、他にも色々な話を聞いた。
そんな穏やかな日だった。
突筆すべきことと言えば、お昼ご飯食べてる時に、希望さんから、
『瑠璃華ちゃんはもう帰ったのかな?
夏休み一緒に買物行けるの楽しみにしてるねって伝えてください。』
とメッセージが来たことくらいだろう。
瑠璃華に言ったら、若干嫌そうな顔をしてた。
まだ会ったばかりなのに、希望さんの何が苦手なのだろうか?
まぁ、これから仲良くなってくれると嬉しいのだが。
そうこうしてるうちに、瑠璃華が帰る時間になった。
もともとエコバッグくらいしか持ってきてなかったので、荷物は少なめである。
俺はその荷物を持って、駅まで送っていく。
「帰りの電車で、高校の知り合いに会わないと良いな」
俺の言葉に瑠璃華は、
「そうだね。
もう治ったとは言え、うちとは全然違う方向から乗ってきてるの見られたら、サボりだと思われるよね」
「でも、ほら、高校は義務教育じゃないから、多少のサボりは大丈夫なんじゃないかな?」
「そうだよね。
それにほら、私って普段の行いが良いから、ホントのこと言っても信じてもらえると思うし」
普段の行いね・・・。
当たりキツかったのは俺に対してだけだろうし、今の瑠璃華を見れば、普段良い子はなのだろうと予想は出来る。
「なに?
私が優等生だなんて、そんなわけないとでも思ってる?」
少し考えてた俺を見て、眉をひそめ問われる。
「いや、今の瑠璃華を見れば、普段からちゃんとしてるんだろうなって思ってたよ」
そう言って、隣を歩く瑠璃華の頭をポンポンする。
「ホントに、そう思ってた?」
疑わしそうに聞いてくるが、表情は嬉しそうだ。
そんな他愛のない話をしてるうちに、最寄り駅に着いた。
瑠璃華は、スマホの電子マネーあるから切符はいらないみたいなので、自分の分の入場券だけ買い改札をくぐる。
次の電車が来るまで、あと10分ほどあるみたいだ。
「お兄ちゃん、お願いがあるんだけど」
「ん? なんだ?
瑠璃華のお願いなら、大体の事は聞くぞ」
「相変わらず、全部は聞いてくれないんだね?」
俺の返答に苦笑い浮かべる。
「で、お願いってなんだ?」
「ギュってして欲しいんだけど・・・」
うちの中とかならまだいいが、こんなに人が居るところでハグするのは、結構恥ずかしい。
「いや、それはちょっと恥ずかしいんだけど」
「私も恥ずかしいけど、またしばらく逢えなくなるから」
下を向きながら、寂しそうに言う瑠璃華。
今回会ったのも半年くらいぶりだったのだが、次は夏休みだから、早ければ2週間くらいしか空かないんだけど。
なんか幼児退行したみたいだ。
まぁ、でもそれで瑠璃華が思い残すことなく帰れるなら良いかな?
と、思ってしまう俺にも問題があるのかもしれない。
俺はシスコンなのかもしれないな。
「じゃあ、ちょっとだけだぞ?」
そう言って瑠璃華にむけ手を広げる。
「ん♪」
嬉しそうに腕の中に飛び込んでくる。
俺は優しくハグしながら、オマケで頭も撫でる。
「あ♪」
嬉しそうに小さな声を出す。
「今度来る時は、遅くても2〜3日前には連絡寄越すんだぞ」
「わかったよ。
お母さんに相談しないとだけど、今月末には来ると思うよ。
今度は長めに泊まっても大丈夫?」
上目遣いで言う瑠璃華。
「大丈夫だよ。
ちゃんと着替えと宿題持ってくるんだぞ」
電車がやってくる。
「じゃあ、またな」
そう言って、瑠璃華を離そうとする。
「あ、お兄ちゃん。
ちょっと耳貸して」
「内緒話か?
誰も聞いてないと思うけど」
そう言いながら、瑠璃華の口元に耳を近づける。
チュっ♪
「な」
頬に唇が当たる感触がした。
「じゃあ、また来るね♪」
固まる俺を離し、電車に乗る瑠璃華。
その頬が赤くなってたように見えた。
瑠璃華が乗ると同時に扉が閉まり、電車が走り出す。
「まったく、ブラコンにも困ったものだな」
そう独りごちながら、俺は来た道を帰る。
その夜、仕事終わりの希望さんを晩ごはんに誘ったのは、独りになって寂しくなったからかもしれない。
ここで、この章は終わりになります。
Side瑠璃華は今回無しにしようかな?と思ってます。
次回から、新しい章になるのですが、ストックが全然ないので、転章と言う名で少し尺稼ぎをさせて頂こうかと(^_^;)




