弱ってる妹
お昼近くになっても、瑠璃華が起きてくる気配がないので、冷却シートを持って部屋に見に行くことにする。
トントン
一応ノックをしてみる。
が、返事はない。
出来るだけ音を立てないように中に入りベットを見てみる。
瑠璃華は、まだ寝ているようだ。
近くにより顔を見てみる。
相変わらず、寝苦しいとかうなされてると言うこともなく、スヤスヤと寝ている。
オデコに貼ってある冷却シートを、ゆっくりゆっくりはがし、新しいのを貼る。
「んんっ・・・」
冷たかったのだろう、寝ている瑠璃華から反応があった。
そして、薄っすらと目を開きこちらを見る。
「ん? お兄ちゃん・・・」
まだ寝ぼけているのか、お兄ちゃん呼びだ。
「瑠璃華熱出したんだよ。
具合はどうだ?
どこか痛いとことかあるか?」
ボーッとした感じの瑠璃華が辺りを見回す。
「泊まりに来たんだっけ・・・。
って、おにぃ・・・兄貴!?」
ようやく目が覚めたようだ。
「落ち着け。
余計に熱が上がるぞ」
「え、あ、うん」
飛び起きようとする妹をジェスチャーで抑える。
落ち着いてはいないだろうが、取り敢えず力を抜いて横になる。
「で、具合はどうだ?
どこか痛いところとかないか?」
「頭がボーッとするくらいで痛くはないかな」
「なら良かったよ。
食欲はあるか?
雑炊と桃缶あるけど食べれそうか?」
「ん。
食べる。
お腹空いたよ」
食欲あるみたいで安心だ。
「じゃぁ、今温めてくるから、持ってくるまでに熱計ってて」
そう言って、脇に挟むタイプの体温計を渡す。
正直俺は、非接触型のより、こっちの方を信用している。
体温計を渡しキッチンへ戻る。
鍋を火にかけ、焦げないように混ぜる。
熱いと食べにくいだろうから、ぬるめに温めるか。
温めた雑炊と、レンゲに取り鉢をお盆に乗せ寝室へと運ぶ。
一応、ノックをしてから入ると、瑠璃華はベッドに腰掛けたいた。
「横になってなくて大丈夫なのか?」
「熱計りにくかったし、ご飯食べるなら起き上がらないとだから」
「それもそうだな。
で、熱は何度だった?」
ベッドのサイドテーブルにお盆を置きながら聞く。
「38℃」
体温計の液晶画面をこちらに見せながら言う。
「まだ高いな。
遊びに行けなくて残念だったな」
「別にいい」
「そうか?
まぁ、また何時でも泊まりに来たら良いさ。」
雑炊を取り鉢によそいながら話をする。
「あ、それと今日も泊まって行きな。
オフクロに電話で了解は取ってあるから」
「でも、明日月曜日だから学校が・・・」
「こんな状態で帰すわけにはいかないだろ?
明日は学校休んで、帰るのは治ってからだ」
取り分けた雑炊を差し出す。
「ん」
瑠璃華が、こっちに口を開ける。
今日はずいぶんと甘えん坊だ。
俺は雑炊に息を吹きかけ冷まし、
「はい、あ〜ん」
瑠璃華に食べさせる。
「うっ、ううっ・・・」
突然泣き出す瑠璃華。
「どうした?
熱かったか?
それとも不味かったか?」
俺の質問に、無言で首を振る。
「じゃぁ、泣くほど美味しかったのかな?」
ちょっと苦笑いを浮かべながら、またもや首を振る。
「ゴメンね。
お兄ちゃんは、ずっと私に優しくしてくれてるのに、私はお兄ちゃんに酷いことばかりして」
風邪引いて弱ってるとネガティブになるからな。
「大丈夫だよ。
瑠璃華は、ずっと良い子だったよ。
ちょっとした反抗期なんだろ?
大人になるには必要な事だから気にするな」
「でもゴメン。
ゴメンね。
ずっと謝りたかったの」
「そうか。
じゃぁ、謝罪は確かに受け取ったよ。
で、俺は瑠璃華の事を赦すよ」
俺の言葉に、また泣く瑠璃華。
「ほら、お腹空いてるんだろ?
泣いてないで雑炊食べな」
ティッシュで瑠璃華の涙を拭いて、レンゲですくった雑炊を口元に差し出す。
まだ完全に泣き止んではいないが、素直に口を開け食べる。
「美味しいか?」
「ん、美味しい。
お兄ちゃんの料理は全部美味しいよ」
「そうか。
そう言ってもらえると作り甲斐があるよ」
「ねぇ、お願いがあるんだけど・・・」
瑠璃華が、おずおずと言う。
「なんだい?
瑠璃華のお願いなら、大体の事は聞くよ」
「全部じゃないの?」
意地悪そうな笑顔で言う。
「さすがに、犯罪になることは聞けないからね。
で、お願いってなんだい?」
「またお兄ちゃんって呼んでいい?」
上目遣いで言ってくる。
「さっきからもうすでに、お兄ちゃん呼びになってるぞ?」
苦笑いしながら俺は言い返す。
その言葉に、ちょっとふくれっ面する瑠璃華。
「冗談だよ。
俺も、兄貴よりお兄ちゃんって呼ばれた方が良いよ」
「うん、ありがと」
さて、ずいぶんと素直というか、しおらしいと言うか。
問題は熱が下がった後、この事を覚えているのかどうか・・・。
まぁ、忘れたとしても本音が聞けただけ良いのかな。
「そろそろ桃缶持ってくるよ」
俺はそう言って立ち上がる。
ピンポ〜ン
チャイムが鳴った。
来客予定はなかったはすだが。
「ちょっと出てくるね。
桃缶少し待ってて」
そう言って玄関へと向かった。




