深夜の侵入者
疲れた。
ホント今日は、ただただ大変だった。
まさか、急に瑠璃華がやってくるとは思わなかった。
確かにいつでも遊びにおいでとは言ったが、まさか希望さんとの食事会の日に来るとは。
しかし、瑠璃華って人見知りだったかな?
希望さんに対して、素っ気ない態度だったな。
まぁ、瑠璃華もしばらく遊びに来ないだろうし、あまり会うことも無いだろうから、特に問題は無いかな?
時計を見ると、すでに日付が変わる頃合いだった。
明日は、瑠璃華の朝ご飯用意してあげないとだな。
9時半頃に買い物に出掛けるって言ってたな。
起こす必要はないって言ってたけど、7時くらいまでに起きてこないようだったら、起こしたほうが良いかな。
段々と眠さに思考が鈍ってく。
カチャ
ドアの開く音が聞こえた気がする。
いつの間にか寝てたらしい。
今何時だろう。
薄目を開け、視線だけで時計を探す。
いつもの部屋ではないから、見つからない。
トスン
ゴソゴソ
布団に誰か入ってくる。
誰かと言っても、瑠璃華しかいない。
寝ぼけて入ってきたのだろう。
そう言えば、実家ではトイレの側が瑠璃華の部屋だったな。
その感覚で入ってきたのかな?
俺は、寝返りをうち瑠璃華の方に向く。
すでに寝息を立てている。
起こそうか迷ったが、ついつい瑠璃華を見つめてしまう。
(中学に上る前までは一緒に寝てたな。
懐かしい。
寝顔だけ見ると、まだまだあの頃のままだな)
うちは両親ともに仕事が急がしかった。
親父は俺らが起きる前には仕事に行き、俺らが寝た頃に帰って来てた。
オフクロも、俺が小学校に上がる頃に仕事に復帰し、瑠璃華の面倒は、ほとんど俺が見ていた。
学校帰りに保育園に寄って一緒に帰ったり、オフクロが仕事で遅くなる時は、2人で晩ごはんを食べる事もしょっちゅうだった。
だからか、瑠璃華は俺にべったりだった。
どこに行くにも一緒について来たがっていた。
俺も瑠璃華を可愛がっていた。
だからこそ、瑠璃華が中学生の時のあれはショックだった。
瑠璃華にとって俺は、兄であると同時に親でもあったのだろう。
だから今は反抗期なんだろうなと思っている。
「いつになったら反抗期終わるのかな?」
瑠璃華が起きないように、小さな声でつぶやく。
そして、寝てるのを良いことに、昔みたいに頭を撫でてみる。
相変わらず、触り心地が良い髪だ。
昔は、風呂上がりに良くドライヤーをかけ、髪を梳かしたものだ。
何度もゆっくり撫でてると、
「んん・・・」
くすぐったそうに頭を動かし、俺に引っ付いてきた。
起こしてしまったかな? と、ビックリした。
でもそれ以上動く気配がないので、俺は瑠璃華の寝息を聞きながら、再び頭を撫で始めた。
いつもこうだと可愛いんだけどな。
今日はこのまま寝かせよう。
そして、朝は瑠璃華より早く起きよう。
瑠璃華が先に起きて、俺に引っ付いて寝てる事を知ったら、何言われるかわからないからな。
俺、何も悪いことしてないけどね。
最悪、今まで手を出されたことはなかったけど、今回は引っ叩かれるかもしれない。
「おやすみ、瑠璃華」
「お兄ちゃん・・・」
小さな声で呼ばれた気がした。




