逢いたかったお兄ちゃん Side瑠璃華
ついに来てしまった。
お兄ちゃんの部屋。
まずは、チャイムを押す前に、身だしなみのチェック。
昔お兄ちゃんが褒めてくれた、自慢の長く黒い髪。
乱れ無し。
お兄ちゃん好みの清楚系の服、ゴミやホコリ無し。
ナチュラルメイク、落ちてない。
本当は、お兄ちゃんは化粧好きじゃないみたいだけど、昨日の夜は眠れなくて薄くクマが出来てたので、仕方無しに化粧で誤魔化すことにした。
深呼吸。
大きく息を吸って〜、吐いて〜、吸って〜、吐いて〜。
一通り確認したあと、震える指でチャイムを押す。
反応なし。
外出中なのかな?
もしそうだとしたら困ったことになる。
ちょっとそこまで買い物なら良いけど、最悪今日は帰ってこないとか言われたら泣きたくなる。
取り敢えず、もう一度チャイムを押そうと思ったた時、
「は〜い、今出ますよ〜」
部屋の中から声が聞こえた。
お兄ちゃんの声だ。
間違えるわけがない。
すぐにドアが開く。
「遅い!
バカ兄貴、いつまで待たせるの!?
熱中症で倒れたらどうしてくれるの?!」
私の顔を見てフリーズしてるお兄ちゃん。
面白いかも。
「ほら、暑いんだから早く入れて」
そう言って有無を言わせず中に入る。
リビングはクーラーが効いてて涼しかった。
「で?
連絡もなしに急に何しに来たんだ?」
お兄ちゃんが聞いてくる。
あぁ、お兄ちゃんの声久しぶりだぁ。
逢いたかった。逢いたかったから来ちゃった。
昔みたいに、ハグしたい、ハグしたい、ハグしたい・・・。
「なによ。
可愛い妹がサプライズで遊びに来て嬉しくないわけ?」
自分の本心を隠すように強い口調で言ってしまう。
「嬉しくなくはないが」
じゃあ、嬉しいってこと? お兄ちゃん?
ニヤけそうになる顔を引き締める。
「まぁ良いわ。
お母さんが、兄貴に色々持ってけって」
嘘だ。
お兄ちゃんに逢いたくて、母を説得したのだ。
「ホント重かったんだからね。
『休みでゴロゴロしてるんだったら、ちょっとコレお兄ちゃんの所まで届けてちょうだい』
とか言ってさ。
私だって色々用事あったのに」
大嘘だ。
用事なんか何もないし、お母さんにそんな事言われてない。
それに、お兄ちゃんに逢いに行くためなら、例えば他の用事があっても放っておく。
いけない、いけない。
まずは持ってきたものをしまわないと。
「勝手に冷蔵庫に入れるからね。
ついでに何か飲物もらうよ。
喉渇いちゃった」
冷蔵庫を開け、お茶の入ったボトルを取り出す。
シンクの中にあったグラスを見つけ、軽くゆすぎお茶を入れ一気に飲む。
お兄ちゃんの使ったグラスだぁ♪
間接キスし放題♪
洗ったフリでもしないとだから、水を少しだけ入れて底を軽くゆすげばバレないよね。
一気に飲んじゃったから、もう1杯はゆっくり飲も。
お茶のボトルをしまい、持ってきたものを入れ始める。
なんか大きめのボウルが入ってて、モノが入れづらい。
「何このボウル?
あっ、今晩ハンバーグ?
ご馳走様♪」
お兄ちゃんのハンバーグ。
昔作ってくれたハンバーグ美味しかったなぁ。
まさか私のために?
いやでも、あの反応だとお母さんも連絡してないはずだし。
そうすると、たまたまって事か。
でも、たまたまで私の好きなハンバーグだなんて、これはやっぱりもう運命だよね♪
「いやいや、瑠璃華の分は無いぞ。
来るの知らなかったし。
それに晩飯食べてったら、家に帰り着くの遅くなるだろ。
あんまり遅いと帰り道色々心配だよ」
どう見ても、タネは2人分以上あるのに。
でも、心配してくれるお兄ちゃん、やっぱり好き。
「あ、言い忘れたけど、今日泊めてもらうから。
せっかく交通費出してもらったんだし、明日帰りに渋谷で買い物して帰るつもり。」
私の発言に、さらにビックリするお兄ちゃん。
ここまで言えば、もう帰れなんて言えないよね。
「いやいや、俺にも予定ってもんがあるんだから。
第一、着替えとかないんじゃないか?」
まだ食い下がるか。
だけど大丈夫。
「着替えなら、そのエコバッグの下の方に、別のバッグに入れて持ってきたから大丈夫。
それにどうせ、彼女も友達も居ないんだろうし、予定が〜とか言ってもホントは何も無いんでしょ?」
ちゃんとその辺も抜かりなしだ。
「いや、彼女は確かにいないけど、友達なら高校時代にだな・・・」
良かった。
まだ彼女はいないらしい。
私が知らないうちに、彼女なんて出来たらどうしようかと思った。
「で?
その友達とは、高校卒業してから何回くらい遊んだの?」
私の言葉に、もう反論してこないお兄ちゃん。
ゴメンね。
ホントはお兄ちゃんに、こんな事言いたくないんだよ。
でも、やっと逢えたお兄ちゃん。
少しでも長く一緒に居たいと思うのは間違いじゃないよね。
「ま、そう言うわけで宜しく〜。
明日、買物したら1度ここに戻ってくるから、荷物は置かせてね〜」
お兄ちゃんは、目をつぶって上をむいている。
考え事をしている時のクセだ。
自分にきつく当たる妹が突然遊びに来て、しかも泊めろと言ってきたのだ。
色々考えるだろう。
ピンポ〜ン
そんな事を考えてると、チャイムが鳴った。
「はぁ〜い」
お兄ちゃんの方を見たが、ん?って感じの顔をしてたので代わりに出ていった。
「はぁ〜い。
どちら様?」
玄関ドアを開ける。
するとそこには、なんかもう小柄で凄く可愛い女性が立っていた。
身長は私より低く、丸い大きな瞳、茶色のウェーブかかったフワフワな髪、そして服の上からもわかる大きな胸。
誰だこの人は。
お兄ちゃんの知り合いか?!
敵か!
「スミマセン。
望さん、いらっしゃいますでしょうか?」
お兄ちゃんの下の名前呼んでる!
知り合いで間違いはないだろう・・・。
「え、あ、はい」
頭の中が混乱してる。
お兄ちゃんを問い詰めないと。
私は、急いでお兄ちゃんのところに行き、
「ちょっと兄貴!
なんかスゴイ可愛い人が兄貴に用があるって来たんだけど!」
そう言うと、お兄ちゃんは玄関へと向かった。
誰だあの人は?
お兄ちゃんの知り合いなのは確かだろう。
彼女はいないと、さっき言ってたから彼女では無いだろう。
美人局?
宗教勧誘?
高いツボ売りつけようとしてるとか??
お兄ちゃんは優しいからありえる。
何にせよ、お兄ちゃんを狙ってるなら、あの女は敵だ。
お兄ちゃんは私のだ。
誰にも渡さない!
お兄ちゃんを騙そうとしてるなら、私がお兄ちゃんを護らないと!
どっちにしろ、あの女は排除しないと!
お兄ちゃん、私が護るからね。
お兄ちゃんの事ちゃんと護れたら、私の事見直してくれるかな?
『俺には瑠璃華が居ないとダメみたいだ』
とか言ってくれるかな?
そしたら私が、
『ホント、兄貴は私が居ないとダメなんだから。
仕方ないから、ずっと一緒にいてあげる』
とか言っても大丈夫かな?
“兄貴”呼びじゃなくて、やっぱりその時は“お兄ちゃん”って言ったほうが良いかな?
長かった瑠璃華サイドも、ようやくひと区切りしました。
次はまた望視点に戻ります




