今度こそデザートタイム
お湯沸くくらいの時間を空けてから戻ろうかとも思ったが、結局俺はすぐに戻って行った。
少しでも早く、少しでも長く一緒に居たかったからね。
「ただいま戻りました」
キッチンでお湯を沸かしてる希望さんに挨拶をする。
「お帰りなさい。
お疲れ様でした」
うむ。
やっぱり、これは結婚か同棲してるな。
「今お湯沸きますので、座って待っててくださいね」
笑顔の希望さん。
プライスレス。
何か手伝おうかと思ったけど、言われた通り座っていることにした。
そして希望さんを眺める。
眺める。
眺め・・・、
「そんなに見られると照れてしまいます」
バレてた。
「す、すみません」
慌てて視線をそらす。
「ふふっ、お茶入りましたからケーキ食べましょうか」
紅茶を置いた後、冷蔵庫からケーキの箱を持ってくる。
「なんのケーキか楽しみです」
楽しそうに箱を開ける。
「チョコと、これはラズベリーですか?」
「確かオペラと、ラズベリームースケーキだったはずです。
何が良いかわからなかったので、お店の人気ナンバー1・2を買ってみました。
好きな方選んでください」
「どっちも凄く美味しそうで迷ってしまいますね♪」
迷ってる姿も可愛らしい。
もう両方食べてもらいたい。
「じゃあ、ラズベリームースケーキ貰いますね♪」
ケーキを小皿に乗せ、オペラを俺の前に置いてくれた。
希望さんも席についたので、
「「いただきます」」
今回はすぐにフォークを持って、食べ始めた。
今度は俺が希望さんを見つめる。
「甘酸っぱくて美味しいです♪」
希望さんご満悦。
俺も一口食べてみる。
「こっちも甘さ控えめで美味しいですね。
紅茶によく合います」
「そうなんですね♪
あ、良かったらムースも一口どうぞ
はい、あ〜ん」
そう言って、フォークに一口分乗せ、俺の方に差し出してくる。
え!? このまま食べて良いの! 間接キ、キ、キッスですが!?
童貞の俺には刺激が強い。
が、このまま待たせるわけにもいかない。
俺は意を決して、フォークにむかって口を開ける。
ちなみに、恥ずかしさのあまり目は固くつぶっている。
希望さんがフォークを口に入れてくれる感触がある。
口を閉じ、目はつぶったままケーキを味わう。
味わってるのはケーキであって、間接キスではない。
いや、ホントだよ。
「美味しいです。」
それしか言えない。
目を開けると、希望さんが、微笑みながらこちらを見ている。
きっと俺の顔は真っ赤だろう。
恥ずかしい。
「ふふっ、真っ赤になって可愛いですね♪」
希望さんが微笑む。
可愛いのは貴女の方です。
「お礼に、こっちのも一口どうぞ。」
俺は仕返しとつもりで、ケーキを一口分フォークに刺し、希望さんに差し出す。
ちょっと驚いた顔をした後、笑顔でケーキを口にする。
照れてる様子はない。
「これも美味しいですね♪」
そう言って微笑む彼女の耳が赤くなってるのを俺は見逃さなかった。
しかし、これはもう付き合ってると言っても過言ではないのだろうか?
昔高校時代に、男女問わず飲み物の回しのみとかした気がするが、それはきっと記憶違いだろう。
都合の悪い記憶には消えてもらわないと。
ちなみに、ケーキはいつの間にか食べ終わっていたし、なんなら二口目以降の味なんて覚えてなかった。
当然の結果だよね。
その後は、自分のことに関して色々聞かれた。
趣味を聞かれたので、ラノベとアニメ鑑賞と素直に答えた。
仲良くなれたら、いつかはバレるだろうから、今のうちに言っておいた方が良いと思ったのだ。
でも希望さんは、高校の頃友達に勧められて色々ラノベは読んでいたらしく、当時読んでたラノベの話で意外と盛り上がった。
俺に妹がいると知ってからは、妹についての話に変わっていった。
そんな至福の時間も何時かは終わる。
時計を見ると、もう結構いい時間だ。
「こんな遅くまでスミマセン。
今日はご馳走様でした。
お礼に、今度は俺にご馳走させてください」
そう言って立ち上がり玄関に向かおうとする。
「今日のは、この間のお詫びなので、お礼だなんてそんな・・・。
それに今日だって、ケーキご馳走になったり、割れたグラスとかも片付けてもらってしまって」
「いやいや、お詫び以上に良くしてもらいましたので、ご飯作るの面倒くさいなぁ〜、と思った時にでも連絡ください。」
「そこまで言っていただけるなら、仕事忙しくて大変な時にでもお願いしようかな?」
笑顔でそう言う希望さん。
眩しいっす。
「ぜひ♪
お昼休みにでも連絡もらえれば♪」
短い動線、すぐに玄関に着く。
靴を履き振り返り。
「では、ご馳走様でした。
お休みなさい」
挨拶をしドアを開ける。
「はい、わかりました。
その時は宜しくお願いしますね。
お休みなさい」
そして独り寂しく自室に戻った。




