約束の時間〜ディナータイム〜 Side望月希望
ピンポ〜ン
チャイムが鳴った。
約束通りの時間だ。
玄関ドアを開けると、早川さんがかしこまったように立ったいた。
見ただけで緊張してるのがわかる。
「いらっしゃいませ」
「ほ、本日はお招きいただき有難うございしゅ。
これ、ケーキ買ってきたので、良かったら食後に一緒に食べましょう」
途中で噛んでる。
ちょっと可愛いかも?
そしてケーキは嬉しい。
甘いモノが嫌いな女性は少ないと思う。
私も例に漏れず甘いモノ好きなのだ。
彼をダイニングテーブルに案内し、椅子に座って待っててもらう。
冷蔵庫にケーキを入れ、代わりにサラダを取り出しテーブルに置く。
もう一度冷蔵庫を開けマヨネーズとドレッシングを出し、大事な事に気付く。
「スミマセン。
福神漬やらっきょうを用意するの忘れてました」
そう、買い忘れたのだ。
昔作った時も買い忘れ、母に怒られたことを思い出す。
基本的に、母も兄も漬物系は食べない。
当然のように、福神漬もらっきょうも食べないのにも関わらず、酷く怒られたのだ。
思い出したら涙が出てきた。
でも、父は私のカレーを味わうのに、余計なものはいらないと言ってくれた。
「大丈夫ですよ。
俺、らっきょうは苦手ですし、福神漬もいつも思い出した時に買うくらいで、無ければ無いで全然OKです」
彼は優しい笑顔でそう言ってくれた。
父と同じで本当に優しい。
母とは大違いだ。
「だから、ね?
早く希望さんのカレー食べたいです。
実は俺、楽しみすぎて昨夜寝れなかったんですよ。昼寝したから元気ですけど、今日のお昼ごはんも抜いちゃいました
だからお腹ペコペコです」
それは大変だ。
いっぱい食べてもらわないと。
「じゃあ、大盛りにしますね」
あの時の父は、おかわりをしてくれた。
早川さんは若いから、父よりも食べるだろう。
3杯分くらいあった方が良いかな?
ドンッ。
ゆっくり置いたつもりが、思ったより音が出た。
カレーを見た彼は少しビックリした顔をしている。
やっぱり少し多かったかな?
私のカレーを見た彼が、
「ずいぶん少ないみたいですけど、もしかして俺のを大盛りにしてくれたから無くなっちゃったんじゃないですか?」
そう聞いてくる。
「大丈夫ですよ。
カレーはまだありますので。
せっかくケーキを買ってきてもらったので、その分空けておきたかったので。
さぁ、お腹も空いてるみたいなので食べましょうか」
「「いただきます」」
カレーを食べようとする彼を見つめる。
美味しく出来たと思うが、彼はとう思うだろうか。
好みに合うのだろうか。
私が見つめる中、彼が一口食べる。
「んっ。
スゴイ美味しいです♪
辛さも、ルーの硬さも俺好みです♪」
そう言ってくれる彼と父が被る。
「良かったぁ♪
あまり料理しないので、心配してたんですよ」
「いやいや、ホント凄い美味しいですよ♪」
そう言って、勢い良く食べてくれる彼を、また見つめ始める。
「全然食べてないんじゃないですか?」
私の視線に気付いたのか、食べてる様子がないのに気付いたのか、こちらを見て言う。
「夢中で食べてくれるの見たら、嬉しくなっちゃって」
半分ホントで半分嘘だ。
 




