突撃!隣の晩御飯
ピンポ~ン。
チャイムを押すと、すぐにドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
笑顔で出迎えてくれる希望さん。
今日も相変わらず可愛い。
さらに破壊力を増すのが、何とエプロン姿なのだ!
私服の上にエプロン。
たかが1枚装備が増えただけでこのダメージ。
俺は今日、生きて帰れるのだろうか。
「ほ、本日はお招きいただき有難うございましゅ。
これ、ケーキ買ってきたので、良かったら食後に一緒に食べましょう」
軽く頭を下げ挨拶をし、ケーキが入った箱を差し出す。
噛んでしまった。
顔が赤くなるのがわかる。
「ふふっ、そんなかしこまらくても」
笑われた。
噛んだことはスルーしてくれるみたいだ。
良かった。
「それとケーキありがとうございます。
どんなケーキか楽しみです。
さ、立ち話もなんですし中へどうぞ」
希望さんに促され、玄関に足を踏み入れる。
カレーの香りがする。
きっとこの前、好きな食べ物聞かれた時に、カレーと言ったから作ってくれたのだろう。
嬉しい。
独り暮らしだと、量が多くなるので、なかなかカレー作れないから、手作りカレーは久しぶりだ。
リビングのダイニングテーブルに案内され、
「すぐに準備しますので、座って待っててください」
と言われたので、大人しく椅子に腰掛けた。
テーブルには、すでにグラスと取皿、それとスプーンとフォークが置かれていた。
希望さんは、冷蔵庫からサラダボウルを出しテーブルに置き、マヨネーズとドレッシングを持ってくる。
「飲み物は何が良いですか?
と言っても、烏龍茶か缶ビールしかないんですけど」
「あ、じゃあ烏龍茶でお願いします」
「わかりました」
烏龍茶を持ってきて注いでくれた。
希望さん、手づから入れてくれた烏龍茶。
飲むのがもったいない。
「あっ」
烏龍茶を冷蔵庫にしまっていた希望さんが小さく声をあげる。
何かあったのだろうか?
すごい悲しそうな、泣きそうな顔をしながらやってきて、
「スミマセン。
福神漬やらっきょうを用意するの忘れてました」
謝られた。
目尻には涙が浮かんでる。
正直、らっきょうは苦手だし、福神漬はあっても無くても気にしない。
むしろ、希望さんに泣きそうな顔させるヤツラは存在しなくて良いと思う。
いや、まぁ、今回は存在しないから泣きそうになっているんだが。
いや今は、そんな事考えてる場合じゃない、1分1秒でも早く
『福神漬やらっきょうなんかより、貴方の笑顔の方が大事です』
と言わないと。
「大丈夫ですよ。
俺、らっきょうは苦手ですし、福神漬もいつも思い出した時に買うくらいで、無ければ無いで全然OKです」
出来る限りの笑顔で言う。
さすがにさっきのセリフは言えなかった。
しかし、希望さんは、買い忘れたら泣きたくなるほど、らっきょうや福神漬が好きなのか?
だとしたら、存在しなくて良いなんて言ってゴメン。
「だから、ね?
早く希望さんのカレー食べたいです。
実は俺、楽しみすぎて昨夜寝れなかったんですよ。昼寝したから元気ですけど、今日のお昼ごはんも抜いちゃいました
だからお腹ペコペコです」
俺はおどけた感じでお腹をさすりながら言う。
お腹空いてるのは本当だ。
希望さんは、ちょっと驚いた感じに目を開き、すぐに笑顔になり、
「じゃあ、大盛りにしますね」
と言って、ごはんをよそいに行った。
笑顔が戻って何よりだ。
持ってきてくれたカレーライスは特盛だった。
決して乱暴に置いたわけではないのに、ドンッて音がした。
俺の感覚では、3人前くらいあると思われる。
果たして食べ切れるだろうか。
向かいに座る希望さんの前には、1人前あるかどうかのカレーライスが置いてある。
足りるのだろうか?
まさか、俺のを特盛にしたから自分の分が無くなったとか?
「ずいぶん少ないみたいですけど、もしかして俺のを大盛りにしてくれたから無くなっちゃったんじゃないですか?」
念の為聞いてみる。
「大丈夫ですよ。
カレーはまだありますので。
せっかくケーキを買ってきてもらったので、その分空けておきたかったので。
さあ、お腹も空いてるみたいなので食べましょうか」
なるほど。
しかし俺は、この量を食べてケーキの入る隙間が残ってるだろうか?
でも、きっと残したら希望さんが悲しむ。
彼女を悲しませるようなカレーは駆逐してやる。
いざ尋常に!
「「いただきます」」




