やっぱり、まだまだお隣さん?
あの出来事から数日たった。
が、俺は未だにメッセージを送れずにいる。
正確には、交換した日の夜に希望さんから、改めてお礼のメッセージが来たので返信しだけだ。
もっとお近づきになりたいが、送るほどの内容が思いつかない。
コミュ強なら、もっと色々と話題もあるのだろう。
だか俺は、決してコミュ障ではない。
・・・ないと思う。
学生時代は、男女ともに友達はいた。
ただ、広く浅い付き合いだったから、グループでやり取りすることは多々あったが、なかなか女子と一対一でメッセージのやり取りをする事はなかったし、特別な感情を持っていた訳でもないから、連絡を取る必要もなければ特に取りたいとも思ってなかった。
だが今は違う。
せっかく連絡先を交換したのだ。
出来れば雑談出来るレベルまでレベルアップしたい。
でも、雑談メッセ送って、
『うわ、こいつ特に用もないのに送ってきた』
とか思われたらツラい。
泣いてしまう。
そんな悶々とした数日を送ってたせいで、仕事が進まない進まない。
今日も大したこともしないうちに昼になってた。
困った。
ポ~ン
持ってたスマホが突然鳴った。
「うおっ!」
滅多に鳴らないので、ビックリして思わず放り投げそうになった。
いや、滅多に鳴らないだけで、たまにはメッセージも電話も来るよ。
親とか・・・。
妹とか・・・。
出版社の担当さんとか・・・。
学生時代の友達・・・は滅多に来ないな。
投げそうになったスマホの通知画面を見ると、なんと希望さんからだった。
噂をすれば何とやら。
焦る気持ちと動揺する指先を押さえアプリを開く。
『この前はありがとうございました。
今度の土曜日の夜は予定空いてますか?
ご一緒に食事でもどうでしょうか?
良ければ、この前のお礼の意味も込めて、ご馳走させて頂きたいです』
かしこまったメッセージと、可愛いキャラのスタンプが送られてきてた。
希望さんに似た髪型の、アニメキャラをデフォルメしたスタンプだ。
堅めの文章とスタンプのギャップが可愛い。
可愛いしか出てこない。
俺の語彙力が死滅したらしい。
と言うか、即既読つけてしまった。
余程暇か、メッセージ来るのを待ってたと思われないだろうか。
恥ずかしい。
なんて返そう。
もちろん、断るなんて選択肢ははなから存在しない。
どう返事をすれば印象良くなるだろうか?
物書きして生活してるのに、希望さん相手にはポンコツになるらしい。
(あぁ、既読つけたのに返事遅いと失礼になりそうだ)
頭をフル回転させ、
『ありがとうございます。
是非ご一緒させてください。
土曜日が楽しみです♪』
と、差し障りのない文章を送る。
物書きなのに気の利いた文章書けないとは・・・情けない。
まぁ、希望さんは俺の職業知らないし、変に凝った文章よりは良いのだろう。
その後、お昼休みが終わるのでと言うメッセージが来るまで、料理の好みや趣味などの他愛のないやり取りをした。
お昼休み中、相手をしてくれたらしい。
俺にとって至福の時間だったが、ご飯食べたのかな?
ちなみに午後の仕事ははかどった。
それはもう凄く。
普通に文章書けたので、希望さん相手でないなら問題ないらしい。
それだけは良かった。




