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眠りにつく前に  作者: メイズ
清廉なる乙女の章
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破られた扉

 私はタマゴの中で緊張しながら待機中。


 アステローペが大聖堂のてっぺんに登って様子を実況してくれてる。


(((( 大聖堂の入口を護っていた民間警護たちは、テュレイスの兵士に蹴散らされた。カペラたち数人が捕らえられた。中の案内人にされるようだ )))


 アステローペの声は私に届くけれど、私の声は向こうには届かない。



(((( 大聖堂から避難民が追い出されてる。けど皆、行く宛もない人たちだし、遠巻きで大聖堂を見守ってる )))   


 いよいよテュレイス軍が中に入る‥‥‥ 



(((( そのうち地下のその部屋にも行くだろう。タイミングは大事だぜ? 焦るなよ )))


 わかってるわ。けど、心臓が痛いくらい緊張してる。



(((( あ、向こうの方で気になる気配がする。 通りの兵の列の最後の方にいる馬車の引く荷台からか。何が入ってるかちょっと見てくる )))


 それからちょっとしてからまた聞こえた。


(((( メローペ‥‥‥俺‥‥‥ワアァァ )))



 それから全く聞こえなくなった。今のは何!? 不安で押しつぶされそう‥‥‥アステローペは大丈夫なの? 誰か教えてよ!!



 あ、大勢の足音がこちらに来る!


 扉の前で声がした。カペラさんと‥‥テュレイスの兵士ね。


「ええと‥‥ここは人柱にされた我らの巫女メローペ様が人柱として閉じ込められている『奇蹟の間』と呼ばれております部屋です。隊長殿、国民のの安寧を神に祈るネビュラの巫女様がここに。我らは同じ北の星の神を持つ者同士。どうか御慈悲を‥‥‥」


「人柱? ネビュラではなんと遅れた因習を続けているのだ! で、長老、『奇蹟の間』とはいかに?」


「それはわたくしめが若き頃─────────── 」



 カペラさんは話し方まで変わっておられるわ。皆に頼りにされて長老と呼ばれるの納得ね。置かれる場所で人は段々変わるのだわ。つい先日まで平凡な地方貴族の娘だった私も、ね。



「ほお? そなたが見たこともなき、磨かれた如くの美しき天然石の青い丸い石を森で見つけたと? 偶像として祀ったところ、本当に神が宿り、祭壇からてこでも動かなくなったとは。面白い。よし見てみようじゃないか」


「お言葉ですが、開けるカギは行方不明なのです。開けられる錠破りの腕を持ったカギ屋も、もう逃げていないのです。このカギも扉も非常に頑丈でして、簡単に破れるものではないのです」


「ふっ、我らを甘く見るな。副長、配下に命じてこの扉をぶち破れ!」


「御意! 開いたらお呼びしますので上階でお待ちを」


「巫女殿、我らテュレイス帝国の者だ。扉を開けさせて貰おうぞ。我ら、神が宿る石と巫女殿を拝見させて貰う!」


「メローペ様。カペラでございます! 今こそ扉が開きますぞ! よろしいですか?



「‥‥‥‥‥‥」



「‥‥‥おかしい。返事がございません。わたくしめが呼びかければ、鈴のようなお声で返事を下さるのに‥‥‥今朝だって‥‥‥」


「長老。もう食べ物すら無く半月近く閉じ込められておるのだろう? 果ててしまったのでは?」



 普通はそう思うわよね。私にはスズランのお花に化けさせたポーションが未だ残ってる。きっとこれもお母様がエレクトラから与えられたレシピとアイデアだったのでしょう。



「そんな‥‥やっと出られる時が来たというのに‥‥‥。メローペさまーーーー! どうか、お返事を!」


 カペラさん、心配させてごめんなさいね。今はもう出来ないの。



「‥‥‥長老よ。我々を作り話でたぶらかし、罠に嵌めようとしているのではないだろうな?」


「ま、まさかでございますよ! メローペ様を解放させたいがためにあなた方を敢えてここに案内したのは事実ですが。わたくしめ、神の前で嘘を吐くなど有り得ませんですよ! わたくしめの命にかけて」



「では、作業開始。用が無いものは退避だ。さあ、ネビュラの人質長老も一旦引くのだ」


「ああ、神よ。カペラは祈ります。清廉で心優しく身も心も美しきメローペ様がご無事でおられますように‥‥‥」




 ***




 ガンガンと扉を壊す音が響く。壁ごと崩れ落ちてしまいそう。振動がタマゴの中の私まで伝わる。天井からこぼれた小石がパラパラと殻に当たってる。大丈夫なのかしら‥‥‥



 ガシッ ガシッ ガシッ パラパラ‥‥


 随分長いこと、扉と格闘してるわ。なんて丈夫に出来てるの!



 ガシッ ガシッ ガシッ ガラガラガラガラッ



 キャーッ! すごい音と地響き!! びっくりした‥‥。扉と一緒に壁が崩れた音。



「わ、お前大丈夫か? ホコリが舞って真っ白だ。ゴホッ‥‥これでは収まるまで良く見えん」


「うわーッ! やった! やっと取れたぜ。ったく、なんて硬く取り付けられてんだよ? ヨコの壁も一緒に崩れちまった」



「カンテラで照らせよ。なんだ?あのデカい丸い物体は? まさか、あれがじいさんが言ってた石かよ?」


「いや、手のひら大の青い石って言ってたぞ? しかも台の上にくっついて取れなくなってるって。まあ、じいさんの戯言って可能性もあるが。あれも青っぽいのかな? もっと照らしてみようか?」



「カンテラだけでは暗い。松明を灯そうぜ」


「おう! 火を‥‥‥」



 ボンッ!


 ガラガラガラガラッドコッ‥‥カラカラカラ‥‥‥



「キャーーーッ! アステローペ助けて!」


 爆発音とともに、周りが崩れる音がした。私、埋もれるッ!



「‥‥‥ううっ‥‥‥粉塵爆発しやがった‥‥大丈夫か?」


「ああ‥‥‥‥なんとかな‥‥‥くっそ‥‥‥動けない‥‥‥」


「やっべ、クラクラする‥‥‥しくったな‥‥‥天井も一部崩落したようだ。部屋ん中が随分崩れちまったな‥‥‥‥神が宿る石と巫女ってのはどうなっちまった‥‥‥? 暗くて見えん‥‥‥」



 アステローペの粘着の糸入りのせい? 落ちて来たブロックが当たった衝撃を感じたけれど、殻は砕けることもなく私を護ってくれた。アステローペのお陰だわ‥‥‥


 ねぇ、あなたも無事でいてね。私たち、途切れたままよ?




 ***




「今の音は何事でございますかッ!? 地下の奇蹟の間からでは? メローペ様になにかあったのでは! このカペラ・チャリエットがただいまあなた様の下へ馳せ参じますますゆえ!」


「長老、待て! おい、今行ってはならん。先駆隊、2人行け! 誰かこのじいさんを取り抑えろ! 我らに向けた仕掛けられた罠だった可能性がある」


「放してくれぇー。わしは罠など仕掛けてはおらんッ! メローペさまぁー‥‥‥。ああ神よ! 我らのネビュラの巫女をお護り下され!」











メローペ編は、あと2話で終わります。次はエレクトラ編にしようかなと思います。

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