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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢は何もしないままだったが

作者: 双月一星

婚約破棄物?です


規格外令嬢のフレーズから迷走した結果がこちらになります


見ていただけると嬉しいです

オリジナルの解釈や設定があります


生暖かい目で見てくださるとたすかります


※誤字報告ありがとうございました

色々推敲されました

感謝です


一獲千金→一騎当千に変更しました

なんや私、一と千しか合ってない

こちらも指摘ありがとうございました

「ロゼティア·ファングレイ侯爵令嬢よ、【冷血の輝石姫】などという恐ろしい忌み名を持つ貴様を王族に迎え入れるわけにはいかぬ!

貴様との婚約を破棄し、平民の生まれではあるが百年ぶりに顕れし聖女チェルシーと婚約させてもらう!」


王太子セヴァン·エルデルバは傍らに全身桃色のフリフリ物体……もとい聖女チェルシーを侍らせ、二人を囲む様に、宰相子息のガラシアと騎士団長子息エドバン、魔術師団長子息メルキオが、ロゼティアを睨み付けている。


呼ばれたロゼティアは指輪にペンダント、ティアラにイヤリングと、ゴテゴテと綺羅びやかな宝石を着けて群衆から歩み出る。


銀色のストレートロングの髪を靡かせ、きりりとつり上がった蒼い瞳で無表情のまま彼らを見上げる。


ロゼティア·ファングレイは侯爵令嬢であるとともに、一騎当千の魔術師である。

ファングレイ侯爵家自体が代々高名な魔術師を輩出する高い魔力を有する家系であり、その中でもロゼティアは規格外の魔力を持つ魔術師なのである。


その為、戦場の前線に立つ事が多く、多くの功績を上げてきた彼女ではあるが、宝石をジャラジャラと光らせながら、無表情で敵を殲滅する様子から、【冷血の輝石姫】というチグハグな異名を持つ事になった。


彼女は宝石をジャラジャラ着けた令嬢ならではの傲慢さや承認欲求高めの令嬢ではない。

冷血と云われる通りの人形姫のイメージが強い令嬢である。

頼まれた事を粛々とこなす、分を弁えた令嬢である。


膨大な魔力を王家に取り込むべく王命で王太子の婚約者に迎え入れられた彼女ではあるが、特段瑕疵はない。


が、王太子はそんな彼女に言い放つ。

「しかも貴様は、あろう事か聖女チェルシーに暴言を吐き、彼女の所持品を壊し、彼女自身を辱める為に破落戸に襲わせたそうだなっ!!」


彼女は無言を貫き通した。


「襲撃に関しては破落戸から貴方に頼まれたという証言を得ています、言い逃れできませんよ」

「チェルシーを害するとは許しがたいっ!!!万死に値するっ!!」

「魔力がバカ高いからって調子に乗り過ぎなんだよね〜さっさと除けなし、セヴァンの隣はチェルシーのもんなんだからさぁ〜」

物言わぬ彼女に、ここぞとばかり苦言を投げかける。


謎のピンク物体チェルシーはうるうるしながら彼らを上目遣いで見つめる。

「皆ァありがとぉ〜信じてくれてあたし嬉しい」


「あのぉ〜あたし、暴言を吐かれたり物を壊されたり襲われたり怖かったけどぉ〜ロゼティアさんが誠心誠意謝ってくれるなら許して差し上げますぅ!!だから、罪を認めて謝ってくださいっ!!!」


涙をうるっとさせつつセヴァンの腕にたわわな胸を押し付ける様に抱きつくと、チラチラとセヴァンを見つめる。


そんな彼らにロゼティアは呆れた視線を向ける。

表情は変わらない。

その態度が不遜に見えたのか、彼らはロゼティアを睨みつける。


「私は淑女としてのマナーについて苦言を申し上げただけで、あとの余罪に関しては無実です。正しい捜査をお願いしたく申し上げます」


生活の大半を王宮での妃教育と、戦場に身を置く彼女に、彼らの云う罪はほぼ不可能といえる。

他人が名を騙る事は容易いし、証言がチェルシーしかいないとなると彼女の自作自演、又はファングレイをよく思わぬ政敵の可能性もある。

セヴァンを傀儡にしたい輩は多くいる。

それだけ彼らは愚鈍と見られているのだ。

それを彼らは知らない。

聖女チェルシーもそのマナーの低さから周りから侮られているし、彼女に篭絡された子息らの婚約者達から嫌われていたりもする。


セヴァンらは知らない。

チェルシーに絆され篭絡され、現状に満足し研鑽を忘れ去り、彼女の為だけに侍る彼らは、自分達がどう見られているのかなど気付かない。

そんな彼らに侍る者達もお花畑に蜜を吸いに来た害虫でしかない。


そして彼らを諌める親たちもいない。

そうした場であるから仕出かした茶番なのだから。




「私と王太子との婚姻は王命であり、私もですが王太子にも婚約破棄の権限はありません


ですが、罪に関しては無実であると貫き通させていただきますが、婚約破棄の意思に関しては承知いたしました


今後の事を家族と考えなければなりませんのでこの辺にて」


見事なカーテシーを決めて場を去ろうとするロゼティアに対し、面白くないセヴァン達は彼女を衛兵に拘束させる。


「もう我慢ならん!俺に対し不敬すぎるぞ貴様っ!


チェルシーのように褒めたり慰めたり立てようとせず、

俺を優先しない!


そんなお前は不敬罪で牢屋に入れてやるっ!!

衛兵っ!連れて行けっ!!」


「セヴァン、否定はしても罪人なんだから貴族牢じゃなく地下牢に入れようよ、じゃないとチェルシーが可哀想だよ〜?」


「はっ!それもそうだなっ!!衛兵よ、地下牢へ連れて行け!!」




ロゼティアは、大人しく衛兵についていく。

高慢な令嬢のように暴れたりなどしない。

それに彼女も彼らも知っている。

彼女がどう云われ、どのような功績を立て、どのような悪名を有するのかを。


彼女の悪名に【冷血の輝石姫】の他に有する事件がある。


【ヴァルテンシアの悲劇】


それを知る相手は震え上がる程の事件である。


だからこそ彼らも彼女も何もせず地下牢へゆっくりと向かうのだ。




彼女が牢屋に入り暫くした後、セヴァンらが現れた。


「魔封じの枷を忘れていたからな、喜べお前の好きな豪奢な枷だ

一応国宝物でな、お前のように傲慢な王妃が居たらしくてな、その元王妃に着けられた魔封じの枷だ

さぞかしお前に似合うだろう」


顔はいいのにニヤニヤと下卑た笑顔はいただけない。


「が、お前の着けてる今の宝石は全部はずさせてもらう」


ロゼティアはここに来てギョっと顔を青ざめさせる。


「お断りしたいところですが……

この宝石類は魔導機です

ので扱いが難しい品々なのです


なので【誰も魔導機に触れない】事を約束していただけるならお外ししましょう


私はこの国の臣下ですので、何も破壊したくはありません

私は本当に……(ボソボソ)……困るのですが

耐えましょう」


セヴァンは部下に貴金属を置くようなトレーを用意させ、ロゼティアにアクセサリーをはずさせる。


「本当に触れさせないでくださいね、でないと()()()()()()ので」


「セヴァン様、私は【ヴァルテンシアの悲劇】の()()()()()()()()()()()。のですよ、お願いしますよ」


そして自らに掛けられた枷を見る。

「これをいただくのは()()()()ですね」



セヴァン達の足音が遠ざかる。


国王らが国家連合の会合から帰るのは数日後だ。

後は何事もなく耐えるだけ。

抗わずに時間を稼ぐだけ。

後は何方かが無実だと証明してくださる事を祈るのみだ。


「あら、勿体無い」

数時間も掛からず豪奢な枷は、封印のキャパシティを超えてボロボロに崩れてしまう。


彼女の持つ規格外の魔力によって。



セヴァンは王宮にある一番良い応接室で仲間と勝利の祝杯をあげていた。


テーブルにはワインと軽食にチェルシーの好きなスイーツが所狭しと並べられている。


その一角に、ロゼティアから取り上げたアクセサリーを乗せたトレーが置かれている。


チェルシーらはキャッキャウフフと楽しんだ後に、チラチラとアクセサリーを見る。


「これ、本当に魔導機なのか?」

エドバンには宝石と石の差も解らないし、石が魔石である事も解らない。


次に覗き込んだのはメルキオだ。

「何の魔導機か、詳しく見ないと解りませんが、この魔石の大きさだと、彼女が狩ってきた魔物から造ったんでしょうかね?」


ガラシアも彼女の討伐記録から、かも知れませんねと魔導機を覗き込む。

どの魔導機も使われている魔石はどれも大きく、全部着けてるだけで重そうではある。


セヴァンはワインを飲みながらロゼティアが言ってた事を思い出す。


「あの女、()()()()()とか、【ヴァルテンシアの悲劇】の()()は嫌だとかいってるから、一応魔導機には触んなよ?」



ロゼティアは何もしてはいない。

していない。

じっと時間がすぎるのを待ってただけである。



それでも悲劇は起こる。



セヴァンの言葉を聞き流したチェルシーは綺麗な指輪を手に嵌めていた。



「ぎゃあああっっっ!!!」

チェルシーは乙女らしからぬ悲鳴を上げその場に倒れた

暴れるように転げ回りながら、どんどん老けていく。


同時にガラシアも悲鳴を上げ蹲った。

が彼に構う時間はない。


メルキオは魔導機である指輪をチェルシーの指からはずそうとしたが、彼女と同じく「ギャッ!」と短く悲鳴を上げたあと気絶した。


エドバンはメルキオのあとを継ぎ指輪を外そうと、気絶しそうになりながら途中まで頑張った。

が、指輪を外す力も尽きて倒れてしまう。


そんな仲間達の姿に怯えたセヴァン。

「あいつだ!あいつが悪い!がっ、背に腹はかえられないっ!!!」


あたふたと力の入らぬ覚束ない足取りで地下牢に向かう。



地下牢ではロゼティアがゆったりと寛いでいた。

片手で髪をクルリクルリと弄りながら。


「あら、どうかいたしましたか?地下ではなんの音沙汰もなく静かなのですけども」


そんなロゼティアに苛立ちを覚えつつ、彼女を牢から出し強引に腕を掴む。


ロゼティアが顔を顰めると同時にどこからか罅が入る音がする。


「やめてくださいまし、()は魔力を抑えるのが難しいんです、力を暴発させないでください」



「貴方方は本当に【ヴァルテンシアの悲劇】を繰り返したいのですか?」



【ヴァルテンシアの悲劇】

この国の隣国である小国ヴァルテンシアが一夜にして崩壊するという事件があった。


それは隣国に誘拐された幼少時のロゼティアの魔力暴走が原因であった。

恐慌状態になった彼女の魔力は膨大で、小国全土を灰燼に変えた。

その力はこの国の端にまで広がり、ヴァルテンシアが消えていく様を見たものは一様に恐怖した。


自らの魔力に護られた彼女は、眠りについているところを発見された。


その後国家レベルでの魔導機制作が行われた。


魔導機に課せられたのは、着用者の魔力を吸収し、その力で魔力制御を補わせる事だった。


ロゼティアの潤沢な魔力を暴発させないように多くの魔力を吸収する事に成功する。


そしてロゼティアは戦場に立つ魔術師となり、そして、自らもその魔力で魔石を生み出す能力を得て、内なる魔力を切り離し作る魔石は、この国の特産品となった。


最初に作られたのはペンダント。


だが、ペンダントも壊れ始めたのである。

自身の成長もあるが、戦場にて何度も生死の境目を経験した彼女はその都度、魔力総量が膨らんでいったのだ。


そして、今のゴテゴテとした輝石姫となっていったのである。


今でこそ自身の魔力制御の精度は上昇しているものの、感情の起伏によっては危うくなる時が存在する。


自己犠牲のような自爆で魔物の巣窟を崩壊駆逐してしまった事もあるのだ。


なので感情を抑え理性を保つために、感情を露わにする事をやめてしまった。

セヴァン達と対峙したときの諦観なども含まれている。



「貴方方は本当に人の話を聞かないのですね」


掴まれた腕は痛くはなくなったが、セヴァンに追随し、地下を出て応接室に向かう。


その道すがら、自分の魔力と魔導機、【ヴァルテンシアの悲劇】について話をした。


それは何度めかの話にはなるのだが、セヴァンは忘れてしまっていたようだ。


そしてやっと、ロゼティアに嵌めた枷がない事に気づく。


「枷ですか?貴方方が地下から去って数分後には壊れました


今、魔導機もありませんので、此処で力が暴発すると、王都は疎かこの国全体と隣国を呑み込むぐらい危険ではあるので、過度な言動は慎んで貰えると助かります


暴発させたくないので困ってるんです、本当に」


セヴァンはそれを聞き真っ青になった。

理解が追い付かない。

ロゼティアの魔力が高くとも、魔道士団長のほんの少し上ぐらいだろうと思っていたし、アクセサリーが魔導機である事も思い出せなかった。

そして自分の無知で、国が滅びかける事になってる事に驚愕する。


それよりも、チェルシーだ。

聖女であるチェルシーを助けなければ!


「チェルシーがうっかりお前の指輪を嵌めてしまったんだ!どうにかしてくれっ!!」


頼むっ!とセヴァンは土下座した。


困る。

これ困る。


でもって応接室の扉を開けた先が阿鼻叫喚だった。



蹲り奇声をあげ続けるガラシアと、白目を剥き倒れているメルキオ、萎びた木の枝のように細々とした物体となったエドバン、そしてピンクのフリフリドレス姿の老婆が細々と息をしている姿がそこにあった。


指輪に直接触れてるのは、老婆となったチェルシーだと推測した。

そばに居る二人は指輪を外そうとしたのだろう。

指輪に触れた時間が僅かとはいえ、三人は魔力を吸われ切り生命力や命運までも魔力代わりとして吸い込まれたようだ。


三人を見下ろし、首を横に振る。


「彼女については諦めてください

私が魔力を行使すると暴発します

残りの魔導機を装着しても、ゆうにこの王宮を灰燼に帰す事になります

この今でさえ、チェルシーさんは死の一歩を歩んでおられるのです


……でも指輪は彼らの尽力により、()()()()()います


セヴァン様、愛するチェルシーを助けるために指輪を抜いてさし上げてください

装着者がいなくなれば魔導機は停止いたしますので、チェルシーさんを助けられるかと思いますわ」


セヴァンは覚悟を決めるしかなかった。

チェルシーが助かれば皆元に戻ると信じて。


ついにセヴァンは指輪を抜き切り、同時に気絶した。


そんな彼らを見下ろしつつ、順々に魔導機を装着し、最後に転がった指輪を見つけ指に装着する。


全ての魔導機を装着し終えて、魔力暴走が収まるのを感じ、安心する。


ロゼティアは衛兵を呼び、彼らを王宮医務室に運ばせた。


落ち着いたのち、彼らが座っていたソファに倒れ込む

多大なストレスと魔導機の着け外しの負荷の圧力で疲弊していたのだった。



泣いてる自分がいる。

怖い人に攫われてとても怖かった。

運ばれた家屋は暗く狭かったはずなのに。

今此処にいるのは屋外だ。

地面から生えた牙のような建物の残骸や根っこだけ残した大木、所々の紅い色が怖かった。

そしてその中で自分しか居ない状況に恐怖した。

泣いて泣いてその後は分からなくなった。

眠りの中、いつしかふわりとしたぬくもりに包まれとても安堵した事を朧げながら覚えている。


あぁ、そうだ。


「にぃさま………」


目を醒ますと見慣れた天井だと思った。

清潔な寝間着とシーツ、上にかけられた布団もフカフカで、そしてベッドは少し軋みをあげている。


そして手は誰かの手に包まれているのだなと。


「おかえりロゼティア、僕が分かるかい?」

包まれた手の先にいたのは、従兄弟である義兄だった。

彼も優秀な魔術師であり、国王の護衛を勤めていたはずだ。


ロゼティアの髪を小さな時の様に何度も撫でてくれるのが心地良い。


「もう少し眠るかい?()()ティア」

ロゼティアはコクリと頷くとすぐに眠りに落ちていく。

眠るロゼティアの額に唇を落とす。



ロゼティアは何もしていない。

何もしていないのだ。



それでも彼らはザマァされた。

自業自得ともいえるが。



まずは彼らのブレインであるガラシアだが、実は【ヴァルテンシアの悲劇】を目の前で体験してしまった一人であった。

が、幼少期であった事から、それまでの記録は封印され、家柄上勉強で記憶の上書きならぬ押し流しにより、彼はその事を忘れ去っており、【ヴァルテンシアの悲劇】についての殆どを遠ざけられて育てられていた。


が、此度その名が記憶の扉をこじ開けたのか、正気を失い、ガラシアの領地にて幽閉された。

彼の持っていた知性はもう戻らないであろう。



チェルシーを助けに入ったメルキオだが、目が覚めた時には、魔力の核を失っていた。

指輪から離れたのが早かったので、生命力を幾分吸われた迄に落ち着いたものの、彼が指輪に触れた瞬間、生きたまま肉体から何かを轢き剥がされるような激痛を感じた。


それはどうやら魔力の核であったようだ。

メルキオは知能はそこそこながら、自分の魔力の高さと素養にプライドがあり、魔力の少ないものを下に見る傾向があった。

どんなに頑張っても自らの魔力を感じられる事がなく、生活魔法さえ使えなくなっていた。

彼もまた正気を失い幽閉された。

彼が持っていたプライドはもう戻らないであろう。


次にチェルシーを助けに入ったエドバンだが、指輪は彼の平凡な魔力を吸い切り生命力をも脅かした。

その結果、彼の持つ生命力の大半を占めていた筋力が失われてしまった。

大剣を振り回す程の剛腕はそこにはなく、木剣さえ持ち上げる力もなくなった。

魔力の核を失う際の激痛には耐えたものの突如喪失した筋力では立つ事さえ出来なくなった。

彼もまた騎士としての力を失い幽閉された。

彼が持っていた筋力は戻らないであろう。


最後にチェルシーを助けたセヴァンだが、彼もまた魔力の核を失い、生命力、命運まで失いかけた。

その結果、父王と並ぶ老化現象を引き起こした。

肉体年齢を同じくすると、どちらが先に死ぬかぐらいには老けてしまい、後継としておくならばまだ歳の離れた王弟を立てた方が良いだろうという事で、セヴァンは廃嫡となり、王位継承権を失い、また王籍から抜けて平民に落とされた。

また、彼の持つ資産からロゼティアへの慰謝料が支払われ、王命でチェルシーとの婚姻が結ばされた。

というより実質チェルシーの介護担当と言うしかない。

彼もまた老いた肉体と若き精神との乖離からくる失態から、何度も自身の価値を底辺へと掘り下げていく。

彼が描いていた輝かしい未来は戻らないであろう。


そして3人の犠牲により助かったチェルシーではあるが、その面影はなく彼らの祖母、曾祖母世代にまで老け切ってしまった。

命運をほぼほぼ失ったともいう。

命運は個人個人に神から与えられた天命であり、それを消費したため若い身空の花の謳歌をごっそり魔導機の指輪に吸い取られてしまったのだ。

彼女の生来持つ命運であるが、彼女が生きられる時間がどれぐらいあったのかわからぬが、その日数は少なくなった。

また彼女は自らの変わりように正気を失った。

そして自身を映す鏡や硝子、銀食器というものまで恐れ、暗闇を欲した。

王命で結ばれたセヴァンや側近らを詰りながら終にその命を終えたという。

また、常日頃から、ヒロインなのに、悪役令嬢が、こんな事になるなんて聞いてない、逆ハーがどうのこうのと、わからぬ単語を並べていた事から、何処から正気でなかったのかも疑わしいらしい。

学生時代は多くの男性を侍らせたものの、彼女を看取ったものは所用で出掛けていたセヴァンを含め、誰一人いなかった。

彼女の持つ愛嬌ある美貌は終に戻らなかった。


唯一の息子を甘やかし、ロゼティアを蔑ろにした国王だが、ファングレイ侯爵一族の前で土下座していた。

今回の事で怒り、気の昂ぶった彼らの魔力暴走の初期症状からくる著しい魔力酔いを王都全土に齎していたからだ。

彼らの怒りはロゼティアが目覚める迄続いた。


国王はロゼティアの暴発を恐れつつも、魔石を生成する(金の卵を産む鶏)彼女を自国で囲いこむべく息子との婚約を結ばせた欲深い王であった。

結局、ファングレイ侯爵一族の怒りを買い、最愛の息子により国を脅かす羽目になった。


が、ファングレイ侯爵一族は王位を簒奪したい訳ではなかったので、国王から王弟に引き継ぎされた後に王妃共々蟄居させるのみに留まった。


なお、聖女チェルシーであるが、彼女は聖女ではなく、珍しい光魔法と治癒魔法を使えるだけの平民の少女だったらしい。

彼女を持ち上げた貴族と神官らは罰せられ労働施設に送られた。


彼女が聖女であれば、今回迄の大事にはならなかった事が後の聖女関連の書物の記述からわかったらしい。

生物と紐付く力が魔力とするならば、神と紐付く力を祈力といい、その強さは聖女の徳と善行と信仰心からくるものであり、本来なら祈力であらゆるものから護られる力なので、指輪を持っても大事にはならないはずであった。

結局はただの村娘がおべっかでのぼせ上がり御輿に乗せられ勘違いしただけであった。


断罪から配慮するに当たり、チェルシーは公開処刑が順当であったが、老いたチェルシーをチェルシー本人だと言い切れない(公表できない)状態から、後に同様の老いたセヴァン共々毒杯を賜ったと公表された。


王都規模の魔力酔いの事もあり、彼らの存在は忘れ去られていった。

恐らく廃嫡され社交界には現れる事などない、として彼らの記憶から消えたのであった。

まぁ彼らと結びつく側近らの婚約者などには軽く状態を伝えたものの、彼らとの婚約は解消されており、彼女らは新たな婚約者を選ぶのに忙しく忘れ去られていった。



ロゼティアは何もしていない。

何もしていないのであった。


だが国のトップが変わり、ファングレイ侯爵一族は近国らとの話し合いで得た嘗ての隣国、小国ヴァルテンシア跡地を得て辺境地として受け取り、辺境伯となり、各魔術師の魔法を適材適所活かし切り、灰燼の廃都を、立派な都市に作り変えた。

見向きされなかった分野の魔術師らも、今回都市構築に貢献し、移住した。


そこにはファングレイ侯爵一族のマネジメント能力や、ロゼティアが造り上げる魔石が潤沢に余す事なく使える機会であった事も大きい。

ある旅人の助言も大きく、緑に溢れ、水路等の整備をし、整頓された区画を造り上げ、清潔で住みやすい都市に変貌させた為、移住者が増えた。


ロゼティアは何もしていない。

いつもの様に魔獣を討伐し魔石を創る生活を続けている。


少し違うのは膨らんだ腹だろうか。


ロゼティアは事件のその後、セヴァンとの婚姻がなくなり次期侯爵と戻った為、嫁ぐ彼女の後釜として迎え入れられていた従兄弟である義兄レイアルトと結婚した。

彼女の目が覚めたその時にはもう父親に婚約の打診が受理されており、実質囲われた形になる。


そうでなければ多くの釣書が彼女に届いていたであろう

……というか届いていた。

が、どの貴族、商人、王族からの釣書にも応じる事なく、彼女は社交を含め領地から出る事は少なかったという。


あれだけ耐えたのだ。

なのでもう国に関して信頼も何もない。

なので国民の為だけに有償(ビジネス)でのみ魔獣討伐を引き受けるのみに留まった。


彼女のストレスが軽減されたのもあり、付ける魔導機の軽量化等を行い、徐徐にではあるが、魔導機の数を減らし、清楚な装いを纏い、明るい微笑みを見せる事が多くなったという。


そしてそんな彼女を描いた絵画が、飛ぶように売れに売れ、彼女への求婚者の心を鷲掴みにし、その後も彼らの子孫の初恋さえも奪ったとされる。



ロゼティアは何もしてはいない。

ロゼティアはいつものように笑い、話し、夫や子供達、家族を愛して暮らしただけだ。


それでも、彼女の死後、魔石が尽きても都市は繁栄し、魔術都市として、何代かを経て、嘗ての母国を呑み込み魔術国家として栄えていった。


彼女は魔術国家ロゼティアとして名を残した。

それだけである。

婚約破棄は多いので、ザマァの結果として彼らのアイディンティティの喪失というのを目指して見ました


魔導機、アクセサリーと記述の変化は各々の認識で表示を変えています

ロゼティアにとっては魔導機、セヴァンらにとっては派手なアクセサリーだと認識している

ということです


魔導機に関しては、必要魔力値を100とすると、100になるまで魔力(と魔力変換された何か)を吸い満タンになってから魔力制御機能発動という機能になってます


ロゼティアなら1000以上ある感じなので常時発動させても危なくはないのですが、他の人の魔力が100以下だと危険性が出てくるアイテムになる。ということでした


因みに数値は例え話の説明ニュアンスです


魔力や祈力、命運等に関してはオリジナルの“そういう物”ということで了承ください

なんちゃってファンタジーの1つとしてお見逃しくださいませ


国に馬鹿しかいないのも、“こういう設定です”ということです


因みに国王が国にいなかったのは嘗ての小国の跡地問題の為の会合に出ていた……という設定です

残っていた良心がないないのも、後釜にバカ息子しかいないのも、空が青いのも、設定だからです 

 

設定だからです!!(汗)


後初めて色んな企画キーワード選んでみました

企画参加クリアできてるかどうかは解らないのですがどうなんだろう?


数ある中から読んでいただきありがとうございました

ゆっくり目を休めてくださいね

どうかご自愛のほど、なろうライフお楽しみくださいね

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは素晴らしいざまぁですね。 まさに悪役令嬢は何もしないのに、ざまぁされていく様は面白かったです。そしてロゼティアが幸せになってよかった。 素敵なお話有難うございます。
[気になる点] 「。」をつけてください。 それとも、つけないことに何かこだわりがあるのでしょうか? ご自身の文面をスマホで読んでみて下さい。 わかりにくく読みにくいことが、おわかりになるかと思います。…
[良い点] 聖女一人で国を守る結界維持するような話が出来るんだから 魔術師(マジでもいいが)一人で国一つ壊しちゃいかねないというのがあってもいいね
感想一覧
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