第3話 まさかの、寝床を確保!
ぽってりしたお腹をさすりながら現れたおっさんリカちゃんをあたしは睨みつける。
「今から寝ようと思ってたんですけど」
シラチャも大きな揺れで目が覚めたらしく、むにゃむにゃと、ブレザーの中から顔をだした。
「サエー、おトイレひとりでいけないのー? ぼく、つきあうよー」
「ちがう。この、なに? 妖精的な人が来て……。こいつら、夜行性なの?」
ぺこりと頭を下げたおっさんリカちゃんは、ハエのように手をこすり合わせている。
『シラチャ様が騎士様を召喚されたと知り、ご挨拶かねがね、お願いできないかと……』
「よくわかんないんで、明日来て」
投げやりにあたしが返したのに、なぜか目を潤ませていて、ちょっと引く。いや、結構引く。
『本当に、我々の言葉が聞こえているのですね……!』
あたしは意味がわからず、はぁ? としか頷けない。
『過去、竜騎士のタツ様が旅通訳をされていたのですが、今は何処におられるのか……。でも、これで、ようやく……! 本当にありがとうございます』
「いや、それ、あたしに関係ないし」
『……はい?』
「あたしは、シラチャともふもふ過ごせたらいいから」
シラチャもそうだというように、あたしの顎に頭突きをしてきた。
「サエといっしょー」
「ということなので、お願い事は受け付けません。おやすみなさい」
無視して木を登りはじめたとき、耳元でイケボが囁く。
『温泉大浴場・サウナ付きと、フカフカの寝床を、ご提供いたします』
片目を開けて、おっさんリカちゃんを見やる。
『届け物をしていただけると、お約束をいただけたら、ですが……』
「お受けいたしましょう!!!!」
即答で、小さな手を両手で握っていた。
シラチャはすでにおねむなので、片手で抱えつつ、おっさんリカちゃん、もとい、ウードさんのあとをついていく。
簡単な自己紹介のあと、案内されている夜道だが、落ち葉が多く、歩きやすい。
街灯も懐中電灯も、月の光も鬱蒼としげる木々のせいで入って来ないが、ウードさんが光の塊なので、見失うこともなければ、歩くだけの明るさもある。自家発電的妖精ってすごい。
『わたしがまさか新しい竜騎士様をご案内出来るとは……。さ、お疲れのところ、歩かせてしまいましたが、この丘を越えればすぐなので』
なんか、訳がわからないこと言ってるけど、とにかく、汗を流せて、ゆったりお湯に浸かれて、布団で眠れて、あわよくば朝サウナができれば、もう、何も、いらないっ!
まあ、届け物とかいってたけど、初めてのおつかいくらいでしょう。きっと。たぶん。いや、そんなもんだろ。だって、届けるだけだし!
『さあ、ここが、スコーザルバの温泉宿です。いかがでしょうか?』
もふもふ温泉回に突入です。
楽しみだなーとか、楽しいなーとか、なにか感じたらブクマ&いいね&ひと言感想らいつでもお待ちしております
ご覧いただき、本当にありがとうございます!