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彼の朝 2

 展望デッキからは、市街地が一望できる。視界を遮るもののない景色を眺めていると、心ものびのびと開放されていくような気がするので、彼は、この場所が気に入っていた。


 景色を眺めながら、チャイを飲み、すっかりリラックスモードになった彼は、何気なくズボンのポケットへ片手を入れた。すると、カサっと何かが手に触れた。取り出してみると、チャイを買った際に、サービスで貰った小袋だった。中身は、フォーチュン・クッキーだと店員は言っていた。店の宣伝になればと、試作品をサービスで配っているということだ。


 ちょうど、小腹が減っていた彼は、袋を開けてみる。途端にバターのほのかな香りに鼻腔をくすぐられた。クッキーの窪んだ部分に少し力を加え、2つに割る。中の紙を取り出してから、彼は一かけらを口に入れた。それほど甘くなく、ちょっとパサつくような気がする。しかし、その後にチャイを口に含むと、チャイのミルクとクッキーのバターの香りが口の中で程よく混ざり合い、とても美味しかった。


(これは、商品化されたら、買ってしまうかもしれないな)


 そんなことを思いながら、残りの一かけらも口へ入れる。口の中の甘さに浸りながら、彼は、手の中に残った小さな紙片を見る。


『おはようは 距離を縮める 合言葉』


 そう、小さな文字で書かれていた。


 彼は、占いなどの類は信じない主義だった。そもそも、この紙片の言葉は、きっとカフェの店員が考えているのだろうから、神社などのおみくじのように、有難いお言葉が書かれているわけがない。そうは思っても、彼は、どうしても心の中で突っ込まずにはいられなかった。


(これは、おみくじじゃない!? 標語だよ、これは!)


 彼は、紙片を見つめ、込み上げてくる笑いに堪える。

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