彼女の朝 4
「いいじゃん」
自然と口から漏れた感想が聞こえたのか、公園内の木々たちが、まるで返事をするかのように、微風に乗ってさやさやと木々を揺らした。
この場所を一目で気に入った彼女は、今度の休日にもう一度ゆっくりと来ようと心に決めて、今は丘の上を目指す。入口すぐにある園内マップを確認すると、公園はEastエリアとWestエリアに分かれているようだった。それぞれのエリアには、大階段という名前の階段がある。それを昇った先で二つのエリアは結ばれており、彼女の目指す場所はそこだった。今いるのは、Eastエリアのようで、彼女は、矢印の形をした案内表示に従って、大階段へ向かった。
天気予報通り、ポカポカの陽気になるだろう柔らかな陽射しを全身に浴びながら、歩きやすく舗装された遊歩道をゆったりと歩いていると、朝の散歩を楽しんでいる老夫婦とすれ違う。すると、見ず知らずのはずなのに、笑顔で挨拶をされた。
「おはようございます」
「おはようございます」
彼女も笑顔で挨拶を返す。それがなんだかとても清々しかった。こんなに心の温まる挨拶はいつぶりだろう。もしかしたら、初めてかもしれない。
(いつも通りの枠から少し外れることも、悪くない)
そんな素敵な発見に、彼女は心躍っていた。
(占いが当たって、いいことがあるといいな。ラッキースポットの丘の上は、一体どんな場所かな)
そんなことを考えながら、テラスへと繋がる階段へたどり着いた彼女は、階段の一番下の段から頂上を見上げる。何段あるのかはわからないけれど、まるで空へと昇るかのように真っ直ぐに伸びる階段のその先は、とても眩しい。期待に大きく胸を膨らませ、真新しい白いパンプスのヒールを、コツコツとリズム良く鳴らしながら、彼女は大階段を昇り始めた。
目指す場所は、もうすぐそこだ。