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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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縞模様のミミズ

 マックスの騒動も解決し、ユリアは図書館利用の推薦書獲得のために部屋にこもっていた。今日は休日ということで、エルミーからお茶会に誘われていたがどうしても課題に取り組みたくお断りをした。本来なら公爵令嬢のお誘いを平民のユリアが断るなど、無礼極まりないことだがエルミーは特に気にしなかった。エルミーはリリアンヌも誘っていたので、今日はリリアンヌと2人でお茶会をするらしい。

 リリアンヌ様とエルミー様がもっと仲良くなれたら嬉しいなぁとユリアは背伸びしながら呟く。そして数学のレポート用紙をユリアは手に持ったまま、ぼすんとベッドに転がった。用紙はまだ白いままで、何を書くかも決まっていない。マックスの手伝いで忙しかったこともあるが、数学の意義を述べるにあたって、ありきたりの意見ではペンス先生は納得してくれないかもしれないという予感がしていたのだ。そのため、資料を集めて軽くまとめてみたが、どうも納得がいかず進まない。


 数学の意義…領地の魔法士は領民がより良い暮らしを出来るよう様々な人と関わる。特に土魔法士は役人や農家、職人など幅広い上に、アドバイスをする上で明確なデータを示すことも求められる。そのため、数学力は必須なのだろうが…そんなことを書いて欲しいわけではないのだろう。ペンス先生の分厚い眼鏡の奥にはいつも候補生達を見定めるような意思を感じられる。パトリック達にも言ったことがあるが、そうかな?と皆んな首を傾げていた。

 ペンス先生はきっとそんな皆んなが思うような意見を求めているのではないだろう…しかし、数学をやる意図は他にあるだろうか…。ユリアはマックスの課題に取り組んだ時のように、思いつく単語を並べ結んでいく。


「数学、魔法士、人々、領地…」

 関係なさそうな単語も書いてはみるが、やはり良い案は思いつかない。駄目だ、煮詰まっているとユリアは立ち上がり、気分転換に散歩しようと上着をとった。もうすぐ夏とは言え、最近は雨が降っているため肌寒い日が続いていたので少し厚手のものにする。アイベルと街に出かけた時に購入したものだ。

 地面はまだ雨の残りでぬかるんでいた。ユリアは汚れても良い靴でなんとなく畑に向かう。畑の様子を眺めると1年生が耕し始めたのか、一部分の少しだけ土が盛り上がっていた。ジャガイモ作り楽しかったなぁとユリアは土をそっと触って思い返す。今年の1年生はユリア達のように楽しみながら実習に取り組んでいたらいいなぁと思いながら、林檎の木に足を運ぶ。




 林檎の木はまた少し成長していた。パトリック達の木は既にユリアの背丈を超えている。ユリアの木はかなり幹も枝も太くなった。背丈はパトリック達と同じぐらいであるが、丈夫で生命感が溢れていた。ユリアはそっと幹に触れて、木を見上げる。


「これからも健康に育ってください」

 ユリアは精霊様の加護に感謝し、湖に向かおうとする。林檎の木々を抜け、湖への道に出るとグレンがしゃがみ込んでいた。


「あれ?グレンさん?何しておられるのですか」

 グレンは皮の手袋をはめ何かを探すように草を掻き分けていた。また虫を捕まえるためなのだろうとユリアは腰の籠を見て判断する。


「おぉ!ユリア、君は毎回いい所に現れるね。お察しの通り、今日も虫探し中だよ!」

 グレンはユリアを見て目を輝かせた。手が空いているなら是非とも手伝って欲しいと手を合わせる。ユリアは快く承諾し、渡された皮の手袋をはめた。


「今回はね、湖の近くにいるミミズ探しなんだけど、少し特殊でね。素手で捕まえると手の温度で死んでしまう繊細な種類なんだよ。だから皮の手袋をはめて極力体温を感じさせないようにするんだよね」

 グレンは雑草を引っこ抜いたり、大きめの石をひっくり返した。ダンゴムシや小さな蟻たちが急に住処を壊されて右往左往しているのが見えた。


「グレンさんに依頼している方って、本当に虫が好きなんですね」

 依頼主のことはあまり聞いてはいけないと分かっていたがついユリアは口にしてしまう。グレンは少し笑って石をひっくり返した。


「まぁそうだね〜訳あって自分では虫を集められないんだけど、相当虫に興味あるようだよ。私は縁あって依頼されているんだけど、報酬も良いから有難いね」

 グレンは大きな石をとりゃあっと移動させて、ミミズを見つけた。数匹ウヨウヨしていたがグレンはこの種類ではないと首を振る。石を元に戻すと、湖の近くに移動した。


「見た目はどんなミミズなのですか?」

 ユリアがそう尋ねるとグレンは、水色の縞模様が入っていると説明する。この地域のみ生息するミミズだそうで、是非とも依頼主が見たいとお願いされたそうだ。ユリアは湖の近くの枯葉をめくっていった。いくら珍しいミミズとはいえ、普通のミミズと同様に少し湿り気がある場所が好きだろう。枯葉を移動させていると、目の端で水色の模様を捉えた。


「グレンさん!これかもしれません」

 ユリアはグレンを呼んで枯葉を移動させる。ミミズは意外と素早く動くため、グレンは中々捕まえられない。ユリアは枯葉を移動させる係をグレンに任せ、捕まえようとした。


「それっ!」

 ユリアはミミズを封じ込めた。ミミズはくねくねと暴れ手からすり抜けようと必死である。そこにグレンがひょいと籠を開け、入れるよう促した。


「わぁー!本当に水色の縞模様だ。きっとこれだと思う。ユリア、助かったよ」

 グレンはそういってお礼にチョコレートが沢山入った袋をくれた。公爵家に出入りする商人が安く売ってくれたそうだ。


「ありがとうございます!」

 ユリアは袋を有り難く受け取った。ほんの少し気分転換するための散歩だったが、既に数時間経っている。しかし、ユリアのお気に入りのチョコレートも手に入ったことだし、大満足だとユリアはひとつつまんで笑顔になるのであった。

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