人助けの範囲
「あれ?数学の本も借りるの?」
マックスのために資料集めをしている際、パトリックが声をかけてきた。ユリアはペンス先生の課題のために数学関連の本も数冊借りようとしていたのだ。ユリアはパトリック達とリリアンヌに図書館の推薦書を集めるために、ペンス先生の課題に取り組んでいるのだと正直に告げた。
「へぇ!図書館利用の推薦って、そう簡単に出ないって噂だよね」
パトリックはユリアが既に推薦書を幾つか貰ったことを知ると驚き、素晴らしいと褒めてくれた。
「ユリア殿はよく幅広いジャンルの本をよんでいらっしゃりますからなぁ。流石ですな!」
テトは自分も見習わなければと大きく頷いた。
「ユリア、この本は俺の課題に関係ありそうか?」
話を聞いていたマックスが、それならユリアに聞いた方がいいと本を見せてくる。ユリアはタイトルと作者を確認すると、土魔法士の中でも有名な方ですと伝えた。ユリアは幅広く本を読み漁ったおかげでリゲルのように、博識になっていたのだ。
「とりあえず資料は集まりそうだから、今日は借りるだけ借りて解散にしようか」
パトリックは本を借り終えるとまた明日とマックス達と帰っていった。
「私達も寮に戻りましょう」
ユリアはリリアンヌと女子寮に戻っていく。ユリアが庭園を抜けるときにリリアンヌの横顔をチラリと見た。先ほどから口数が少ないリリアンは何だか思い詰めているように見えた。しかし、リリアンヌから何も言わないのでユリアは尋ねるか迷う。そっとしておくべきか、聞いてみるべきか…そんな考え込んでいると突然リリアンヌが立ち止まった。
「あら?アメノ様じゃないかしら…」
ユリアはリリアンヌの視線をたどった。その先には、以前ユリアが声をかけたことのあるぽっちゃりとした上級生が庭園でしゃがみ込んでいた。
「アメノ様、こんばんわ。どうかなさいましたか?」
リリアンヌは出来るだけ優しい声で話しかける。ユリアはそのリリアンヌの様子を見て密かに感動する。リリアンヌ様の優しそうな声…!素敵…!リリアンヌはいつもツンツンとした感じであるので、そのギャップに新鮮さを感じる。
「2年生のフィアカートさん…?あ、あの…大丈夫ですわ。お気になさらないで!」
リリアンヌはアメノ様!と呼び止めようとするも少女は走って寮に行ってしまった。
「何をしていらしたのでしょう?」
ユリアは不思議そうにアメノ様と呼ばれた少女が居た場所を除く。そこには地面とは違う色の土や泥が点々としていた。ユリアはなんだろうと首を傾げ、土を観察する。
「アメノ様は少々人付き合いが苦手でいらっしゃるわ。これはあくまで想像だけれど、同級生の方々に何かされたのかもしれないわね」
リリアンヌは土をチラリと見るとアメノ様は、泥だらけの筆を隠しながら去っていったわとユリアに教えてくれた。ユリアはそういえば…と以前その少女と話していた時に侍女に咎められたことを思い出す。
(もしかして…いじめられているのかも…)
ユリアが顔を顰めて考え込んでいると、リリアンヌは首を突っ込まないことよと釘を刺す。
「アメノ様は4年生よ。2年生の私たちが同級生同士の問題に関与することは難しいわ。そんな顔をしてもダメよ。私達が何か出来るとこはアメノ様に親切にすることぐらいね。私達が下手に首を突っ込むとかえって、現状を乱してしまうわ」
リリアンヌは納得のいっていないユリアを見て、冷静になりなさいと言った。
「…ユリア。あなたは今しなければいけないことに集中すべきよ。図書館の推薦、マックスの援助、日々の学習。やることが多いのだから、人助けはほどほどにしないと自分のことが疎かになるわ」
リリアンヌはアメノ様の事はサリー先輩に相談してみるわと言った。サリー先輩も3年生なので直接何か出来るとは思えないが、話すだけでも違うかもしれないだろうと正直にユリアに伝える。ユリアはその提案を聞くと、少し納得がいったようでコクリと頷いた。
「はぁ…まったく。お人好しなんだから」
リリアンヌはユリアがリリアンヌ様ありがとうございますと笑顔で言うのを見て、頬を軽くつねったのであった。




