オーレン家の意向
「候補生をやめるかもしれないですと!?」
テトの声が畑に響く。パトリックが座りなよと宥める。ユリアもリリアンヌも驚きでマックスの顔をただ見つめていた。
「まだ辞めるとは決まってない。父様が一方的にそう公爵様にお願いしているだけなんだ」
マックスが苦々しげに説明する。ユリアは何故そんなことをと尋ねると、マックスは大きく溜息をついた。
「採掘場の魔物事件の報告が実家にあったんだ。元々父様は俺が魔法士を目指すのは反対だったから、ここぞとばかりに辞めさせようとしてるんだよ」
「しかし、公爵家の魔法士や国の魔法士を目指すことは一般的なのではないのですか…?何故マックス殿のお父様は反対を?」
テトが不思議そうに尋ねた。
「父様は俺に実家を継ぐ1番上の兄の補佐役に回ってほしいと思ってるんだ。2番目の兄は放浪癖があって何処にいるかわからないから、俺に領地を離れてほしくないんだ。火属性や水属性の魔法士ならまだしも、土魔法士だから余計に役に立たないから目指す意味ないって言われてる」
マックスは父様は身勝手すぎると文句を言った。パトリックは土魔法士は必ず領地の役に立つし、マックスの気持ちを無視するのは酷いことだと賛同する。
「公爵様は何とおっしゃっているのですか?」
ユリアは公爵が人材を易々と手放すわけがないと考え、マックスに尋ねた。
「公爵は人材不足だから候補生が減るのは困ると言っていたが、候補生になるのは希望制だから本人の意思とその家族の意向を尊重すると…」
マックスは俺は絶対に辞めたくないと強く言った。しかし、公爵は家族の意向も鑑みて判断すると言っているので、公爵とオーレン家の話し合いがなされているそうだ。
「マックス殿。絶対に辞めてはいけないでござります…嫌ですぞ…」
テトは悲しそうにマックスの袖を引っ張った。マックスは俺は公爵様に味方についてもらえるよう努力すると頷いた。
「そうですよ!公爵様に絶対手放してはいけない人材だと証明すればいいのです。オーレン様のお父様も公爵様が認める人材だと知れば、退いてくださるのではないでしょうか?」
ユリアはすくりと立って主張した。リリアンヌもパトリックもそれは良いと支持をする。
「しかし、どのように証明すればいいんだ?学期末の試験はとうに終わっているだろう?」
マックスはどうしようもないかもしれないと少し弱気になっていた。ユリア達はしばらく悩んでいたが、テトがあっと声をあげた。
「最近の経済学の課題があるではありませんか!」
テトが鞄から課題用紙を取り出して、ユリア達に見せる。マックスは怪訝な顔をしていたが、ユリアはすぐにテトの案を理解する。
「この前課された課題は、それぞれ魔法士になった後どのように領地に貢献していきたいかでしたよね。この課題で素晴らしい成績を出せば、公爵様もオーレン様も納得していただけるかもしれません!候補生としての優秀さを示すと同時に、土魔法士がいかに領地で役立つかを証明できます!」
ユリアはマックスにこれで行きましょうと自信を持って伝える。マックスはそれで上手くいくのか不安そうだったが、やってみると答えた。
「提出期限は来週ですから、まだ時間はありますわね」
リリアンヌもマックスの手伝いをしてくれるようだ。火属性なりの意見も役に立つかも知れませんわとユリアに耳打ちをする。
ユリア達はマックスのために課題を手伝うことにした。マックスは皆んなが絶対に候補生を辞めさせないと意気込んでいるのを見ると、少し照れ臭そうに感謝した。
「では、早速話し合いをしよう!」
マックスのための公爵様説得大作戦と銘打ちパトリック達はすぐに作業を始めるのであった。




