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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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司書の推薦

「ユリア、ベリムス如きでうじうじするのはやめなさい」

 リリアンヌはベリムスの言葉を思い返し嫌な気持ちになっているユリアを慰めた。ベリムスは小さい頃から誰にでも反抗的で意地悪をする男なのよと言うと、扇を閉じた。


「リリアンヌ様…。私、馬鹿にされるのは嫌ですよ…」

 ユリアは口を尖らせて、平民という枠で見られたくないのだと主張した。リリアンヌはアイベルを呼んでお菓子を追加で持ってきてとお願いする。アイベルは言われた通りお菓子を持ってきてくれたが、その量は尋常ではなかった。


「ユリア、好きなだけ食べてよくてよ」

 リリアンヌはぷいと横を向くと、ユリアに食べるよう促した。ユリアは素直にマカロンやマドレーヌを口に入れていく。きっと孤児院ではお目にかかれなかった物ばかりである。ユリアはリリアンヌとお茶をする中で様々なお菓子を知ることができ、感謝していた。ユリアはもぐもぐと無心でお菓子を頬張っていき、幸せそうな表情を浮かべる。

 リリアンヌはユリアが次々にお菓子を平らげていくのを確認すると満足そうに頷いた。リリアンヌなりの甘やかし方なのである。ユリアが悩みや不安を抱えているように見えた時は、リリアンヌは大量のお菓子でユリアをもてなす。リリアンヌ自身はお菓子にはあまり口をつけず、お茶を啜ってユリアの幸せそうな顔を見るだけであるが。

 

「りりあんぬさまぁ…わたし」

 ユリアは口いっぱいにクッキーを含みながら話そうとする。リリアンヌは行儀が悪くてよと指摘し、お茶を飲むよう促した。


「私、絶対に魔法士になります」

 ユリアは背筋をピンと伸ばしてリリアンヌに宣言する。リリアンヌは当然ではなくて?と呆れたようにユリアを見たが、ユリアはそうではないと首を振る。


「正直、私は流れに身を任せて此処に来ました。自分の意思で来たわけではないのです。なので今までは言われた通り、魔法士を目指していました。しかし、今は違うのです。私自身が心から望む事なのです。私は魔法士になって、貴族の方が持っている平民への偏見を無くしたいのです」

 今後自分のように平民が魔法士を目指すときに、辛い思いをして欲しくないのだとユリアは説明した。リリアンヌは話を黙って聞き終わると、応援するわとだけ言ってくれた。


「リリアンヌ様が応援してくださると心強いです!」

 ユリアはふにゃりと笑って、マカロンに手を伸ばす。アイベルはリリアンヌの空のティーカップに紅茶を注ぎ、ニコニコと二人を眺めていた。


 


 お茶会も終わり、ユリアは部屋に戻る。荷物を軽く整理して、ロッキングチェアに深々と座った。しばらくゆらゆら揺れてぼんやりとしていたが、机に積んでいた本に手を伸ばした。ユリアは魔物退治の書という本を細かく読んでいく。先日の魔物事件と自分の力について、ユリア自身でも調べようと思っていたからだ。

 魔物退治の書はどうやら火属性と水属性向けの本のようで、戦術や戦闘形態などが記述されていた。魔物の種類によっても効果的な魔法が違うようで、何百種類も魔法があるらしい。しかし、全部を駆使するのは至難の業のようで、一般的には簡単な魔法の組み合わせが利用されているようだ。

 ユリアは本を読み終えて、次の本に手を伸ばす。先ほどの本には、魔法で致命傷を与える、または己を守ることしか書かれていなかった。ユリアが探しているのは、魔物に干渉する魔法である。ポポラ先生達はそんなことは聞いたことがないと言っていたが、似たようなものはあるのかもしれないとユリアは気になっていた。

 魔物の歴史、帝国軍国記、魔法士戦闘報告書など読んでみたが、求める情報は何処にもなかった。

 

 ユリアは時間を確認すると図書室に向かった。司書さんに知りたい情報は隠して、魔物と魔法についてもっと詳しい本がないか聞こうと思ったのだ。日は既に落ちていたが、図書室では上級生達が数人勉強している。ユリアは物音を立てないようそっと司書の元に向かった。


「こんばんは。あの、魔物と魔法に関する専門書ってこれ以外にありますか?」

 ユリアは借りていた本を机に積んでいく。司書は本のタイトルを確認すると、まだ本はあるがユリアの読んだ本以上のレベルの内容ではないと説明する。


「ここは候補生達が魔法士になるための図書室だから、学術的な本は少ないですね。もし、より専門的な本は公爵家の図書館の方にあるでしょう」

 司書はそう説明して、図書館の利用には講師達の推薦書と私の推薦が必要だと述べた。


「私からの推薦は出せますよ。勘違いしてはいけないので伝えますが、誰にでも出すわけではありません。一定の条件をクリアしている方のみ出すものですから。あなたは十分にその資格を持っています。後は4人以上の講師から推薦を貰う必要があります。それはあなたから講師の皆様に伝えてお願いする必要があります」

 司書はそう説明すると、机から薄紫色の紙を取り出し、何か書き込んだ。そして印を押すとユリアに推薦書だと手渡す。


「ありがとうございます!まさか司書さんから頂けるなんて…」

 ユリアは勢いよく頭を下げてお礼を伝えた。司書は講師陣から直ぐに推薦が取れるといいですねと言ってくれた。


 ユリアは寮に戻りながら、図書館について考えていた。司書さんに相談してみてよかったとユリアは心から感謝した。公爵家の図書館は蔵書数も本のレベルも国内有数だと司書は言っていた。ユリアは新た強い情報を手に入れられる事とより多くの本を読めるかもしれない喜びで、スキップする。図書館利用の推薦制度をもっと早く知っていれば…とユリアは思い、読書家のリゲルにも伝えようと決意をするのであった。

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