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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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噂に集まる人

 次の日ユリアが教室に入ると、困った顔をしたパトリックが目に入った。パトリック、マックス、テトは同級生達に囲まれ、あれこれ質問責めにあっていた。噂で魔物事件について聞いたのだろう。マックスはうんざりしたように同級生に説明する。テトはポポラ先生が如何にカッコよかったかを語り、注目を集めていた。テトの臨場感溢れる説明のおかげで、話を聞いていた候補生達は土属性に対する意識が少し変わったようだ。土属性に対して好印象を持っていた人達は、純粋に感動し凄いなとポポラ先生を褒めている。パトリック達を取り囲み熱心に話を聞く生徒の一方、不快そうにその様子を見ている集団もいた。ベリムス達である。ベリムス達は最近表立ってユリア達に攻撃していなかったが、教室の関心を奪っていることがどうやら気に食わないようだ。


「ポポラ先生は凄かったのだろうけどよ、お前ら腰抜けはただ見てただけだろうが?」

 ベリムスが離れたとこからテトの話を遮って、馬鹿にしてきた。ユリアはなんて言い方だと、ベリムスを見ると平民如きが俺を見るなと怒鳴られる。


「……ではあなた様はあの時何か出来たとおっしゃるのですか」

 ユリアは冷たい目でベリムスを見据えた。パトリックはユリアが怒っているのに気がつき、驚いていた。いつもは無邪気で優しいユリアが…ユリアと最近話すようになっていた他の候補生達も驚きで固まっている。


「はっ…はぁ?俺たちは火属性だぞ?お前らと違って、何かしら出来だと思うがな」

 ベリムスはユリアがまさか言い返すとは思わず、少し動揺したが直ぐに強気に睨みつけた。


「火属性の方々はまだ魔法は習っていないと聞きました。魔物とも直接戦闘経験のないあなた様が咄嗟に何かできるとは思いません。私達は確かにあなた様が言うように、何も出来なかった。しかし、私達はあの時命の危機に晒されていたのですよ。私達は戦闘訓練なんて受けたこともないし、まさかそんな危険に直面するとも思ってもいませんでした」


 ユリアはずんずんとベリムスのもとに向かい、彼の真正面に立った。ベリムスはユリアの怒っている顔を見るとふんっと鼻を鳴らし、結局腰抜けじゃねぇかと笑い飛ばした。


「今、私たちが助かっているからこそ、こんな話が出来ているのです。あなた様は数時間前に死にそうになった私達を馬鹿にする権利はあるのですか?あなた様があの場にいれば魔物達を一掃できたと言う自信をお持ちなのですか?」

 ユリアは淡々と自分の考えを述べる。ユリアはこのお坊ちゃんが土属性を、平民を、ユリア達を馬鹿にするのが今日は我慢ならなかった。

 確かに何も出来なかったが、必死に役に立とうと自分達なりに頑張ったのだ。実際に窮地を救ったのは自分の加護の光ではあるが、あれは精霊様のおかげだとユリアは心の中で思っていた。とにかく、ベリムスがこれ以上侮辱するのは許せないとユリアは真正面から睨みつけた。


「まぁまぁ、ユリアも落ち着けって。ベリムス、お前は相当火属性の才能に自信があるようだな」

 マックスはユリアをベリムスの方から離れさせた。他の候補生達はハラハラとその様子を見守っている。ベリムスの友人達はユリアを睨みつけているが、それ以外はユリアに同情的だった。

 自分達が同じような場面に遭遇していたら…?土属性組が助かっているから話を面白がることが出来たが、怪我をしていたら…?候補生達はテトの説明する巨体の魔物を思い浮かべ、自分がその場にいたら何が出来たかを想像した。


「煩い。お前ら土属性なんか役立たずじゃねぇか」

 教室の空気が変わってきた事に気が付き、ベリムスは怒りを滲ませマックスに文句を言った。



「……その場にいなかった者があれこれ文句をつけるべきではないだろう」

 一人話の輪に入らず、小説を読んでいたリゲルがボソリと呟いた。彼の声は非常に小さかったが、静かな教室には響いた。


「んだと!?」

 ベリムスの怒りの矛先がリゲルに向かう。パトリック達はリゲルが話を聞いていたことも驚いたが、庇ってくれたことに衝撃を受けていた。


「……未熟な者は己の鍛錬に励むべきだ」

 リゲルは本から顔を上げず、そう静かに言う。ベリムスはその言葉に激怒し、殴りかかろうとしていた。



「火属性ダントツで優秀なリゲルの言葉だから何も言えないよな」


 教室の誰かがそう呟いた。そうだよな、俺たちも自分の事に集中しなきゃだよなと騒めきが広がっていく。

 ベリムスは合同訓練の時にリゲルに負けた事を暗に馬鹿にされているのだと気が付き、誰が最初に言ったのかと怒り狂った。



「貴方達、鐘の音は聞こえなかったのですか」

 ネクシア先生が教室に入るや否や、冷たい声で候補生達を咎めた。しんと一気に部屋は静まり返り、それぞれ席に着いていく。ベリムスは怒りがまだ収まらないようで、椅子を乱暴に引いてドカンと座った。


「……経験上ですが、心に余裕がない者は良い結果は出せません」

 ネクシア先生は無表情で教科書を開き、講義を始めた。候補生達はネクシア先生の言葉の意味を密かに囁き合った。

 ベリムスはこれで悪い生徒の烙印を押されたのかもしれない。ユリアの勝利だと単純に面白がる候補生も中には混じっていた。

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