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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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希望の光

「精霊様に祈りましょう」


 テトの言葉に一階の男達も祈り始める。もう最後は精霊様に頼るしかない。パトリックもマックスも目を閉じて祈りを捧げた。


 ユリアも、小窓の前に立ち猪達の咆哮を聞きながら、目を閉じた。首のロケットをぎゅっと握りしめ、祈り始める。


(精霊様、精霊様。わたしが感謝の言葉を告げられるのはもしかしたら最後かもしれません。いつも私達を見守ってくださり、ありがとうございます)


 ユリアは精霊に日頃の感謝を告げ、今後ともアウレリア帝国と皆んなに精霊様の御加護をとお願いをする。

 どしんと強い衝撃が加わった。パラパラと天井から木の破片が降ってくる。きっとあと一回でバリケードは壊れてしまうだろう。しかし、ユリアは祈りに集中し続けた。




(精霊様…どうか、どうか私達をお守りください…どうか、この魔物達から私達をお救いください…!)

 


 ユリアの頬に涙が伝う。強く心から救済を求め祈ったその瞬間、辺りは白い光に包まれた。白い光はユリアを中心に広がり、魔物を取り囲む。そして光が魔物に触れた瞬間、魔物達は絶叫した。しばらく魔物達の声が響き渡ると、辺りは沈黙に包まれた。



「お、おぬし…今何を…」

 ユリアの光を側で見ていたポポラ先生が呆然と立ち尽くしていた。ユリアから白い光が溢れたと思ったら、魔物達が光に包まれた。そしてあろうことか、あんなに暴れ狂っていた魔物達が大人しくなり山に帰っていったのだ。ポポラ先生ただ一人だけが、その光景を目撃していた。


「ま、魔物がいませぬぞ!な!?助かったのですか?わたくしたち、助かりましたのでしょうか!?」

 目を開けたテトが外を見て興奮する。テトの声でパトリックとマックスも確認し、魔物の姿が無いのを知ると飛び跳ねて喜んだ。


「魔物達は何処へ…?」

 ユリアも確認して首をかしげた。ユリアのおかげなのだが当の本人は気づいていない。男達もパトリック達が歓声をあげているのに気がつき、助かったのだと悟った。

 張り詰めていた緊張の糸が切れたようで、男達の一部はわんわん泣き始めた。そして、ポポラ先生にありがたやありがたやと感謝し始めた。


「わしは…いや、まぁ。とにかく助かって良かったのぉ」

 ポポラ先生は説明しようとしたが、考え直し、男達を慰めた。討伐部隊が到着したようで、外から集団が近づいてくる音がした。



「誰か、誰かいますかー!」

 扉の外で男が叫んでいる。討伐部隊の騎士だろう。男達は居るぞーと叫び返し、壊れかけのバリケードを移動させる。ユリア達が外に出ると、ズラリと鍛え抜かれた騎士と数人の魔法士が並んでいた。


 先頭の騎士がポポラ先生を見ると、先生ご無事で!と駆け寄ってくる。


「ここは何とかなったのじゃ。魔物達は山に帰っていった。おぬしら、魔物達の討伐と怪我をしている者たちの手当を頼む。わしは、候補生たちを連れて公爵様に一刻も早く報告をしたい。馬車の手配を頼むぞ」

 ポポラ先生はテキパキと指示を飛ばしていく。数人の魔法士はポポラ先生からどの様な魔物だったかを聞き、メモを取っていた。


「君達、初めての採掘練習だと聞いたけど、災難だったね…」

 騎士の一人がユリア達を慰めてくれた。ユリア達は怪我をしていないか確認されると直ぐに馬車に乗り込むよう告げられた。



 屋敷に戻る間、ユリア達は何故魔物達が突然帰ったのか話し合った。そして、ポポラ先生の弓矢がいかに凄かったかを言い合い、先生にあれは何だったのかを聞きたがった。


「土魔法士は魔法石の加工に長けておると以前説明したじゃろう?あれは弓矢に魔法石の加工を施し、威力を倍にしたものじゃ。即席じゃったし、材料も不足していたから出来は微妙じゃったがなぁ…」

 ポポラ先生は眉を下げて説明する。出来が微妙であの効果なのか…!とユリア達は興奮する。先程まで危険な目に遭い、死にそうになったのに皆意外と元気であった。




「わしはおぬしらが無事で本当に良かった…本当に良かったのじゃよ…」

 ポポラ先生はしみじみと呟いた。魔物について語り合うユリア達を眺めながら、心から感謝した。


(あれは加護の光のようじゃった…あれは何だったのじゃ…しかし、この者はわしらの想像以上に精霊様に愛されている様じゃの…)


 ポポラ先生はユリアから溢れ出てきた光を思い返し、考え込んだ。ユリアの光について、簡単に表立って言うべきではない。時期と場合、伝える相手を慎重に考えなければならぬと長年の勘がそう言っていた。先生は無邪気に魔物の話で盛り上がるユリアを見ながら、一人黙って思い巡らすのであった。

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