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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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暴れ狂う魔物

 どしんどしんと壁や扉に巨体がぶつかる音が響く。ユリア達はどうする事も出来ず、ただバリケードが壊れない事と救助が間に合う事を願っていた。男達は死を覚悟したのか、自分の衣服にペンで遺書を書き込んでいる者もいた。体格の良い者達は死にたくないとバリケードを支え、必死に守っていたがじわじわと体力を奪われているようで、目に焦りが見えた。


ズドン


 数匹が一気に扉に激突した。あまりの威力にバリケードごと揺れる。ユリアは一階の様子を見て、もう間に合わないかもしれないと思い始めた。


(サルラン先生…リリアンヌ様…エルミー様…アイベルさん…ネクシア先生…サリー先輩、食堂のおばさん…公爵様…)

 ユリアが感謝を伝えたい人達の顔が次々と浮かんでくる。まだまだやりたい事も学びたい事もあるのに…ここで死んでしまうかもしれないとユリアは目を伏せた。



「ユリア殿、諦めてはいけないですぞ!」

 テトが大きな声を出した。テトの言葉は部屋全体に響く。呆然と外を見ていたマックスとパトリックもハッと我にかえる。


「そうじゃ。諦めてはならぬぞ。まだバリケードは壊れてはおらぬ。まだ希望は残っておるのじゃ」

 ポポラ先生は部屋の隅で何か作業しながら、テトに賛同した。


「でも、バリケードはもうすぐ突破されそうだし、もう打つ手はないんじゃ…」

 マックスが低く唸り声を上げながら暴れる猪に目にやり、項垂れる。パトリックも自分たちも男達のように遺書を書いたほうがいいのかもしれないと呟いた。


「まだじゃ!おぬしらに何かあっては公爵様に顔向けできぬぞ。土属性の意地をみせてやるわい」

 ポポラ先生は作業が終わったようで、ユリア達の方に振り返った。先生はキラキラと輝く魔法石が持ち手に埋め込まれた不恰好な弓と数本の矢を持っていた。


「ポポラ先生…?」

 ユリアはポポラ先生が作った弓矢を見て、まさか闘うのかと驚く。弓矢では魔物の皮膚は貫通しないだろうし、ましてや即席で作ったものだ。とてもじゃないが、まともに通用するようには思えなかった。


 ポポラ先生は見ておるのじゃと言うと、弓に矢を番えた。キリリと力一杯弓を引いて、狙いを猪に定める。ポポラ先生は何か少し呟いて矢を放った。その瞬間、魔法石も光り輝く。


「あっ…!!!」

 ポポラ先生の矢は猪の目に命中し、なんと貫通した。目からはドス黒い血が流れ出し、猪は痛みに悶え苦しんでいる。猪はぐるぐるとその場を回り、建物に攻撃する余裕は無い。


「ポポラ先生…!凄いです!」

 ユリアはポポラ先生の弓矢の威力に感動する。これなら、何とか間に合うかもしれない。パトリック達も少し希望が見えたようで、顔色を取り戻す。


 しかし、まだ猪は数頭ほど建物に攻撃してくる。ポポラ先生は慎重に弓矢を放ち、二頭ほど建物から引き離すことができた。


 一階に響く激突音が減ったことに男達は少し安堵する。ポポラ先生が弓矢を引く姿をみた一人が先生が助けてくれたと伝えた。男達はあと少しだとバリケードを支え、祈りを捧げる。



「もう矢は無くなってしもうた。出来る限りのことはしたのじゃ。後は討伐部隊が来るのを待つだけじゃ。それまで耐えて欲しい、皆の者」

 ポポラ先生は男達に頼むと頭を下げた。男達は頭をお上げくださいと必死に懇願する。絶体絶命だった自分たちに救いの道を作ってくれたのだ。このチャンスを逃しはしないと男達は誓って、力を振り絞った。


「もうすぐ討伐部隊が来るはず…!」

 パトリックは腕時計で確認し、遠くを見つめた。



「ポポラ先生!大変ですぞ!魔物達の様子がおかしいでございますぞ!?」

 窓に張り付き観察していたテトが慌てたようにポポラ先生の袖を引っ張る。何事じゃと先生が確認すると、少し焦ったようにバリケードをチラリと見た。ユリアも恐る恐る覗いてみると、矢の攻撃で離れていた魔物が雄叫びをあげている。


「先生、不味いかもしれません…私、森で死にかけの獣を見たことがあります。あんな風に叫ぶ獣は最後に…」

 ユリアが説明しようとした途端、今までで一番の振動が建物に響いた。バリケードの一部が崩れる音がする。


 ユリアの予想通り、死を悟った魔物は最後の暴走を始めたようだ。一気に扉に向かって突進してくる。何度も何度も強い衝撃が加わり、男達は数人吹っ飛ばされた。あと数回突撃されれば、もう完全に壊れてしまうだろう。



「おぬしら、わしの力が至らず申し訳ないぞ。わしが今日採掘に連れてこなければ…」

 ポポラ先生は拳を握りしめ、すまぬと謝った。


「先生!まだですぞ!まだ諦めてはいけませんぞ」

テトは涙を堪えながら、先生に訴えた。そして、祈りましょうと全員に懇願する。




「精霊様に祈りましょうぞ。わたくしたちを見守ってくださる精霊様に…!」

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