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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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洞穴

「おぬしら足元気をつけるのじゃぞ〜」

 ポポラ先生は石がゴツゴツした洞穴をよいしょと進んでいく。蝋燭の火はぼんやりと辺りを照らし、壁に埋まる石が時折光って幻想的だ。公爵家の屋敷から馬車で数時間揺られたところに目的の鉱山はあった。ポポラ先生は候補生達用の練習場に向かうと説明し、洞穴を進んだ。

 ユリア達はいつもより装備をしっかりとしている。怪我をしないように長袖長ズボンに、厚手の靴下、軍手、眼鏡、長靴、木のヘルメットという貴族には絶対見えない格好であった。パトリックとマックスは互いに見比べ、こんな姿になる日が来るとは思わなかったと素直に感想を述べる。ユリアはズボンを履くのは生まれて初めてで、戸惑っていたが、非常に気に入った。履き心地だけでなく、動きやすさがスカートとかなり違う。ユリアは私服でも履いてみたいなと思ったが、パトリックに流石に難しいかもよと優しく助言された。

 ずんずんとポポラ先生は進み、ようやく練習場に到着した。練習場は大きな石の塊達が切り出されており、山積みになっていた。作業用の椅子があちらこちらに散らばっており、好きに座って良いとポポラ先生は言う。ユリア達はそれぞれ離れた所の椅子に座り、石の塊を手に取った。


 ユリアはとりあえず近くにあった塊を手にする。ハンマーでコンコンと叩くとパキリと割れた。変わったものは無いようなので、もっと細かく割ってみる。すると鉄鉱石のカケラが出てきた。ユリアはタガネに持ち替えて、慎重に削っていく。そこまで大きな石ではなかったので、直ぐに鉄鉱石は取り出せた。ユリアはポポラ先生に手を挙げ、報告するとポーチから新聞紙を取り出すように言われた。


「鉱物が採れたら一個づつ新聞紙に包むのじゃ。持ち帰るときに石同士が当たって削れては困るからのぉ」

 ユリアはなるほどと頷き、石を丁寧に新聞紙で包んだ。さぁ次は何の石だろうとユリアは、別の塊に手を伸ばす。


 コンコンコン。石を叩く音が練習場に響く。パトリックやマックスもいくつか石を採れたのか、新聞紙の塊が側に置いてあるのが見えた。テトはというと効率良く採取できているようで、新聞紙の塊が既に沢山積んであった。


 ユリアは夢中で石を削った。鉄鉱石の他に赤や青などの石も採れたが、どんな種類かは素人目には判断できないので一旦置いておく。ポポラ先生は初めてはそんなに採れないからのぉと言っていたが、案外自分達は上手くいっているのではとユリアは思う。







「ポポラ先生!てぇへんです!魔物が…!」

 真剣に作業を進めていると、突然入り口から背の低い男達が慌てふためきやって来た。魔物のという言葉にユリアとテトは直ぐに反応する。


「魔物が出たのじゃと?ほうほう。なんじゃと…!?前回レベルの奴が出現したのじゃと?」

 ポポラ先生は、泣きそうになりながら必死に説明する男達の話を真剣に聞いていた。先生は去年火属性と水属性の講師達と討伐に出向いたが、その時と同じレベルの魔物が再び現れたようだ。


 パトリック達は真っ青になった。討伐部隊を呼ぶにも時間がかかる。逃げ場の少ない採掘場では危険度も高くなるだろう。ポポラ先生は直ぐ様練習場を出るようユリア達に指示する。


「残念じゃろうが、石を持ち帰る余裕は無い。出来るだけ身軽にして行動するのじゃ」

 テトが急いで石を鞄に詰めようとしていたのを見て、ポポラ先生は釘を刺す。石はまた取りに帰れるのだ。身の安全が何よりも優先されるべきだとポポラ先生は冷静だった。


 ユリア達は早足で練習場を出る。練習場までは一本道なので魔物が入り口から入れば絶体絶命である。ポポラ先生は洞穴から脱出すると、近くの建物で待機すると告げた。洞穴から歩いて数分で建物が見えた。どうやら軽い加工をする場所のようで、中には機械や機材が散らばっている。部屋の隅には避難して来た労働者達がシャベルやツルハシを持って構えていた。


「みな、落ち着くのじゃ。討伐部隊への知らせは既にしてあるのじゃろう?」

 ポポラ先生は怯える男達を宥めた。知らせが既に出たことを確認すると、まずバリケードをつくるよう指示する。ユリア達は、男達が機械や機材を扉や窓の前に移動させるのを手伝った。幸い頑丈で大きな機械もあったため、ユリアはバリケードを見て魔物は容易に入ってはこないだろうと少し安心した。

 しかし、それも束の間魔物の声が辺りに響き始めた。地の底から響くような恐ろしい声に男達は小さくヒッと悲鳴をあげる。


「おぬしら、バリケードを支えて少しでも壊れないようするのじゃ。わしは様子を見てくる」

 男達にそう告げ、2階に続く階段を登っていく。


 ポポラ先生は2階の小窓から外の様子を確認し、不味いのぉと呟いた。子どもは奥にいろと男達に言われ、ユリア達は先生のもとに向かった。

 ユリアも背を伸ばし、小窓から外を見る。外には数頭の真っ黒な猪が彷徨いていた。目は不気味に黒く光り、頭には特徴的な形のツノが生えている。ユリアが孤児院の近くで見た魔物とは比較にならないほど、恐ろしく大きな猪を見て不安になる。あんなに力も強そうな魔物が攻撃してきたら、バリケードなんて一溜まりもないかもしれない。


 小窓からユリア達が覗いていると、魔物の一匹と偶然目があった。その猪は建物を見ると、凄いスピードで突撃してくる。ズドンと2階まで振動が伝わってきた。魔物が狙って来たのは入り口だったが、幸いバリケードは機能したようで、なんとか持ち堪える。一階から男達の啜り泣く声が聞こえて来た。






「公爵家の部隊が到達するのをかなり早めに見積もっても、あと1時間はかかるのぉ…」

 ポポラ先生はもじもじゃの髭を触りながら、深く溜息をついた。

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