採掘練習
「今日は採掘の練習で、この石を叩き割っていくのじゃ!」
ポポラ先生はよいしょと籠から重そうな石の塊を4つ取り出した。あんなに小柄なのによく持ってこれたなと小声でマックスが呟く。こらとマックスが軽く小突いて叱った。ポポラ先生は気にする事なく、大きな眼鏡をかけると石を軽く叩き始めた。
「ほれほれ。まずお手本じゃの。このハンマーでまず大まかに叩く。ほれ、割れたじゃろ。これを細かく削っていく場合は、タガネを使う。タガネはこの平たい道具じゃ。これでこのように割ったり、表面を削る。タガネはこのゴムハンマーでこう叩くのじゃな」
ユリア達の表情を見ながらポポラ先生はゆっくり説明していく。眼鏡をかけるのは飛び散った石のかけらで目を怪我しないよう守るためじゃと言って、ユリア達にもグラスを渡す。
「まぁ、今日は鉱物ではやらんの。まずは練習じゃから、この石の中にある小さな丸石を取り出してみよ」
ユリア達は恐る恐る石の塊に手を伸ばした。ユリアは手袋をはめ、眼鏡をしっかりかけた。ハンマーでコンコンと叩いてみる。軽めに叩いたのにも関わらず、石は真っ二つにパキリと割れた。
「ハリア、石目を上手く使ったのぉ。石には割れやすい方向があるのじゃ。ハリアはまさに石目の方向に軽く叩いたのでこんな風に割れたのじゃな〜」
ユリアはそんな見分けたつもりはなかったので、キョトンとした。パトリック達は石目を探そうと石をいろんな角度から見るが、よく分からないようだ。マックスはとりあえず叩いてみると、石は様々な方向に小さく割れてしまう。先生!と助けを求めるとポポラ先生はわひゃわひゃと腹を抱えてしまった。
「石目に沿わず力任せに割ると、思いもよらぬ割れ方になるのじゃ。まぁ、正直慣れじゃからのぉ〜石目を見分けるには経験じゃな」
落ち込むマックスの肩を軽く叩き、新しく塊を先生は渡した。
ポポラ先生は各自好きにやってみるが良いと言い、地面に座り込んだ。ユリアは半分に割れた石の片方をタガネで少し削ってみる。中々石目の判断が出来ず、石は予想もしていない方向に割れてしまう。トントンと端の方を削っていると、明らかに色味が違う丸石の表面が見えた。おぉ!とユリアはポポラ先生を振り返ると、そのままやってみるのじゃと先生は頷いた。ユリアは全体の大きさがわからないので、大きめに想定して周りを慎重に削っていく。石の粉で目的の丸石が見え難いなと思っていたら、パトリックがブラシを持って来てくれた。
「ポポラ先生がそこにある道具は好きに使っていいって」
ポポラ先生が広げた様々な器具の中から取ってきてくれたようだ。パトリックに感謝をして、ブラシで粉を除いていく。ゆっくりと時間をかけ、丸石の周りをかなり削った。
「あっ…!」
あと少しという所で、ユリアは石目を見誤ってしまった。丸石まで影響されたのか、パキリとヒビが入った。ユリアは眉を下げ、丸石の表面を触った。もう少しだったのに…ユリアはしょんぼりとブラシで粉を取り除いていると、ポポラ先生が側に来る。
「惜しかったのぉ〜まぁ、最初だからしょうがないのじゃ。これから暫く練習するからのぉ。今後できるようになれば良いのじゃ。ペトロック、カト、モモングも同じじゃぞ〜ほれほれ皆落ち込むでない」
ポポラ先生は盛大に名前を間違えているが、誰も何も言わなかった。ユリアはパトリック達の石に目をやると、どれも失敗したのか粉々に割れている。テトはかなり落ち込んでいるのか、石のカケラをかき集め、戻そうとしている。
(わかるよテトさん…!あんなに集中して取り組んだのに、割れたら凹むよね)
「ポポラ先生、土魔法士は皆んな採掘するんですか?」
パトリックは自信が無くなってしまったのか、少し絶望気味に尋ねた。ポポラ先生はそんな一回ぐらい出来ないで落ち込むでないと笑う。
「土魔法士でも採掘専門はあまりおらぬぞ。大体採掘は人を雇うからのぉ。だが知識としては大切じゃぞ。魔法を使うだけが仕事ではないぞ。それに石の加工に携わることがあるのじゃから、採掘できて悪いことはないじゃろ。まれーにじゃが、加工する石を自分で採りに行く者もおるがのぉ」
ポポラ先生は気楽にやるのじゃと眼鏡を外した。
「なんだぁ、必須じゃないのかぁ」
マックスが安堵したように腕を上に伸ばすと、テトがそれでも大切ですからと諭した。
「まぁ、明日からも石割りの練習するからのぉ」
これにて解散じゃ!とポポラ先生は道具をかき集めた。石の処理は最後に行うので、ここに溜めていくそうだ。ハンマーやタガネの片付けを手伝い、寮に戻っていく。
服が粉まみれになってしまった。ユリアは少し頭を悩ませる。ジャガイモ作りの時も土汚れに困っていたが、どうにかやりくりをしていた。しかし、細かい粉は繊維に入り込んで綺麗にするのは一苦労だとユリアは思った。洗濯は専門の業者に預けているが、流石に申し訳ないとユリアは遠慮する。
結局、作業用にしてしまおうとユリアは判断した。ジャガイモで得たお金はまだ残っている。いくつか新しく服を買わなければなと、ユリアは粉を落としながら考えるのであった。




