オレガノ
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ユリアは次の日いつもより1時間早く起きる。野菜を籠に入れ、厨房に向かった。いつものおばさんに許可を貰い、端の方を使わせてもらう。料理人達は朝食の準備に追われており、ユリアが作業していても気にも留めなかった。
ユリアはまずナスとトマトを細かく刻み、レタスは手で一口大に千切った。そして以前購入したオレンジ色が特徴的な鍋を取り出す。オリーブオイルを多めに垂らし、火をつける。温まったら、トマトとナスを炒めた。そして水を加え弱火で煮込んでいく。頃合いを見て塩と胡椒を加え、味見をする。ベーコンを入れるか迷ったが、アイベルがお嬢様は朝は肉類は食べないと聞いたので、入れなかった。ユリアは戸棚にオレガノというハーブを見つけたので、ほんのひとつまみ入れる。オレガノは香りが強いので少量でいいのだ。あっさりとした爽やかなオレガノの風味は朝食にはぴったりだろうとユリアは考える。味が決まったら最後にレタスを加えた。そして火を止める。ユリアはちらりと時計を見て、まだ余裕があるのを確認する。
次はバゲットを焼いていく。朝食用のパンは数種類あるが、今日は少し堅めを選択した。網焼き機を借り、さっと表面を焼いていく。忙しい朝の時間を邪魔しないように気を張ってユリアは動いていく。
パンも焼けたのでユリアはパン籠に入れて、鍋ごと部屋に持っていく。リリアンヌの部屋の前に立ち、声をかける。すぐにアイベルが扉を開けてくれた。
「おはようございます、リリアンヌ様!」
ユリアは食事の席について眠そうにしていたリリアンヌに声をかける。リリアンヌはあらと目をパチクリさせ、鍋に目をやった。
「ユリア、それは何?」
「朝食のスープを私がつくりました!是非お食べください」
ユリアはアイベルに鍋とパンを渡した。帰ろうと思っていたが、リリアンヌが一緒に食べようと言う。
「私に用意されてたパンがあるから、それをユリアが食べて」
アイベルがパンは手配していたようだ。ユリアはリリアンヌの反対の席に着き、アイベルが準備するのを待った。手伝おうとしたが、侍女の仕事を奪ってはダメよとアイベルから釘を刺されたのだ。
「ユリア!これ、美味しくてよ…!あの時のスープみたいな優しい味…」
リリアンヌは素直に感想を述べてくれた。いつもなら、悪くないわと照れ隠しで言うのだろうが、今日は正直に言ってくれたようだ。
「お嬢様。あの時のスープもユリアさんが作ったのですよ」
アイベルがそっと伝えると、リリアンヌはまじまじとユリアを見つめた。
「あなただったの…私、あなたに助けられてばかりね」
リリアンヌは少し顔を赤くして、ありがとうと小さな声で呟いた。ユリアはリリアンヌが喜ぶ姿が見れて、心がほんわりと温かくなった。
「気に入ってくださったら、嬉しいです!」
うふふとユリアは笑う。リリアンヌはにやにやしないでと、頬を膨らませそっぽを向いた。本当に可愛らしい人だとユリアは思う。
「あの!私、オレンジやグリーンが好きなのですが、リリアンヌ様は好きな色はなんですか?」
ユリアはそれからリリアンヌが好きな事や興味のある事を聞き出していった。今後リリアンヌのために何かする際に参考にしたいと思ったからだ。上手く話の流れで聞きたかったのだが、ユリアは少し不器用であったので、直球に尋ねてしまう。本人は上手く遠回しに尋ねたつもりではあったが。リリアンヌはそうした意図を理解したうえで、ツンとしながら答えてくれた。リリアンヌはこんなに自分に興味を持って話してくれるの人が久しぶりで、内心ドギマギしていた。
(あぁ…お嬢様なんて可愛いらしいの…ユリアの前では本当に表情がコロコロと変わって、リラックスされているわ…いつものご友人の前では気を張っていらっしゃったけれど…ご友人達はあれでもお嬢様に好意を持って接しておられたのけれど、いかんせん我が強くいらっしゃるから…とりあえず、ユリアの前だと嬉しそうで良かった…!)
リリアンヌの側で話を聞いているアイベルは思わずにんまりした。お嬢様の幸せがアイベルの喜びである。アイベルはユリアが候補生として来てくれて、本当に良かったと感謝した。これからも友人としてお嬢様を支えていってほしいと思っている。お嬢様の笑顔が続きますように。お嬢様が毎日ぐっすり眠れますように。リリアンヌの横顔を眺めながら、アイベルはそう強く願ったのであった。




