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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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公爵からの呼び出し

 次の日、ユリア達は心なしか元気がなかった。パトリック達も昨日の出来事で、エバンズが心配なのか何処か落ち着きが無かった。今日は試験の評価が手紙で通知されるようで、他の候補生達は少し緊張気味であった。講義終わり頃に各部屋に手紙が置かれているそうだ。ユリア達も本来評価に対する緊張をしているはずなのだが、今回はそうではなかった。


「ユリア、エバンズに手紙って出せるのか?」

 マックスが遂に我慢できなくなり、ユリアに尋ねる。ユリアも手紙を送ろうと考えていたが、今は謹慎中かもしれないのでやめた方がいいのではと答えた。いつもはエルミーからの手紙に返信する形であったので、許されていたが今回は正直エルミーの状況が分からない。


「そうか…とりあえずエバンズからの手紙を待った方がいいかもな」

 マックスもユリアの説明に納得した。講義も終わったので、皆そさくさと帰っていく。きっと評価が気になるのだろう。皆いつもより早めに帰宅するので、教室にはユリア達しか残っていない。ユリア達も帰ろうかとしていると、グレンが慌てた様子でやってくる。


「あっ!いたいた。君達、時間ある?いや、無くてもつくって。大変だよ、公爵様からお呼び出しがかかっている。すぐに着いてきて!」


 グレンの言葉にユリア達は固まった。公爵様からの呼び出し…つまりエバンズの事であろうか。テトに至っては顔を真っ青にして、既に緊張して動きがぎこちない。


 グレンに連れられ屋敷に着くと、何故かリゲルとクルトもいた。クルトは緊張気味のユリア達を見て、そんなに緊張しなくてもいいだろうとテトの肩を叩く。ユリアはエルミー様の件でお叱りを受けるかも、エルミー様は大丈夫なのかと心配で、クルトの説明を聞いていなかった。



 公爵家の応接室に通されると、そこには公爵とエルミーが待っていた。公爵はユリア達にソファに座るよう促し、侍女にお茶を持って来させた。



「さて、今日集まってもらった理由は大体わかっているだろう?」

 公爵はユリア達をぐるりと見渡し問いかけた。ユリアは背筋を伸ばし、エルミー様は悪くないと主張することを心に決める。公爵様の目を真っ直ぐ見つめ、いつ聞かれても直ぐに答えられるよう頭の中で理由を組み立てる。


「久しいな、ユリア。今日君達を呼んだのは他でもない。経済学の発表で素晴らしい提案をしてくれたからだ」

 公爵は執事からユリア達のレポートを受け取ると、テーブルの上に置いた。


(えっ…経済学のお話だったの…!?)


 思わずユリアはエルミーの方を見ると、エルミーは安心してという風にウインクをした。なんだ、エルミー様そこまで怒られた訳じゃないんだと、エルミーの様子を見てユリアは理解する。ユリアは安堵していると、公爵がレポートの意見はどの様にまとめられたかを尋ねてきた。


「実はこのレポートを基に、北の森の一部で依頼制度と訓練制度を導入することになった。勿論試験段階であるため、大掛かりなものではない。実は北の森の領主は私の親戚なのだ。このレポートを彼にも見せたところ、導入したいと切願してきた。君たちのおかげで、北の森の問題が少しでも解決されるかもしれない。公爵家としても感謝したい」

 公爵の説明にユリア達は目を見開く。まさかレポートの内容が実現されるとは…パトリックは光栄ですと深々と頭を下げた。それに続き、皆んなも頭を下げる。


「毎年ボラム先生は、この課題を1年生に課すのだ。しかし、解決方法のアイデアを問うというよりかは、いかに情報を集め人を説得できるかを重視するものだった。しかし、君達は思いもよらぬ解決方法を出すと共に、論理的に意見を構築していた。ボラム先生が絶賛するのも納得だな」

 公爵は君達は素晴らしいと頷いた。こんなに褒められるとは…ユリアはエルミーを見て、嬉しいと声に出さず伝えた。



「公爵様、このレポートについて申し上げたい事があります。私達6人で作り上げた発表ではありますが、意見の発案者はユリアさんです。ユリアさんが一番の功労者だという事をお伝えしたいです」


 クルトが発言の許可を求め、ユリアが凄いのだと主張する。思わずユリアは、自分だけで考えられたものではないと告げようとしたのだが、マックスから制止される。


「ユリアの意見のおかげで俺たちも褒められたんだ。意見を出したのがユリアだって伝えるのは当然のことだろう?」

 マックスが小声でユリアを説得する。



「ほう。ユリア、君は私の想像以上に才能に溢れているようだ。1年前までは読み書きも出来ていなかっただろう。それがここまで成長し、結果を出している。試験の評価に関しても同様に素晴らしいものだった」

 試験の結果についてはまだ見ていなかったので、ユリアは目を丸くし公爵を見返す。パトリック達は凄いじゃないかと拍手してくれた。


「娘のエルミーが君が気になって仕方ないのは、当然だろうな。しかし、エルミー。エバンズとして脱走するのは屋敷の敷地内だけにしておきなさい」

 エバンズがエルミーだと知らないクルトは、えっと動揺した。リゲルはどうでもいいのかただ壁を眺めている。エルミーは、はいお父様と元気よく頷き、ユリアを見た。ユリアは良かったぁとホッとする。またエバンズとしてエルミーに会えるのだ。ユリアはエルミーに小さく手を振った。



「ユリア、君は2年猶予を持って12歳の試験に臨む予定だったが、どうだろうか。このまま皆と同じようにカリキュラムをこなし、5年生で試験を受けるのは?勿論2年分の給付金はきちんと送ろう」

 ユリアは直ぐにお願いしますと返事をした。可能であればこのままパトリック達と試験に臨みたい。歳の差はあるが、それを補う努力は出来ると自信があったからだ。


 公爵は満足気に頷いた。土魔法士は人手不足だから出来るだけ早く試験を受けてもらいたいと説明する。






「とりあえず、君たちのレポートによって助かる人々がいるのだという事を知って欲しかった。ユリアだけでなく他の者も素晴らしいレポートを完成させ、感謝する。皆、今後も精進するように」

 

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