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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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チャームの色

 今日は待ちに待った誕生祭である。ユリア達はルワン家の用意した馬車で街まで向かっていた。エバンズは公爵に許可を貰えたようで、約束の時間に颯爽と現れた。全身で嬉しそうなのが伝わってきたなとユリアは、朝のことを思い出した。エバンズはと言うと、ユリアの隣に座って上機嫌で外を眺めている。


「今日は何処に行こうかー?どこか行きたいところある?」

 パトリックがユリア達を見渡す。今回もテトはハーブを買いたいようで、露店に行きたいと言った。マックスは肉が食べたいと以前買ったポルラ牛の店が良いという。


「あの、調理用具の店に行ってみたいです。私、料理をするんですが、厨房にある器具は大人数用ばかりで1人分を作るには多すぎて…」

 ユリアの提案にパトリック達は快く承諾してくれる。マックスは料理なんてした事ないので、器具を見てみたいと言った。テトはお坊ちゃんは凄いですな!と純粋に感動したが、マックスから馬鹿にするなと頬をつねられてしまった。


「エバンズさんは行きたいところありますか?」

 パトリックがエバンズも何か買いたいものがあるかと尋ねた。エバンズはユリアの耳元で、何処でも皆んなとなら楽しい!と囁いた。そのまま言葉通り伝えると、テトは嬉しいですなと喜んだ。


「エバンズはお祭り始めてか?ポポラ先生とかと来たことない?」

 マックスがエバンズの方を向いて聞いた。エバンズは首をフルフル横に振った。エバンズはユリアに、公爵家の令嬢として式典に参加したことはあるが、お祭り自体を楽しんだことはないと説明する。


「お祭りは初めてなので、楽しみだそうです」

 ユリアはそのまま伝えるわけにはいかないので、そう言った。マックスは屋台のグルメを沢山食べようなとエバンズの手を握ると、おー!と上にあげた。


「………!!!」

 

 エバンズはいきなり男の子に手を握られ、びっくりしたようだ。パトリック達はエバンズを男の子だと思い込んでいる。ユリアも最初はそうだと思っていたので、咎めることは出来ない。エバンズはマックスから手を離されると、ユリアにしがみついてきた。


 そんなエバンズの様子にはパトリック達は気づくことはなく、お喋りに夢中になる。もうすぐ街中だ。林檎の飾りと美しい藍色のリボンが街を煌びやかに彩っている。皇女殿下の瞳の色だとパトリックは言った。林檎の飾りには、赤ではなく藍色のものもある。出店をよくみてみると、藍色の林檎の飾りやリボンも販売されている。皇子殿下の誕生祭とはまた趣が違うお祭りになっているようだ。




 まずはテトのハーブを買いに行くことした。2番通りを目指し、広場を抜けていく。今回も簡易劇場が建てられている。劇の公演数も増えているようで、朝から夜中まであるようだった。今回は精霊の唄を授かりし女皇帝の生涯についての演劇のようで、ポスターがあちこちに貼ってあった。チケット売り場では夜の部の販売がされているようで、長蛇の列が5番通りまで続いている。

 ユリアははぐれないようにパトリックの鞄を握らせてもらい、反対の手でエバンズと繋いだ。ユリアはキョロキョロとエバンズの護衛を探したが、見当たらない。そんなユリアに気づいたのか、エバンズは護衛は一般人に紛れてるから、わからないわよと説明した。


 ユリア達は人混みをくぐり抜け2番通りに着いた。前回と同じように露店が立ち並んでいる。テトは前回買ったハーブの店を見つけると駆け寄って行った。


「おぉ!?なんと!これは…おぉ、こちらも素晴らしい。大変でござりますぞ!」

 テトは欲しかったものが予想以上に揃っていたのか大興奮だった。これは時間がかかりそうだとマックスは判断し、ユリアとエバンズ、パトリックに近くを観ていていいぞと伝えた。パトリックはテトとマックスとハーブを見ていると言ったので、2人で行くことにした。


 ユリアとエバンズは雑貨屋に行くことに決めた。以前サルラン先生に文鎮を買った露店が今回も来ている。ユリアはエバンズの手を引き、そこに向かった。今日も所狭しと変わった商品が並べられている。ユリアは一つ一つそれらを眺めていった。


(可愛いのがあるといいなぁ)


 ユリアはある物を探していた。エバンズはというと興味津々で顔を近づけて品物を眺めている。露店のおばあさんはエバンズを見ると、声をかけて来た。


「あんたいい所の育ちだろう?そのローブはシンプルだけど、中々いい生地じゃないか」

 おばあさんの指摘にユリアは少しドキリとする。エバンズはと言うと、ペコリとお辞儀をした。おばあさんはかなり古くて希少性のあるものだ、大切にしなねとエバンズに言うと、直ぐに子供の客の方に話しかけた。

 ユリアは思わず安堵する。エバンズの正体は決してバレてはいけない。護衛がついているとはいえ、公爵家の御令嬢が街をふらついていると分かれば、危険度もぐんと上がるだろう。気をつけなければとユリアは思う。


 ユリアはとりあえずバレなくて良かったと思い、ふと露店の端を見た。


「あっ!これいいかも…!」

 ユリアは小さく声を上げる。エバンズは何んだろうとユリアの横に立った。


「エバンズさん、私以前チャームを頂いたじゃないですか。あの時のお礼をしたいのですが…どの色がお好きですか??」

 

 ユリアはカラー展開が豊富な花のチャームを指さした。エバンズは以前ユリアに青い花のチャームをプレゼントしてくれた。今思えば、あの時御令嬢の言葉に落ち込んでいたユリアを元気づけようとしてくれたに違いないと思っている。そこで、ユリアも値段は劣るであろうが何かお返しをしたいと思っていたのだ。


 エバンズは嬉しそうにぴょこぴょこ跳ねた。そしてじっくりと色を確認すると、アンバーの花を選んだ。ユリアは私の瞳の色だと思い、自分のつけていたチャームを触った。


「あっ!もしかしてエバンズさんの瞳の色のチャームを私にくださったのですか?それで、この色は私の瞳の…」

 エバンズはユリアの言葉を遮った。ぽこぽことユリアの肩を叩き、恥ずかしそうにしている。どうやらユリアの言った通りのようだ。おばあさんは、あらあら仲良しねと笑って、少し安くしてくれた。


 エバンズはさっそくローブの下に下げていたポシェットにチャームをつけた。

 2人は互いのチャームを横に並べ、しばらく嬉しそうに笑っていた。

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