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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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図書室の常連

 試験が終わったからとはいえ、ユリアは毎日の復習をやめることはしない。毎日の積み重ねのおかげで、試験前も少し楽だったのだ。よし、今日も復習するぞと図書室に向かう。図書室に着くと常連のメンバーが勉強に励んでいた。上級生はいつも忙しそうだなとユリアは側を静かに通り過ぎる。

 空いている席を探しているとリゲルが居るのに気づいた。本に集中しているようなので声は掛けない。ユリアは近くの席が空いていたので、持っていた本を積んで座った。今日は経済学と数学のまとめもしたいので、関連図書を手に取った。パラパラと捲って参考になる部分を探していく。


(この図表では教科書よりも詳しく書かれている…メモしなきゃ)


 経済学の本に載っている表を写していると、リゲルが側に立っていた。リゲルはユリアの本が気になるようで、じっと覗き込んできた。リゲルの美しい顔が急に側にきたので、少しドキドキする。


(お人形さんみたい…)


 睫毛の長さに改めて気づき、ユリアはリゲルの顔をまじまじと見てしまった。リゲルはユリアには全く興味がないようで、写していた表をひたすら見ている。リゲルは暫くすると本棚の方に行ってしまった。ユリアは何がしたかったのかよく分からず、リゲルの後ろ姿を見つめた。不思議な人だから、考えても仕方ないやとメモを続ける。



「それ、数年前のデータだから。こっちの方がいいよ」


 リゲルは別の経済学の本を差し出してきた。リゲルの声をひさしぶりに聞いたので、ユリアは思わず顔を正面から見てしまう。リゲルの瞳にはいつも通り何も浮かんでいなかった。


「ありがとうございます。リゲルさん、この本のデータが古いってよく気づきましたね」


 リゲルは眉をほんの少しだけ動かした。


「その本の著者は10年前から本を出していないから、もう古いデータだろうなと思っただけ」

 リゲルはそれだけを言うと、自分の席に戻る。ユリアはリゲルの本の知識の幅広さに舌を巻いた。ユリアもよく本を読むが、リゲルはそれ以上であろう。以前も経済学の情報を集めるために、適切な本を素早く選定したと聞いている。この図書室にある本を殆ど読んでいるのではないだろうかとユリアは予想する。ユリアも興味のない分野にも手を伸ばして色んなことを吸収しようと決めた。


 経済学はまとめ終えたので、数学に取り掛かる。数学はやはり苦手なので、最近習った単元について学ぼうと、例題集と解説の本をユリアは手に取った。初めは例題を簡単に解けたのだが、少し問題が捻られたものは手が止まってしまう。うーんとペンをクルクル回して、悩んでいるとユリアに突然影ができた。


「お久しぶりね!試験が終わってすぐなのに、勉強しているなんて偉いわね」

 サリー先輩だ。サリー先輩は調べ物にきたようで数冊の本を抱えていた。


「お久しぶりです!数学の問題が解けなくて…悩んでいました」

 ユリアはあと少しで解けそうなのに、全く進まない問題を指さす。


「あら、こう見えて私は先輩だから教えられるかも。どの問題?あ、これね。ふむふむ…」

 サリー先輩は若草色の瞳を少し細めた。ぶつぶつと公式を呟き、解答までの筋道を立てていく。問題が解けたようで、サリー先輩は本を机に置いて、ノートに軽く書き込んでいった。サリー先輩の教え方は非常に優しく、わかりやすかった。ユリアの勘違いしている部分も見抜き、根本的な理解を促した。その他の問題も解くように言われ、やってみるとすんなり解けるようになっている。


「サリー先輩!ありがとうございます」

 ユリアは数学がスムーズに解けた感動でサリーの手を取った。そしてぶんぶんと動かしながら、感謝の気持ちを伝える。サリーは少し恥ずかしそうに笑うと、いつでも頼っていいのよといって去った。


(サリー先輩優しいなぁ)


 サリー先輩みたいになれたらいいなぁとユリアは密かに憧れた。誰にでも優しく、相手の気持ちを慮る。女神みたいだとユリアは思った。


 サリーのおかげで数学も順調に復習できそうだ。ユリアは数学に集中した。数字は論理的思考に基けば、あとは作業チックだとユリアは思う。公式に当てはめ、計算する。でも、その公式や基礎を根本的に間違っているとダメなんだよね…とユリアは先程を振り返って反省した。他の単元も復習しなきゃと見直していると、あっという間に時間が過ぎた。


(今日はもう帰ろう)


 ユリアが背伸びをして立つと、リゲルが目に入った。リゲルはまだ本を読んでいる。側には10冊以上の本が積まれており、まだまた読む気なのだとユリアは思った。

 リゲルをしげしげと眺めていると、目が合った。リゲルはユリアをじっと見つめ、そらさなかった。ユリアは手を少し上げ、振ってみた。リゲルは振り返さなかったが、軽くお辞儀した。ユリアはまさか何か返事が来るとは思っていなかったので、少し驚いた。


 リゲルとも少し話ができるようになればいいなとクルトの姿を思い出して、ユリアは思う。リゲルはクルトとテトとは少し話すが、基本的に人と話さない。どんな本が好きなのか、感動した本の話などできたら良いなとユリアは思うが、まだそこまで距離が縮まっていないので、難しいだろうとユリアは判断する。


 昼間は暖かいが、まだ夜は少し寒い。ユリアは上着を前まで締めると、ゆっくりと寮に向かった。

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