ポポラお爺さん
「2年生になると、石の加工について学ぶからのぉ。石の採掘や加工方法の基礎について一通りやるぞい。あと、果実についても平行してやるからのぉ」
2年生での実習についてポポラ先生は説明する。最近暖かくなってきたので、焚き火はもうしていない。ユリア達は草むらに座り、いつものお喋り兼座学をしていた。
「加護の訓練も果樹や石を扱う際でもやりますか?」
パトリックの問いにポポラ先生は少しずつではあるのぉと説明した。どうやら魔法を使うのはまだまだ後のようだ。ユリアは少しがっかりしたが、カリキュラムに従って、きちんと勉強するのが大事だと言い聞かせた。
「2年生になると、また座学の方も科目も増えて、大変だからのぉ。実習の回数はちと減るのじゃ。まぁ、それも3年になるまでじゃのぉ。3年生以降は実習が多くなるのぉ」
「5年生の終わりに魔法士の試験があるんですよね?では、6年生では何をするんですか?」
ユリアはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。
「12歳の試験で合格すると、残りの1年間は見習い魔法士として先輩の下で学ぶのじゃ。6年生は公爵家の魔法士としての実践練習のようなものじゃの」
ポポラ先生は、6年生が1番大変だと言った。魔法士の先輩の仕事についていくこともあるので、領地のあちこちに移動しなければならないそうだ。火属性や水属性などは特に移動が多く、体力的にも辛いのだという。
「まぁ、まだ考えるのは早いのぉ。目の前にあることを大切に学ぶのが大事じゃな。おぉ?エバンズ。また来たのか?」
エバンズがひょこりと木の影から飛び出してきた。エバンズはすぐユリアの側に座って、皆んなに手を振った。
「そういえば最近会ってなかったですね!エバンズさんお忙しかったのですか?」
パトリックがそう聞くとエバンズは勢いよく首を縦に振った。ユリアは公爵様にバレたのかなと予想した。年越し以来エバンズは姿を現していなかった。一度だけグレン経由で手紙が来たが、勉強を抜け出せそうに無くて悲しいと書いてあった。ユリアはエバンズが元気そうにしているのを確認し、安心した。エバンズというとユリアに会えて相当嬉しいのか、手をにぎにぎと握ってくる。
「エバンズや。もうそろそろ遊びに来るのも難しくなるのではないかのぉ?」
ポポラ先生はさびしいのぉと呟く。ユリアは小声で、そうなんですか?とエバンズに尋ねた。
「もうそろそろ高位貴族同士のお茶会が始まるの…。私も参加しなければならないそうで、時間に余裕がないの…」
エバンズはユリアにだけ聞こえる声で説明した。顔は見えないが、ひどく悲しそうだった。ユリアはお友達ができるチャンスなのでは?と問うたが、エバンズは首を横に振る。
「話を聞いていると息が詰まりそうなの。こんな風に気軽に話すことも出来ないし、作り笑いでマウントの取り合いだそうよ…」
礼儀作法の講師がそう言っていたわとエバンズは説明する。
「あのぉ!エバンズ殿!今後会う機会が減るようでわれわれ寂しいですぞ!」
「なぁ!今度の誕生祭にエバンズも一緒に来ないか?せっかくの祝日だし、フランに行って思い出作りしようぜ」
何か話し合っていた3人がエバンズに提案してきた。
「ポポラ先生、僕達が責任持ってお家に返します!ですので一緒にエバンズも街に出ていいですか?」
エバンズはポポラ先生の孫だと完全に勘違いしているパトリック達は、ポポラ先生に許可を求めた。
「わしは知らんがのぉ。エバンズ、どうじゃ?行けそうかのぉ?」
ポポラ先生ははて?という顔をしていたが、エバンズに話を振った。エバンズは行く、絶対行くとジェスチャーをしている。
(えっ、エルミー様、本当にエバンズとして街に出るつもりでは…!?護衛とか大丈夫なの!?)
ユリアは、自分達と公爵家の御令嬢が街に出るかもしれないと知り、パニックになる。いくらパトリック達がいるとはいえ、所詮子どもである。エルミー様に何かあれば一大事だ。絶対に危険である。ユリアはどうにか理由をつけて反対しようとしたが、エルミーがさっと耳元で囁いた。
「こっそりだけど、護衛をもちろん付けていくわ…!お父様には私から説明する!絶対に行きたいもの!お父様もわかってくださるはずよ!」
エルミーは本気で来るようだ。公爵様に説明するのであれば、大丈夫であろうとユリアは判断する。しかし、簡単に許可が降りるだろうか…ユリアはエバンズが行く気満々であるのを感じ、心配になった。
次の誕生祭は、アウレリア帝国の皇女殿下を祝うものだ。皇女殿下は精霊様の唄を授かりしお方であるため、皇位継承順位が最も高いと噂されている。アウレリア帝国では、生まれた順では無く、陛下の子どもの中で最も優秀な者が皇帝の座を受け継ぐことができる。皇子殿下も優秀な方だそうだが、皇女殿下の方が優位な位置にあると誰もが思っている。次の皇帝の最有力候補の誕生祭とだけあって、また豪勢に行われるそうだ。フランの街は皇女殿下を特に支持しているようで、林檎の飾り以外に、皇女殿下の魔法石のカラーを用いて祝うそうである。政治的な思惑も反映されたお祭りではあるが、ユリア達はまだそれを知らない。ただ純粋にお祭りが楽しみであった。
「誕生祭はエバンズも来ることだし、待ち遠しいな」
マックスが早く休みになれーと願っている。
エバンズも楽しみなようでぴょんぴょん跳ねていた。ポポラ先生は気をつけるのじゃぞとエバンズに言い聞かせていた。そのため、テトやパトリックはポポラ先生が祖父として心配しているのだとまた勘違いをしていた。
エバンズが少し心配だが、どうにかなるかなとユリアも少し前向きになった。護衛がついてくることだし、きっと大丈夫であろう。フランでの2回目の誕生祭はどんなものだろうか。ユリアは皆んなを眺めながら期待を膨らませていた。




