試験の感想会
試験が終わり、ようやく心に余裕もできた。試験の翌日は採点のため、休みである。ユリアは最近の疲れが一気に出たのか、昼過ぎまで眠っていた。ユリアは目を覚ますと屈伸をして、カーテンを開けた。今日は天気もいいようで、外には候補生達がピクニックしている姿が見えた。ぐうとお腹が鳴った。ユリアは軽く身支度を整える。パトリック達と、今日は自分の気分でゆっくり過ごそうという話になったので、会う予定はない。ユリアは髪を緩めのお団子に纏め、食堂に向かった。
食堂は人で賑わっている。ユリアは侍女達が並ぶ列に混じった。順番を待っていると、アイベルがやってきた。
「久しぶり!今日はお昼は1人?」
ユリアはこくりと頷く。
「もし良かったらなんだけど…お嬢様とお食事しない?お嬢様のお部屋でなんだけど」
ユリアは意外なお誘いに、いいの?とアンバーの瞳を丸くした。アイベルはお嬢様は喜んでくださるわと答えた。リリアンヌに許可を先に取らなくて良いのかとユリアは思ったが、アイベルはお嬢様はお優しいから私を叱ったりしないわと説明する。
2人で話して以来、互いに試験勉強で忙しく会っていなかった。ユリアは少しドキドキしながら、部屋に向かった。
「あら、あなたも来たの?」
リリアンヌはサラダを食べる手を止めて、ユリアを見た。アイベルがユリアのために椅子を用意する。ユリアはプレートをテーブルに置くと、リリアンヌの反対側に座った。
「1人で食べるよりも、誰か一緒の方がいいものね。まぁ、あなたでなくても良いのだけれど」
リリアンヌは照れているのかツンと横を向いた。
「私もフィアカート様と一緒にお食事できて、嬉しいです」
ユリアもサラダから食べ始める。リリアンヌは、別に私は嬉しくないわよとブツブツ呟いている。アイベルはリリアンヌの様子を見ながら、にこにこと笑って控えていた。
「そういえば…あ、あなたのノートとても役に立ったわ!歴史学の試験も何とかなった気がするわ」
リリアンヌは耳を真っ赤にしながらユリアに礼を言う。ユリアはそれは良かった!と拍手する。ユリアも自分のノートが少しでも役に立ったか気になっていたのだ。
「数学は中々難しかったわ…わたくし全部解けなかったのだけれど、あなたは?」
「私も全部は…7割くらいは解答しました」
ユリアの言葉にリリアンヌはえっと驚く。わたくしは半分もいいところですわと明らかに落ち込む。慌ててユリアは自分は後半の簡単な部分ばかり解いたのだと説明する。リリアンヌは最初から順番に全て解いたので後半に簡単な問題があったことも知らないようだ。リリアンヌは少し青い顔をしていたが、ユリアは前半の方が点数が高いので、総合して考えると同じくらいかもしれませんよとフォローする。
「実習の試験はどうでしたか?」
ユリアは自分たちは試験は無く、実習中に評価が行われたと説明した。
「わたくしたちは体力測定でしたわ。まだ加護の訓練には至っていないので、基礎体力をつける指導ばかりでしたもの。ですので、初回の測定と今回の測定を比べ、評価するそうですわ」
リリアンヌは案外運動は嫌いじゃないようで、測定も上手くいったと述べた。お嬢様達も体を動かすのかとユリアが驚いていると、リリアンヌは少し笑って説明してくれる。
「火属性と水属性の魔法は、防衛と攻撃なのはご存知?そう、基本的に魔法で戦うのだから身体を動かす必要は殆どないわ。一部は武器に魔法を付与して、戦闘するので身体を使うのだけれど、それ以外は魔法のみなの。だから、大抵基礎体力の訓練なんてされないのだけれど、此処では違うようね。身体の動かし方を基本として、発展させていくの。わたくしは割と楽しくやっているけれど、他の御令嬢はそうでもないわ…」
リリアンヌはそもそも女の子は攻撃魔法はあまり使わないとも説明した。リリアンヌが体力作りをしている姿も想像できなかったが、友人の御令嬢達が走ったり、筋トレをしているのはもっと想像できない。
「私の友人は話が違うと、いつも怒っているわ。公爵家の教育だから、魔法を最初から習うと思っていたみたい。だから実習の時はイライラしているのよね」
はぁとリリアンヌは溜息をつく。淑女として体を動かすのは一般的には推奨されていないし、野蛮とも捉えられるわと教えてくれた。
「そういえば…わたくし友人に素直に気持ちを伝えてみたの。でも、流石に直ぐには受け入れて貰えないみたい。わたくしのことをあからさまに避けているわ。そんな顔をしないで。わたくしは、自分のためにしているの」
リリアンヌは肉にナイフを通しながら、気にするなと目に強い光を宿し言った。ユリアは、リリアンヌと友人の関係なので口出しは出来ないが、少し心配でもあった。
「ところで、あなた経済学の意見問題についてどうなさったの?わたくしはあなた達のグループについて論じたわよ」
リリアンヌはどの部分に問題があり、その改善方法を説明する。ユリアも自分の書いた意見について軽く述べた。リリアンヌはユリアの考えに興味を持ったようで、詳しく聞きたがった。2人は次第に議論に夢中になった。自分の思う良い街とはと言う話にまで発展し、最終的には国全体を豊かにするにはまで広がった。
「わたくし、最も有名な学院に入り、国防に携わる魔法士になりたいの。中々女性の数は少ないのだけれど、私の夢なのよ」
リリアンヌは熱を込めて語る。
「具体的で素敵な夢をお持ちで、素晴らしいです!」
ユリアは自分の夢は漠然としているので、きちんと進路について目標を持つリリアンヌがかっこよくみえた。
「あなた、わたくしを馬鹿にしないのね…」
リリアンヌは小さな声で呟いた。実はアイベル以外で初めて他人に言った夢なのである。無理だろうと笑われるかもしれないと思いながら、リリアンヌは勇気を出して伝えたのだ。ユリアが凄いと目をキラキラさせて褒めてくれたのは予想外だった。リリアンヌは扇でさっと口元を覆い、溢れでる笑みを隠した。
リリアンヌはユリアが部屋に戻ってからも、そのことを思い出し、クッションをぎゅっと抱きしめたのであった。




