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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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試験当日

 試験当日は雲ひとつない天気だった。候補生の大多数が、胃が痛い、時間が欲しいと顔面蒼白で今日を迎えた。中にはフラフラと席に着き、恨めしそうに今日のスケジュールを睨みつける者もいる。徹夜をしたのであろう、目の下の大きな隈が生徒達の疲れを表している。

 試験が始まる数分前、皆最後の追い込みに必死だった。この数分で見た、覚えたものが試験で出るかもしれないという淡い希望がそうさせるのだろう。そんな中、ユリアは静かに試験が始まるのを待っていた。教科書を開いて読む事も、まとめたノートも確認しなかった。ただ頭の中で時系列順に単元をなぞっていく事に集中していた。最初の試験は歴史学だ。ユリアの大得意科目とだけあって、より神経を研ぎ澄ませる必要があった。ユリアは一通り満足すると、目を閉じて合図を待つ。

 ネクシア先生がやってきた。いつも通り無表情で紙を配り、始まりの時間を待つ。励ましの言葉など一切ない、ネクシア先生らしいやり方だった。


 歴史学は難なく解けた。あれだけ徹底して復習したのだ。何度も見直して、間違いがないか確認する。ユリアは歴史学は大丈夫そうだと安心した。自信はあったが、ネクシア先生の期待に応えたい自分でかけたプレッシャーもあり、少し不安だったのだ。次は経済学だと試験を終え、切り替える。


 経済学は少し変わった問題だった。半分は授業で習った金融政策や経済学の歴史などだった。しかし、残りは以前の発表に関する問いだった。自分以外のグループの意見を一つ取り上げ、思ったことを述べよと言う問題だ。なんとも難解な…とユリアは思った。褒めればいいのか、それとも問題点を指摘するべきなのか…とりあえずユリアは、北の森から人々を引っ越しさせる作戦について論じた。先生が述べた問題点だけでなく、新たな角度から批判し、解決策を挙げていった。一応紙いっぱいに意見が埋まったので、大丈夫だろうと判断する。


 午前中の試験が無事終わった。午後はユリアにとって山場の数学である。昼食はナッツ類で済ませ、とにかく問題を解きまくった。他の候補生達も教科書を眺めたり、過去の問題を解き直したり、それぞれ必死に取り組んでいる。



「おまえ、なんでそんなこと言うんだよ!?」

「はぁ?事実を述べただけだろうが!」


 試験まで残り10分を切った頃に、ベリムスが友人と喧嘩し始めた。どうやらベリムスが友人に必死に努力したって無駄だと言ったようだ。友人は流石に腹が立ったのか、ベリムスの前に立ち睨みつけている。周りの友人達は必死に2人を宥めている。

 候補生達は怒鳴り声の方を少し見たが、それどころではないようで直ぐに其々の用意に集中した。なかった。いつもなら候補生は興味津々で遠巻きに見ているが、皆切羽詰まっているのだろう。ユリアも何かやってる程度の認識で、それ以上話は聞かなかった。


 数学の試験は問題量が異常だった。ざっと計算しても、一問あたり20秒で答えなければ全て解き終えることはできない。ユリアは一瞬パニックになったが、落ち着けと静かに深呼吸をした。問題をまず全体的に把握する。後ろの問題まで見ていくと、後半部分が比較的解きやすい問題のようだとユリアは気づいた。闇雲に初めから解くよりは、簡単な部分からやるべきだとユリアは後ろの問題に取り掛かる。結局全ての問題を解くことはできなかったが、7割程度は解答した。少し出来は心配だが、クヨクヨしてはいけないとすぐにユリアは切り替える。


 数学が終わると、最後の試験、魔法士基礎学だ。属性別に部屋が分けられた。土属性4人は小教室に案内される。渡された問題を見て、ユリアはおぉ?と思った。まず目に入ったのは、1年間の実習の感想だった。白い紙の上の方にそれだけ書いてあった。2枚目は、土属性の社会的意義について述べよという問題だった。ユリア達は小論文形式だとは思わず、少し戸惑っていた。てっきり、歴史や土属性の加護のはたらきについての確認問題かと思っていたのだ。ユリアはこれまでの勉強会を思い出し、関連する事柄を整理していく。一問目の感想は自分の素直な気持ちを書くとして、問題は二問目である。土属性の仕事内容を思い出し、どのように社会に貢献しているかを考える。ユリアは少し書き方に迷ったが、自分なりに意見をまとめた。小論文は完璧な正解というのは無いはずなので、マイナスにはされないだろうとユリアは判断した。



 無事試験は全て終わった。結果はどうあれ、自分の努力の成果は出し切ったとユリアは達成感に包まれていた。1年前は孤児院で遊んでいた少女である。読み書きもできなかった子供が、試験に臨み、自分の納得する形で解答できたのだと自分を褒め称えるユリアであった。

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