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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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ユリアとフィアカート

 ユリアは次の日、夜に厨房を訪れた。アイベルが来るかもしれないと踏んでいたのだ。予想通りアイベルはやってきた。


「良かった。ユリアも来てたのね。話がしたいと思ったんだけど、ここでしか中々話せないから…」

 アイベルは厨房に誰もいないのを確認すると、ユリアの表情を伺った。


「あの、フィアカート様の体調は大丈夫ですか?」

 リリアンヌは今日の講義に来ていなかった。きっと体調が優れないのだろうとユリアは一日心配だった。アイベルは今は落ち着いているわと微笑んだ。


「あのね…まず私は勘違いをしていたの。ユリアは私の仕えるお嬢様がリリアンヌ様だって知ってると思っていたのよ」

 アイベルの言葉にユリアは、えっと声を上げた。ユリアは必死にアイベルトの会話を思い返す。会話の流れで言っていただろうがと悩んでいると、アイベルが苦笑いした。


「ユリアが初めてリリアンヌ様とお会いした日を覚えていない?私、あの時侍女として後ろに控えていたのよ」

 ユリアははて?と首を傾げた。あの時は御令嬢の言葉で頭がいっぱいになり、周りのことを見ていなかったと説明する。


「そうだったのね…!てっきり厨房で初めて私と会った時も、リリアンヌ様の侍女だと分かってると思ってたの。ユリアにとって、リリアンヌ様の第一印象はあまり良いとは言えないでしょう…?だから普通に話してくれたことに私驚いていたの。あの時から、私の勘違いは始まっていたわね…」


 そう言って、アイベルはリリアンヌが本当はユリアのことをどう思っているのかを説明し始めた。


「あのね、リリアンヌ様はユリアのことが嫌いではないの。それに、平民の事も本心では蔑んでいないのよ、むしろ仲良くしたいとも思っておられるわ。うんうん。中々信じられないのは理解できるわ。お嬢様はあなたに酷い言葉を投げかけた事があるものね。でもね、お嬢様はいつも部屋で後悔なさっていたわ…お嬢様はね、ご友人達と過ごす上で自分の意見を押し殺しているの。いつも側にいらっしゃる2人の方は幼い頃からのご友人なの。酷く平民を嫌っておられるのだけれど…リリアンヌ様は実家の繋がり等もあって、合わせるしかないのよ」

 ユリアは酷く困惑していた。図書室の時のリリアンヌはたしかに素直ではなかったが、そこまでユリアをバカにしたり傷つけようとはしていなかった。しかし、それ以前はどうだろうか。普通にユリアを蔑んでいたような気もする…。しかし、アイベルの表情はとても真剣だった。ユリアは、図書室のリリアンヌと友人に囲まれた時の彼女を比べ、アイベルの言うことは本当なのかも…と思った。

 実家に送る芋を運んでいるときに、リリアンヌに注意されたことがある。しかし、その時も馬鹿にするようなとこは言っていなかった。

 


「お嬢様、冬休みの間図書室でユリアに歴史学を教えてもらったわと嬉しそうに話していたのよ。リリアンヌ様は素直に自分の気持ちを伝えるのが苦手だから、失礼な行動をしたかもと心配もしていらしたの。まぁ、それ以前に友人に合わせて酷いことを言ったから、怖がられているとも考えていらして、ユリアが普通に接してくれたのが驚愕だったらしいわ…」


 でもね…とアイベルは大きく溜息をついた。


「ユリアがリリアンヌ様にノートを見せるってご友人の前で申し出た日があったでしょう?あの日は部屋に戻られて直ぐに泣いてしまわれたわ。私は、その場にいなかったから、何故突然お泣きになられるのかわからなかった。根気強く尋ねたら、あなたに酷いことをしたと言っていたの。せっかく普通に話せたのに、私からまた拒絶して酷いことをしたと落ち込まれて、食事もろくに通られてなかったの…」


 そうだったのかとユリアは驚く。先ほどから知らなかった事ばかりだ。アイベルはユリアの手をそっと握った。


「お願い。リリアンヌ様は確かにユリアに酷いことも言ったかもしれない。でも、決して本心では無いの。昨日も平民だと蔑んだけど、あれは強がりなのよ…だから、お嬢様と一度話してほしいの…」


 お願いしますとアイベルは頭を下げた。ユリアはとりあえず了承する。ユリアもリリアンヌと一度話したいとは思っていた。しかし、まさかリリアンヌがユリアのことを気にして、後悔したり泣いたりしているとは…。とにかく、リリアンヌ本人からも話を聞きたい。ユリアはいつ頃、話せるかアイベルに尋ねた。今日はまだ体調は落ち着いているとは言え、難しいだろうとアイベルは言う。


「明日お嬢様が調子が良さそうだった、夕方に来て欲しいの。試験前で大変なのに、ごめんなさいね」

 アイベルは少し泣きそうになりながら、ユリアに感謝した。

 ユリアは気にしないで、必ず行いますと伝え、アイベルト分かれた。リリアンヌは今も落ち込んでいるのだろうか…ユリアは明日話せると良いなと心から思った。


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