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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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御令嬢の侍女

 春の試験を1週間後に控えた今日、候補生達は目に隈ができ、寝不足だった。年が明けてから、あっという間に時間が過ぎた。勉強しても勉強しても、範囲全てを網羅出来ないと多くが嘆いている。

 ユリア達は独自の勉強会を講義終わりに毎日開いていた。歴史学はユリアが、数学はテトが先生役になって解説する。経済学と魔法士基礎学は皆んなで話し合いながら、細かく復習してきた。偶にリゲルとクルトも参加していた。リゲルはどの教科も基本的に出来るようで、クルトに憎たらしい奴だと頬をつねられていた。しかし、そう言うクルトも不得意な教科はないようで、パトリックやマックスが分からない点の補助をしている。

 そうした勉強会のおかげで、ユリア達6人はそこまでストレスは蓄積していなかった。候補生達は普段利用しない図書室に籠るようになり、時間の許す限りカリカリ勉強している。いつも偉そうに騒いでいるベリムス達も焦っているのか、休憩中も教科書に向き合っていた。

 ユリアはいつもの小教室でパトリック達と勉強会を終えて、寮に戻った。かなり集中して取り組んでいたので、月が顔を出していた。ほんの少し暖かくなってきたなとユリアは上着を脱いだ。春の試験と言っても、まだ花々は芽吹いていないし、少し肌寒い。しかし、肌を刺すような冷たさは無くなってきた。もうコートはいらないなとユリアは上着を抱えながら思った。





 寮につき、階段を登っていると、上から少女が降りてくる。試験前で疲れているのか、フラフラとしている。ユリアは大丈夫かなと少女を見ると、リリアンヌではないか。

 リリアンヌとはあの日以来話す機会が全く無かった。常に友人達といるので、声をかけるのも近づくことも出来なかったのだ。



 リリアンヌは足元が絡まって、倒れそうになる。



「フィアカート様!」

 思わず大きな声を出して、ユリアはリリアンヌを支えた。リリアンヌは有難うと頭を押さえて言った。助けたのがユリアだとまだ気づいていないようだ。どうやら頭痛がするようで、こめかみを強く押さえ、顔を顰めている。


「大丈夫ですか…!?お医者様をお呼びしましょうか?」

 ユリアは学舎の救護室に常駐している医者を呼ぼうと、頭の中で寮と学舎の往復時間を計算する。


「いや、それには及びませんわ…大丈夫ですの。大丈夫ですの…よ!?」

 ようやくリリアンヌは話している相手がユリアだと気がついたようだ。目を丸くし、ひどく動揺するも頭が痛むのか、顔を顰めた。


「とりあえず、お部屋に戻りましょう。私がお医者様を呼んできます。フィアカート様、私に掴まってください」

 ユリアはリリアンヌに肩を貸そうとする。しかし、リリアンヌは弱々しく手を振り払った。



「リリアンヌお嬢様!?」

 ユリア達の棟から侍女がやってきて、叫んだ。ユリアは侍女の声を聞き、一先ず良かったと安心する。侍女ならばリリアンヌを部屋に連れて行けるだろう。侍女がリリアンヌの元に駆け寄って来る。


「酷い頭痛のようでして、お部屋にお連れしてくださりません…」 

 ユリアは侍女にお願いをするため、振り返るとそこにはアイベルがいた。


「アイベルさん!?えっ、お嬢様って…え!?」

 ユリアも予想もしてない事態に、オロオロしてしまった。アイベルも焦っており、ユリア…と呟いた。しかし、リリアンヌを優先させなければと、直ぐにアイベルはリリアンヌに肩を貸す。


「あなた、私に構わなくてよくてよ!わ、わたしは平民なんかと関わりたくないのよ…」

 リリアンヌはアイベルに連れて行かれながら、弱々しい声でユリアを罵倒する。ユリアは呆気に取られ、リリアンヌが部屋に戻るのを見ていた。アイベルは、後で話をしましょうと辛そうにユリアを見た。


 1人残されたユリアは、訳もわからず立ち尽くしていた。アイベルの仕えるお嬢様がリリアンヌだったとは。アイベルには失礼だが、侍女に優しいお嬢様像とリリアンヌは直ぐに結びつかなかった。アイベルは平民である筈なので、平民に厳しいリリアンヌが優しくする姿はあまり想像できない。いいやとユリアは頭を振る。そんなの私が決めつけてるだけかもしれない。物事は思っているより複雑で、多面的に見なければならないのだから、と己を反省する。

 


(フィアカート様大丈夫かな…)


 ユリアはリリアンヌの体調を心配した。あの様子だと相当試験がストレスになっているのだろうと予想した。何か出来るとこはないだろうかと考え、ノートを見せる約束を思い出す。あの日以来渡せなかったが、今度こそリリアンヌに断られても渡すべきだろう。リリアンヌのこと、アイベルのことを考えていると、ユリアはふとある事を思い出す。


(私のスープを褒めてくださった方は、フィアカート様!?)


 わぁぁっとユリアは恥ずかしくて頭を抱えた。あんなシンプルと言えば聞こえがいいが、粗末なスープを…とユリアは顔を真っ赤にした。褒めていたというのは事実だとアイベルから教えてもらったが、それにしても他にもっと良いスープがあったろうにと、ユリアは過去の自分を責めた。当時は褒めてもらえて嬉しいとだけ思っていたが、誰が飲んだと実際にわかると凄く恥ずかしくなってきた。


 スープのことも含めて、アイベルとフィアカート様と話そうとユリアは決心した。アイベルの辛そうな顔も引っかかっているので、明日アイベルと話してみようとユリアは思った。





 リリアンヌとアイベル。意外なところで関係性があり、ユリアは困惑していた。しかし、アイベル側も戸惑っていた。アイベルもリリアンヌを看病しながら、早くユリアと話さなければと焦っているのであった。

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