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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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チーズと抱負

 今日は年越しである。パトリックとマックスは今日からフランの街に行き、それぞれ家族と過ごすそうだ。クルト達と話し合い、パーティーは夜に始める事にした。前準備も夕方から行う予定である。ユリアは昼前に起床した。今日は夜更かしをするので、沢山眠っていなければ…!自分に言い訳をする。今日は年越しとだけあって、寮には人が殆どいないようだ。昼食を作りに下に行くと、廊下はしんと静まり返っている。今日から3日間は食堂は休みだ。食堂と厨房自体は使えるが、料理人達はいないのだ。彼らも家族の時間を過ごすのだろうとユリアは、寝起きの頭でぼんやり考えた。

 軽く昼食を作り、部屋に戻っていると、アイベルが廊下にいた。ユリアが声をかけると、アイベルは驚いていた。


「久しぶり、ユリア!てっきり家族と過ごすのかと思ってたけど、寮にいるの?」

 ユリアはアイベルの質問に、他の人に説明したように答えた。アイベルは不躾な質問をして、申し訳ないわと謝ったが、ユリアは笑顔で気にしないでと返事した。


「アイベルこそ、年越しもお仕事なの?」

 ユリアは侍女の仕組みをよく知らないので、質問する。アイベルはそうよと答え、お嬢様は年越しは寮でされるみたいと小声でユリアに言った。

 ユリアは自分のように何か理由があって、寮に居るのだろうと察し、アイベルに深くは尋ねなかった。アイベルもユリアが事情を聞かないので、お嬢様は私がいれば、それでいいって仰るのとだけ、複雑そうな顔で説明した。


「今日はもう会わないかもしれないから、言っておくわ。良いお年を!」


 アイベルとお嬢様様にも良いお年を!とユリアは返事をして部屋に戻る。貴族のお嬢様にも色々事情があるのだなぁとユリアは食事しながら考えた。ところで、アイベルのお嬢様って一体誰なんだろうとユリアはふと疑問に思った。上級生だと名前を教えてもらっても分からないが、次会った時に聞くだけ聞いてみようと決心する。お優しいとアイベルが言っていたので、サリー先輩かなぁと思ったが直ぐに違うと頭を振った。サリー先輩の侍女さんは、美味しい紅茶を淹れてくださった人だと思い出したからだ。まぁ、聞けばわかるからいっかとユリアは直ぐ違うことを考え始めた。



 夕方になり、クルト達とユリアは厨房に集まった。今日作るのはチーズフォンデュである。レシピは事前におばさんに聞いてある。チーズの塊やフォンデュする食材は前もって料理人に用意してもらった。お金を出さずとも事前に頼めば用意してくれるという、何とも太っ腹な公爵家のシステムだ。

 料理人は質の良いチーズを用意してくれたようだ。ユリアはチーズを溶かしながら、その香りの豊かさに絶対美味しいと確信した。男子勢はフォンデュするブロッコリー、ジャガイモ、にんじん、ソーセージ、バゲット、キノコなどを準備してくれている。皆家の手伝いをよくしていたようで、手際が良い。ユリアはそっと様子を見て密かに感心した。

 時間にまだ余裕があったので、デザートも用意する事にした。年越しでも、精霊様への感謝をするため、必ず林檎などの果実を供える。そのため、ユリアはフルーツの飾り切りに挑戦した。林檎を薔薇のように切ってみたかったが、見栄えの良いとは言えないものが出来上がった。様子を見ていたリゲルが、ユリアの作りたかったものを察して、無言で林檎を切ってくれた。リゲルは手先が器用なようで、美しい薔薇の飾り切りをつくりあげた。ユリアは羨ましげに完成作品を見つめた。


 食事が出来上がったので、パーティーを始める。チーズフォンデュは一言で言うと最高だった。やはりチーズが質が高いだけあって、味の深みが違った。皆んな美味しいと言い合い、バクバク食べた。リゲルも気に入ったようで、ほんの僅かだが嬉しそうに食べている。リゲルはどうやらブロッコリーが好きなようだ。


「ポポラ先生もエバンズと過ごしているのでしょうかねぇ」

 ジャガイモを見て思い出したのか、テトが呟いた。クルトはポポラ先生?と首を傾げている。テトがエバンズは多分ポポラ先生のお孫さんですよと説明する。

 ユリアはエルミーは今頃家族団欒を楽しんでいるのだろうと想像した。エルミーは祖父母達も一緒に年越しをするそうで、朝から脱走は無理だと嘆いていた。ユリアは当然だろうと諭したが、エルミーはユリア達とも会いたいと頬を膨らませていた。今日はエルミーと朝から一度も会っていないので、きちんと屋敷にいるのだとユリアは安心した。

 

 4人でカードゲームをしたり、1年間の思い出話に花を咲かせていると、あっという間に時計は0時の5分前を指している。


 ユリア達はカウントダウンをしよう!と食堂の時計の前に立った。ここなら秒針も大きいので、わかりやすいとテトは言った。


「来年は2年生になるから、勉強もより複雑になるだろうけど、頑張ろうね!」

 クルトが新年に向けての抱負を伝える。


「今年は新しい生活が始まって、色々苦労しましたが、われら平民組今後も手を取り合っていきましょうぞ!」

 テトがおっー!と声を上げる。ユリアとクルトもそれに続いておっーと言った。


「途中参加の私を受け入れてくださり、ありがとうございます!新年も皆んなと過ごせるのが楽しみです」


 新年まであと数十秒。ユリア達はカウントダウンを始めた。


「5、4、3、2、1…新年も精霊様に祝福を!」


「精霊様に祝福を!」


 4人は拍手で新年を迎えた。アウレリア帝国のどの場所でも、今この瞬間、精霊様に感謝する言葉や家族、恋人の健康を祈る言葉を言い合っているのだろう。


 



 さぁ、新年の幕開けだ。ユリアの候補生生活はまだまだ続く。ユリアは年が明け、新年の抱負を密かに決めた。まずは春の試験だ。既に準備はしてきている。ユリアは春の試験で必ず満足のいく結果を出し、少しでも周りに認められたいと闘志を燃やすのであった。

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