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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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エバンズのシチュー

「あれ?エバンズ?」

 マックスがペアのカードを山に捨てながら、入り口を見て呟いた。ユリアも顔を向けるとエバンズが扉から顔を出している。顔と言ってもローブに包まれて見えないが。


「エバンズさん!一緒にゲームしないかい?」

 パトリックがもうすぐ終わるだろうから待っててとユリアの隣に椅子を一つ用意する。エバンズはこくりと頷いて椅子に座った。勝負は残りテトとマックスの一騎打ちだったので、ユリアはそれを眺める。テトがえいや!とマックスからカードを取り、拳を上に挙げた。テトの勝利だったようだ。マックスがゲームの敗者に決定したので、次は勝つと意気込んだ。


「エバンズさん、ババ抜きって知ってる?」

 パトリックの言葉にエバンズは首を横に振る。ユリアは簡単に説明をして、パトリックと簡易的にやってみせた。エバンズは理解したと頷いたので、マックスがカードを配り始める。


 先程負けたマックスから順に、パトリック、ユリア、エバンズ、テトに回していく。パトリックとユリアは順調にカードが減っていくが、中々エバンズは減っていかない。エバンズははて?と首を傾げている。ユリアが1番に抜けたので補助に回ることにした。次にパトリックも上がった。残るはエバンズ、テト、マックスである。エバンズも順調にカードを減らし、3人も接戦になって来た。えいや!とテトが大きな声でマックスのカードを取る。ありがとう、マックス殿と拳を上げ、テトも抜けた。


 エバンズとマックスの一騎打ちだ。ババはエバンズの手元にある。マックスはうーんと悩みながら、どちらにしようか手を伸ばす。しかし、わからないのでエバンズのカードを一枚取るふりをして、様子を伺う作戦に出た。


「いや、顔見えないから無理じゃんか!」

 マックスはだめだと頭を抱える。そして決心したように、これだぁー!とカードを抜いた。


 エバンズは声を出さずにぴょんぴょん跳ねて喜んだ。エバンズの勝利である。


 パトリック達もおぉと拍手をした。ユリアはカードが少なくなってから手伝いをしていないので、エバンズを褒める。エバンズはユリアのところにきて、カードゲームって楽しいのねっと嬉しそうに囁いた。


 しばらくカードで遊んでいると、グレンがやってきた。パトリックとマックス、テトに手紙と荷物が実家から届いてるので来てほしいそうだ。


「夕食はどうする?いつも通りの時間でいいか?」

 マックスがユリアに尋ねて来た。ユリアはそうすると言って、3人に手を振る。





「エバンズさん、夕食には屋敷に戻られますか?」

「もし良かったらなのだけど、私も一緒に食べていいかしら?」

 2人きりになったのでエバンズは普通に話す。しかし、そんなに長時間不在にして怒られないのか尋ねると、執事に説明したから大丈夫と言った。執事も公爵家の敷地内なので仕方ないと諦めたそうだ。お父様にもいつか説明しなきゃねとエルミーは溜息をついた。


 とにかく夕食まで時間はまだある。何をしようかと考えていると、エルミーが料理をしてみたいと言い始めた。


「私、料理に興味があるのだけど、絶対にさせてもらえないの。公爵家の令嬢が料理なんてとんでもないって侍女長が許してくれないのよ。そんなの身分なんて関係ないじゃない」

 エルミーはやはりお天馬娘のようだ。ユリアは侍女長さんが駄目というならやめたほうが良いのではと提案するも、エルミーの熱意に負けてしまった。包丁と火を使う時はエルミーでなくユリアがするという約束をして、2人は厨房に向かった。

 厨房の料理人も冬休みであるため、人数は少なめだ。この時間に厨房を使ってはいけないのだろうが、いつものおばさんは快く了承してくれた。


「エバンズさん、何か作りたいのはありますか?」

 エバンズはユリアの耳元で、シチューを作りたいと囁いた。ユリアはシチューを作るお手伝いはした事があるが、1人では作った事はないので自信がない。おばさんに相談してみると、快く手伝ってくれると言ってくれた。


「こちらの子はお友達?」

 おばさんは黒いローブをすっぽり被ったエバンズを見て尋ねた。見た目が候補生でもないようなので、気になるようだ。ユリアはお友達で、ポポラ先生のお知り合いですと紹介した。エバンズはユリアに友達だと言われ、嬉しそうにつま先で立った。


 まずは材料を切りましょうとおばさんはにんじん、ジャガイモ、ブロッコリー、玉ねぎ、鶏肉を持って来てくれた。ユリアはにんじんとジャガイモの皮を剥く。エバンズにはブロッコリーを洗って手で小さく千切る作業をやってもらうことにした。おばさんは鶏肉を切ってくれるそうだ。ユリアはさっと皮を剥き終わると、一口大に切っていく。

 材料の準備ができると、バターで玉ねぎを炒めるよう指示された。ここはエバンズにやってもらうことにする。火を使うので正直ユリアがやりたかったが、おばさんがエバンズにやってみたらと提案してしまったのだ。大人も居るから大丈夫かなとユリアは判断する。

 玉ねぎがしんなりしたところで、白ワインを少し加え、炒める。次に鶏肉に火を通す。大体火が通ったら、にんじん、ジャガイモを加える。その後、薄力粉を炒め、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。そして、水で煮込んで、塩と胡椒も少々加えた。

 ユリアはジャガイモとにんじんに火が通ったのを確認し、牛乳を加えた。とろとろになるまで弱火で混ぜていく。


「ブロッコリーとチーズを入れて混ぜたら完成ね」

 おばさんはエバンズにブロッコリーとチーズを渡した。ユリアはシチューのいい匂いにお腹が空いて来た。



「あっ!夕食はパトリック達と食べるんだった…」

 ユリアは約束を思い出し、しまったと頭を抱える。夕食を食堂で食べると言ったのに、シチューを作ってしまった。


「あら、ならこのシチュー皆んなで食べたらいいんじゃない?」

 おばさんが鍋ごと持っていって良いと言う。返してくれれば問題は無いそうだ。エバンズも賛成と言うふうにぴょんぴょん跳ねている。


「そうですね。美味しく出来ましたし、皆んなに振る舞いましょう!」

 ユリアもその方がエバンズが喜ぶだろうと判断し、持っていくことにした。




 おばさんにお礼を伝え、エバンズと男子寮に向かう。パトリック達は美味しいと言ってくれるだろうか、エバンズとユリアは内心ドキドキしているのであった。

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