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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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ユリアのノート

 今日は各自やりたい事があるようで、お昼は別々だった。夕食だけは集まって食べようと言う話になっている。ユリアは読みたい本があるので図書室に向かっていた。今日も寒いので、コートにマフラーとしっかり防寒している。鼻先が寒さで少し痛い。早く図書室に行こうと自然と足も早く進む。

 

 図書室に着くと、冬休みとだけあって人も少なかった。いつもいる上級生達も出かけているのだろう、姿は無い。ユリアは四大魔法士の歴史に関する本を探す。以前歴史学で習ったのだが、もっと詳しく逸話や武勇伝などを知りたくなったのだ。本は直ぐ見つかったので、近くの席に移動する。

 

 あれ?とユリアはテーブルに座って本を読む少女を見て首をかしげた。少女は歴史学や経済学、数学などの基礎の本を側に積み、勉強していた。こっそりと顔の見える場所に移動し、確認するとやはりリリアンヌであった。てっきりリリアンヌ達は街に出かけて、寮には居ないのかと勝手にユリアは思っていた。実際ユリアの棟には冬休みになってから、昼間は数人しか残っていないようだったからだ。リリアンヌは勉強に集中しているため、ユリアには気付いてない。

 邪魔をしてはいけないし、何よりユリアがいるとリリアンヌも嫌だろうと思い、ユリアはそっと離れたテーブルに着席した。リリアンヌは友人と一緒に過ごさないのだろうかと疑問にも思ったが、そういう日もあるのだろうと納得して、本を開く。

 



 四大魔法士に関する歴史の本は非常に面白かった。四大魔法士が解決した事件や事例など、関係者のインタビューを交えて詳細に記述されている。四大魔法士とは火、水、植物、土の魔法士のトップに君臨する魔法士である。四大魔法士の名は時代を先導する者に引き継がれていき、現在の土魔法士は26代目だそうだ。四大魔法士は皇帝陛下と魔法士組合、精霊会が主体となり選定される国を代表する魔法士だ。ユリアはその初代土魔法士の逸話を丁度読み進めていた。

 初代土魔法士は一晩で林檎の木を育て上げたという伝説が残っている。土魔法の加護は少なかったものの、魔法の扱いは天才だったようで、他にも素晴らしい数々の功績を挙げたという。ユリアはカッコいい…と土魔法士達の伝説を読み進め、感動する。自分もいつか魔法士になって、人々の暮らしを助けたいとユリアは思った。

 集中して読んでいたため、あっという間に時間が過ぎていたようだ。午後3時を告げる鐘が鳴り、ユリアは顔を上げた。体も少し痛いなと軽く背伸びをしていると、離れたところにいたリリアンヌと目があった。リリアンヌはユリアを見ると、さっと目を逸らす。しかし、いつものように睨みつけては来なかった。どうしたんだろうとユリアはこっそりリリアンヌを盗み見て、不思議に思う。心なしかリリアンヌは元気がないように見えたのだ。


(私が話しかけたら、不快になってしまわれるよね…)

 ユリアはリリアンヌのことが気になったが、話しかけはしなかった。本はあらかた読み終わったので、次の本を探す。何を読もうかなと思っているとリリアンヌが静かに側に来た。



「あ、あなた時間はあるのかしら!」

 リリアンヌが声をかけて来た。ユリアは自分にだとは思わず、周りを見渡す。しかし、誰もいないのでようやく自分に言っているのだと理解した。


「はい。時間はありますが…」

 ユリアはキョトンとして返事をした。


「あ、あなた歴史学は得意なのでしょう。わ、わたくし復習してるのだけれど…暇なら教えてくれても、よくてよ!」

 どうやらユリアに歴史学を教えてほしいようだ。ユリアは何故リリアンヌが歴史学が得意だと知っているのだろうと思ったが、快く承諾した。意地悪を言ってくる相手ではあるが、今日の雰囲気は何処か違うとユリアは感じたのだ。


「どの部分で困っておられるのですか?」

 ユリアはまずリリアンヌの躓いている点を知りたく、尋ねたがリリアンヌは顔を真っ赤にして、困ってなんかいないわと返事をする。

 ユリアは黙ってリリアンヌのまとめたノートを見た。おやと年代別の事件の部分を見てユリアは気づいた。事件の発生順序がバラバラになっているため、関連する政策や関係者の名前もまとまっていないようだったのだ。


「この事件なのですが、これとこれは後ですね…」

ユリアは失礼しますと言って正しい順番を書き込んでいく。そして関連する事柄を軽く説明しながら、メモをした。歴史学は暗記というイメージが多いのだが、暗記よりも情報整理力が求められるとユリアは感じている。わかりやすいように表にするといいかもしれませんとユリアは助言をする。自分のノートは講義終わりに、自分なりに表にしてまとめているとも説明した。


「あなたのノート、み、みたいわ」

 リリアンヌはふん!と顔を逸らしながら言った。ユリアは苦笑し、いつでもお見せしますよと答える。まさかリリアンヌに歴史学のノートを見せる日が来るとは…とユリアは思った。



 リリアンヌはその後もいくつか歴史学の質問をしてきた。ユリアは自分のわかる範囲で答え、講義をより理解するためのポイントを説明していく。そんなことをしていると、夕食の時間になった。ユリアは申し訳ないが行かなければならないと伝えて、リリアンヌと分かれた。リリアンヌは、今日は助かったわと目を合わさずお礼を言った。

 ユリアは男子寮の食堂に向かいながら、案外リリアンヌは悪い人じゃないのかもと、真剣に話を聞く彼女の姿を思い返していた。

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