歳上の子ども
年末の2週間休みが始まった。候補生達は早速親戚や家族に会いに街に出かけていった。中には2週間まるまる家族がフランに滞在するので、3日ごとに外泊届を申請する人もいるそうだ。ユリアは予定がない時は図書室に行ったり、テト達と一緒にご飯を食べたりして過ごしている。
今日もテトとクルト、リゲルとお昼ご飯を食べた。パトリックとマックスは街に出掛けると言って朝から居ない。リゲルと共に過ごす時間が増えたことで、最近なんとなく考えていることが分かるような気がするとユリアは思った。大抵無表情で話に参加はしないが、クルトが話を振ると興味がある話題は、ほんの少しだけ眉が動く。ユリアも何度か話しかけてみたが、まだ一度も動いていない。
昼食後4人で話していたが、グレンがどうもとやって来た。グレンは仕事も殆どなくゆっくり出来ているようで、いつもより生き生きとしている。
「ユリア、お嬢様がお呼びだよー」
グレンの言葉にクルトが反応した。お嬢様って…?と不思議そうな顔をしている。グレンが言うということは、候補生ではないだろう。つまり…と誰のことを指すか察したようで、ユリアさんどういう関係なんだいと軽くパニックになっている。ユリアはグレンに急いでついていく。クルトにはテトが説明してくれるだろう。
「ユリアさんー!会いたかった!」
今日招かれた部屋はエルミーの私室だった。エルミーはやっと話せると喜び、ユリアにソファに座るよう促した。
「冬休み中会えないかと思ってた!ご家族はフランにはまだ来ていらっしゃらないの?」
エルミーはユリアにずっと会いたかったが、中々抜け出すことができなかったと説明する。ユリアも自分は孤児であること、冬休み中のルールを知らなかったために孤児院の先生と今年は会えないことを伝えた。
「まぁ…ユリアさんは孤児だったのね。知らなかったわ…というかお父様がユリアさん達に冬休みの規則をきちんと説明していなかったのよね!?全く!お父様に文句を言っておくわ!」
エルミーはぷんすか怒り始めた。大人びた美貌ではあるが、エルミーは可愛らしく頬を膨らます。小さな子供みたいで可愛いとユリアは年上のエルミーを見て思う。
「今年はいいのです。孤児院も年末は忙しいので、きっと来るのも大変でしょうし」
その後は最近の講義のことやユリアの孤児院での暮らしなど、ユリアに関することをエルミーは知りたがった。
「そうそう!経済学の発表が素晴らしかったとボラム先生から聞いたわ!ユリア達のグループは歴代の中でも最も革新的でユニークな意見だったと絶賛よ!お父様も資料をご覧になったそうで、もしかしたら年明けお声がかかるかもしれないわ」
これはまだ秘密よとエルミーはウインクする。ユリアは恐れ多い…!と恐縮するばかりであった。エルミーは優しく、ユリアと仲良くしたいという気持ちを全面に出してくれるが、ユリアはまだ緊張気味だった。公爵家の御令嬢に失礼がないようにとばかり考えてしまう。
そんなユリアの態度に気づいたのかエルミーは悲しそうに話を始めた。
「ユリアさん、私ね強引だったわよね。候補生の子に公爵家の娘が友達になってなんて言うのは、命令と等しいものね…ユリアさんずっと緊張しているもの…わ、わたしね!友達がいなくて、作り方も本で読んだの…だからこんな風になってしまって…あれ、つまり…」
おろおろとエルミーは頭を抱え、悩み始める。ユリアはそっとエルミーの手を握った。無礼だと怒られるかもしれないが、サルラン先生が子供を落ち着かせる時によくしていたのを思い出したからだ。
「ビビアンド様!確かに私はまだビビアンド様の前で緊張して、自分を曝け出すことが出来ていません…。なので、時間をかけて友達にならせていただきたいです。まだ互いのこともよく知りませんし、一緒に過ごした時間も短いです。これから、友達になっていきましょう」
ユリアは緊張気味に本心を伝えた。ユリアだって友達になりたいのだが、何せビビアンド様として会ったのは数回であるし、本当に互いのことをまだ知らないのだ。
「その…もしよかったら、私のことエルミーって呼んでくださらない?あぁ…これも命令みたいになってしまうかしら…」
エルミーはしょんぼりすると近くにあったクッションに顔を埋めた。
「エルミー様!よかったら、私のことはユリアと!」
エルミーはぱぁと笑顔になり、ユリアァと抱きついてきた。ユリアはエルミーの肩におずおずとまわし、トントン優しく叩いた。
「あ!私いいこと思いついたわ!冬休みの間暇がある時にはエバンズとして遊びにいくわ。ユリアがもし良かったらなのだけれど…」
ユリアはその提案に承諾した。エバンズの方がそこまで緊張しないまま一緒に過ごせるかもと思ったのだ。
「お父様には内緒なの!だから侍女達の目を掻い潜らないといけないわね。あまり行けないかもしれないけど、頑張るわ!」
ユリアは侍女達の慌てようを想像し心配になったが、エルミーの行動力を思い返し、やめた方がよいのではと言うのを諦めた。
「わぁー楽しみだわ!あっ!そうそう、今日は一緒にお茶を飲みたかったの」
ユリアはパンパンと手を叩くと侍女が静かにやってきた。お茶をご用意してとエルミーが言うと、静かに部屋を退出する。ユリアは侍女さんさっきの話聞いていたのではとエルミーに尋ねたが、エルミーは自信満々に脱走は得意なのと胸を張った。案外お天馬な御令嬢である。
「ユリア、私ねやりたいことがあるの…!」
エルミーは声を顰めて、ユリアに頼み事をする。ユリアは子供だけでは危ないのではと思ったが、ポポラ先生に話を通すわと言って聞かなかった。




