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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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発表

「さてさて、3週間の準備期間を設けましたが、皆さんいかがかな?うむ。皆きちんと準備してきたようですな。この発表では意見も被ることがあるでしょうが、問題はありません。自信を持って各自発表するように。それでは最初の発表グループは…」

 ボラム先生はお腹をいつものように抱えて、発表グループを指名した。


 最初の発表者はリリアンヌ達であった。黒板に資料を貼りつけると青の髪の子が説明を始めた。


「私達が提案するのは、慈善活動でよく行われる炊き出しです。この炊き出しをする理由としてはまず…」

 候補生達は真剣に話を聞いている。一部のグループは同じ意見だったようで、少し焦っていた。やはり意見が被ると評価が高いのは貰えないと思っているのだろう。

 リリアンヌ達の意見は、魔物被害によって冬を越せない村や町の人の救済が第一というものだった。炊き出しは貴族達も慈善活動で貧民街や孤児院に対してよく行うものであった。ボラム先生はふむふむとメモを取り、いくつか質問をした。


「炊き出しだと冬の間ずっと村や町に滞在するということですかな?滞在場所の確保や費用などはどの様に考えているのでしょう」

 先生の質問にリリアンヌ達は少し焦り、急遽話し合いをしている。そこまで考えていなかったようで、結局未定ですと小さな声でリリアンヌが答えた。ボラム先生は発表有難うとリリアンヌ達を労うと軽くメモを取っていた。


「質疑応答もあるわけか…」

 マックスはなるほどと頷いた。他の候補生達も大変だと質問されそうな事を仲間とヒソヒソ話し合っている。


 次の発表者は、村や町の人々を別の領地に移すという意見だった。森の近くに住んでいるからこそ、危険が伴うので土地が余っている近くの領地を移転先に挙げた。村や町の人が引っ越しにかかる費用や、新たに家を作る時の費用なども試算したそうで、しっかりとした意見であった。しかし、ボラム先生は人がいなくなった後の町や村はどうするのかという質問をした。人がいなくなったことで、森から来る魔物の範囲が余計広がり、跡地の家などに住み着く可能性もあると指摘した。しかし、発想は面白いとメモを取っていた。発表者達は少し安堵して席に戻っていった。



 他の発表者達はリリアンヌ達のように食糧を送るなどの意見や、魔物討伐部隊を送って魔物を殲滅するという意見だった。領地の部隊だけでなく、近くの子爵家や男爵家の部隊を使う事で、領地に囚われずに部隊を利用してはどうかという意見も出た。ボラム先生は、領地の討伐部隊を使わないメリットはと尋ねると、領地の討伐部隊の出動コストを抑えられると同時に子爵家や男爵家の名誉が上がると答えた。ボラム先生はうーむと微妙そうな反応をした。しかし、発表ありがとうと皆平等に労ってくれる。



 最後にベリムスとユリア達のグループが残った。ボラム先生はベリムス達に先に発表するよう告げた。


「私達のグループは、森自体を消滅させる事を提案します」

 大胆な提案に教室は騒めく。森を消滅させるなど聞いたこともないし、あり得ない…とみどりの属性の候補生は呟いた。


「魔物の被害で困っているのであれば、魔物が出現する森を切り倒し、更地にすればいいのです。実際に火災などで森が消失し、魔物が全く出なくなったという事例もあります」

 ベリムスの隣に立つ少年が森林火災の新聞記事を黒板にいくつか貼っていく。

「森を切り倒し、この木材を使って新たに家を建ててもよし、売ってもいいでしょう。魔物で生活が困窮するなら、魔物が出ないようにすれば良いのです。それでは、どのように森を消滅させるか、いくつか提案があります。まずは火を使って…」

 ベリムス達はどうだと得意げに説明していく。他の候補生達は、想像もしていなかった考えに驚いていた。しかし、敬虔な精霊会の教徒や植物を大切にするみどりの属性、そしてユリア達も微妙な顔をしていた。確かに、森を消滅させれば魔物被害は出ないだろう。しかし、森には様々な植物や動物達も暮らしている。森を切り倒し、更地にしてしまえば、それこそ植物の精霊様の怒りを買ってしまうかもしれない。


「正直に言いますと、その意見はあまり賛成はできませんな。植物の精霊様が大切にしておられる森を消すというのは大変失礼なことです。これが意見の段階なのでまだ少々咎められる程度でしょうが、実際に行うとなると大変問題になるでしょう。まぁ、一つの意見としては受け入れましょう。今はまだ学びの段階です。自由に発想しよという文もあるので、マイナスにはしません」

 ボラム先生の言葉にベリムスの取り巻きが反論する。


「しかし、木を伐採して加工をしているのも事実ですよね?それは問題ないのですか」

 ボラム先生は確かにそうではあると説明する。しかし、精霊様は私達の暮らしが豊かになるため木を切って利用する分には許してくださるが、森を故意に消滅するのは確実に違うことだと諭した。


 ベリムス達は不満げだったが、他のグループよりは確実に爪痕が残せたと確信していた。さぁ、お前らの番だとユリア達を見てにやついている。自分たちより目立つ意見が出るなど思ってもいないのだろう。

 ボラム先生はベリムス達を労い、ユリア達を呼んだ。ベリムス達は馬鹿にしたように見ていたが、一部の生徒は大本命の番だと姿勢を正している。講義終わりに集まって真剣に議論をしている姿を目撃した者たちは、今回も面白い意見が出るだろうと密かに楽しみにしている。


 ユリア達は、さぁいくぞ!と立ち上がった。ユリアは大きく息を吸って、前に出た。

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