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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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鑑定の儀

 「それではユリアさん。鑑定の前に質問ですが、誰かに見せるのは先生以外では初めてですかな?」

 「先生にも見せたことないです。なので鑑定士さまが初めてです」ユリアはそう言うと首から小さな黒い布袋を外した。


 「鑑定士様、実は私も見たことはないのです。保護者として許可があることは承知しておりますが、伝統に則って鑑定の儀まで見ないと孤児院では決めております。」


「それは大変信仰が深く、精霊様も喜んでおりますでしょう。最近では儀の前に友人などにこっそり見せてしまう人もおりますようで。絶対に見せてはいけないという訳でもごさいませんが、可能な限りは秘密にしていただきたいのですが。」鑑定士はしみじみとそう言った。



 私たちを見守る精霊様は誕生の際に祝福として魔法石を必ず下さる。私たちは精霊様への感謝の気持ちを込め、子が産まれる時期になると窓辺に精霊様の好物である果実を供えておく。すると、子が産まれると果実を置いていた場所に魔法石を置いてくださるのだ。ちなみに、ここアウレリア帝国では林檎を捧げるのが主流となっている。

 精霊様がくださった魔法石は生涯本人が大切に扱うことを推奨される。精霊様の加護は魔法石を通して発揮し、本人のみ反応するものであるからだ。そしてユリアが今回行う鑑定の儀というのは、魔法石を鑑定し、どの精霊様の加護を受けているのか確認するものである。先程鑑定士が言ったように、伝統としては鑑定の儀までは、本人、保護者、祝福の魔法石を見つけた者以外には見せてはならないよう伝えられている。


 「ではユリアさん。こちらに魔法石を置いてくださいませ」鑑定士は台座に真っ白な布を敷いて言った。ユリアは黒い布袋から魔法石を取り出して、そっと置いた。


 「おぉ。これは…琥珀ではありませぬか!」鑑定士はユリアの魔法石を様々な角度から見て、興奮気味に言った。

 「琥珀の魔法石を誕生の祝福として授かった者は珍しいですぞ。数年に一人いるかいないかですかの。しかし、話に聞いていた通り、ユリアさんは土の加護を授かったようですな」

 ユリアは自分の石は単なるつるりとした茶色い石だと思っていたため、鑑定士の話を聞いて驚いた。

 「ユリア、凄いじゃない!とても光栄なことよ」サルラン先生も嬉しそうだっため、ユリアも誇らしくなった。

 

 「改めて説明しますが、どの精霊様の加護を授かったかは祝福の魔法石の色によって分類されます。ユリアさんは琥珀色であるため、土の精霊様の加護を受けたようですな。それでは次にどの程度精霊様の加護の力と相性が合うかを確認させていただきます。精霊様は私たちに加護を授けてくださいますが、私たちが加護の力を使うこと、魔法にして使うことは私たちの能力次第でございます。加護の力を使うにあたっては、完全に私たちが生まれ持った相性によるものです。相性が良いほど、より加護の力は発揮されるでしょう。では、鑑定を始めましょうか。ユリアさん魔法石を持っていてください。少々お待ちを」


 鑑定士は棚に並ぶ箱のうち左端の一つをそっと持ち上げ、台座に置いた。箱の蓋を慎重に開けると、中には白い植木鉢にふかふかの土が入っていた。

 

 「ユリアさん、こちらは土の精霊様との加護の力を確認する植木鉢でございます。水の精霊様は水瓶、火の精霊様は火鉢、植物の精霊様は花の種を使用します。精霊様と関わりの深いものを用いるしきたりとなっております。それでは、ユリアさん。魔法石を土の上に置いてくださいませ」


 ユリアは恐る恐る魔法石を土に置いた。すると魔法石は輝き始め、部屋全体を白い光が包み込んだ。


 「素晴らしい!土の精霊様の加護をこれほど発揮されるとは…。土の精霊様の加護をいただく者自体は四つの加護のうち最も多いのです。しかしこれほどまでの力を示す方は中々いませぬぞ!これは非常に喜ばしいことであります」鑑定士は手を叩いて喜んだ。ユリアは輝く魔法石を見つめ、感謝した。


(精霊さま、ユリアに素敵な加護をくださって、ありがとうございます。先生も鑑定士さまも喜んでいて、ユリアも嬉しいきもちでいっぱいです)


「これにて鑑定の儀は以上でございまする。ユリアさんの活躍を私も期待しております。そして、われらの精霊様には大きな感謝をいたしましょう。未来ある子に祝福をくださり、ありがとうございます」

「「ありがとうございます」」


 鑑定の儀を終えたユリアとサルランは、鑑定士に挨拶を告げた後、祈りの林檎の木にも心からの感謝を伝えた。精霊会を出ると辺りは既に夕暮れであった。ユリアは旅の疲れが一気に押し寄せたのか疲れた顔をしていた。そのため、サルランは夕食は宿で食べて、明日ユリアが選んだ店でステーキを食べようと提案した。ユリアは素直に頷き、サルランに手を引かれて宿へと向かった。

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