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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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パンとチーズ

 ユリアは部屋に戻り、早速机に向かった。気になっていた属性別基本情報というページを開くと、ノートにまとめ始める。


火属性

 火の精霊様の加護魔法。炎を作り出し、大きさや温度を変化させる。炎の色として赤、黄、白、青があり、青が最も温度も威力が高い。攻撃魔法や防衛魔法がメイン。貴族の4割が火属性。


水属性

 水の精霊様の加護魔法。水を作り出し、操る。水を液体、個体、気体に変化させる魔法。攻撃魔法や防衛魔法に加え、水で作る芸術魔法も扱う。貴族の4割が水属性。


植物属性(みどり属性)

 植物の精霊様の加護魔法。野菜や花、木など植物の育成、品種改良に関する魔法を扱う。対象外として果実の木、根菜。平民の3割がみどり属性。


土属性

 土の精霊様の加護魔法。果実、根菜の育成、魔法石を含む鉱物、石の加工を扱う。最も人口が多い属性だが、魔法士の数は最も少ない。また、平民の6割は土属性。



 ユリアは自分で見返す為に簡潔にまとめてみた。他にも各属性の主な職種や進路についての説明など、気になる部分がまだまだあったが、既に日は落ちて月が顔をのぞかせている。チラリと棚の上に置いている時計を見ると21時を過ぎていた。おばさんと話せなかったな…と日課になっている授業の成果や嬉しかったことなどの報告が出来なかった事をユリアは残念がった。

 お腹も減ったので、厨房に行ってみようと、薄手の上着を羽織り外に出た。グレンは確か裏から入り、名簿に名前を書くと利用できると言っていた筈だ。ユリアが裏の方にまわると、厨房は誰かいるようで灯が僅かに扉の下から漏れていた。

 「こんばんは」ユリアは扉を静かに開けると、挨拶をした。中には16歳くらいの小柄な侍女が何かを温めていた。どうやら匂いからしてスープのようだ。ユリアに気がつくと、お辞儀をして直ぐに作業に戻った。

 邪魔しないように静かに後ろを通った。ユリアは食物庫にパンとチーズがあるのを見つけると、パンとチーズを厚めにスライスし、フライパンにのせた。かまどに火をつけようと、蝋燭の火を探したが生憎魔法石のランプしか無かった。流石公爵家、厨房にも高価なランプが置いてある。

 マッチがないかも確認したが、見当たらなかった。温めるのは諦めようと思い、パンを紙ナプキンに包んでいると、侍女が声をかけてきた。


「あの…宜しければお手伝いしましょうか?」

「え、いいんですか?」ユリアは火を分けてくれるのだと思い、火を移すための丁度いい薪を探す。

「あ、私が火をつけますので、お待ちください」侍女はそう言うとポケットから布袋を取り出した。彼女は黒い袋を強く握りしめ、目を瞑った。

 

ぽんっ


 小さな炎がかまどの中で生まれた。炎は少しづつ大きくなり、パチパチと燃え始めた。侍女はフライパンを乗せ、パンが温まるのを待っている。


「凄い…!火属性の加護をお持ちなのですね!ありがとうございます」ユリアは初めて見る火属性の加護の力に感動し、頭を下げた。


「私は小さな火をつけることしか出来ませんが…お役に立てたら嬉しいです」侍女は淡い緑の瞳を細めて、微笑んだ。


「あ、あの!私、ユリアと言います。よかったら、お名前を聞いてもいいですか?」

 ユリアは親切にしてくれたこの人と仲良くなりたいと思い、思い切って尋ねみた。


「アイベルと申します!」

 アイベルはそう言って、フライパンの様子を見て、パンをひっくり返した。


「アイベルさんですね!すみません、私やりますよ」ユリアはアイベルからフライ返しを渡してもらった。ユリアはチーズを、温めているパンにのせた。


「アイベルさん、私は平民ですし、大分年下なので、敬語は使わなくてもいいと思います!」

「候補生の方にそういうわけには……いや、2人の時だけならいいかもですね!よろしくね、ユリア」アイベルは少し悩んでいたが、ユリアがお願いします!という顔で見つめるので了承した。


 チーズが丁度良い感じに溶けている。ユリアは紙ナプキンの上にパンを移動させた。


「あっ!いけない!スープをはやくお持ちしなければ…ユリアごめんなさい、お嬢様のもとに行かなければならないの。またいつか会おう!」そう言うとアイベルは急いで厨房を出ていった。


 ユリアはアイベルに手を振り、かまどの火消しをした。パンをそっと持ち上げて、部屋の灯りも落とし、厨房を出た。


 今日は親切な人ばかりに出会ったな…と一日を振り返って思った。よしっ!明日からも頑張ろうと決意をして、ユリアは部屋に戻っていった。

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