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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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土属性の立ち位置

 一通り食べ終えたので、食後のコーヒーを頂くことになった。


「ユリアさんはコーヒー飲んだことある?」

 パトリックがユリアに尋ねた。

「いえ。聞いたことはあるのですが、飲んだことはないです」

「そっか。じゃあコーヒーの苦味に驚くかもだね〜。あ、最初はカフェオレにしたらどうかな?牛乳が入ってるからそこまで苦くはないよ」

 パトリックが気を利かせて提案してくれた。ユリアは任せた方が良いと判断して、頷いた。


「コーヒー2つとカフェオレ2つお願いします」パトリックが近くを通りかかったウェイトレスを呼び止め、伝えた。

「テトさんもカフェオレ?」ユリアが隣に座るテトにそっと尋ねると、テトはぶんぶんと横に首を振った。

「わたくしはコーヒーですな。カフェオレはマックス殿が飲まれるです。マックス殿は甘いものがお好きですからな」

 テトはマックスに気づかれないよう声を抑えて答えた。


 甘いものが好きとは意外だなとユリアは思った。マックスをチラリと見ると、何故か目があった。マックスは直ぐに目を逸らし、不機嫌そうな顔になってしまった。


 コーヒーとカフェオレが運ばれてきた。青い美しい陶器のカップに入れられ、香ばしい香りがふわりと漂っている。マックスはシュガーポットから砂糖を3個取り出し、カフェオレに入れた。パトリックはミルクを少し入れるとかき混ぜた。テトはと言うと、何も入れずに味わっている。ユリアは、コーヒーは砂糖とミルクを入れるのだなと理解した。ユリアもマックスのように砂糖を3個入れてみたが、あまりの甘さにびっくりした。カフェオレの味自体は美味しかったが、甘い物好きのユリアにとっても3個は多かったようだ。オーレン様は相当甘党なのね、とユリアは思った。


「おぉー?こいつら見てみろよ。平民と一緒にいるぜ」

 突然数人の男の子達がユリア達のテーブルに近づいてきた。先頭に立つ男の子は、以前グレンと一緒にいた時にユリアを馬鹿にした赤茶色の子だった。


「貴族で土属性なのも恥ずかしいだろうに。平民なんかとつるんで食事だなんて。パトリックもマックスも落ちたものだなー?」

 ゲラゲラと一緒にいる男の子達も笑っている。カフェにいる他の候補生達は遠巻きに様子を眺めている。半数はニヤニヤ笑って楽しんでいるようだが、興味なさげな人達やあからさまに顔を顰めている人達もいた。


「ベリムス。土属性が恥ずかしいなんて、精霊様に失礼だろ。それに此処では身分など関係ない実力主義のはずだぞ」

 パトリックは少年たちを静かに見据えて言った。


「ほぉ?土や石いじりばかりの魔法士なんて地味だと思われているのは事実だろうが?本当は俺ら火属性や水属性が羨ましくてたまらないんだろう。かわいそうに、強がって平民とまで仲良しごっこして」

 ニヤニヤした顔でベリムスは言うとユリアとテトの方を見た。


「おい、お前ら。早く家に帰れよ。ここはお前達が来ていい場所じゃないぞ?」


「いい加減にしろ。うるさいぞベリムス」マックスが立ち上がってベリムスを睨みつけた。


「おいおいおい。マックス冗談だろう?お前はパトリックに付き添って平民と一緒にいるんだと思っていたが。あんなに馬鹿にしている平民を庇うのか!」ベリムスはわざとらしく驚いた表情を作った。


「例えこいつらが平民だろうと、家に帰れだなんてお前が言っていい言葉じゃない!こいつらも公爵様が認めた候補生だ。必要かどうかは先生方と公爵様が決めることであって、お前じゃない。お前の言葉は公爵様の判断が間違っているとも取れるぞ!公爵様にお前の言葉を全部報告してもいいんだからな」マックスはカフェ全体に響き渡る声で叫んだ。


 ベリムスはぎょっとして、固まった。ニヤニヤしていた取り巻きたちも動揺している。


「そ、そういうわけじゃねぇ!ま、まぁ、いいさ!お前の言う通り公爵様がそいつらの評価をされるが、結果はわかってるようなものだからな!」

 ベリムスは捨て台詞を吐くと取り巻き達を連れてカフェを去っていった。


 ベリムス達が居なくなると、様子を見ていた人たちも元通りざわざわと話を始めた。


「庇ってくれてありがとうございました」

「マックス殿、ルワン殿!われらの為に、誠にありがとうこざいまする!」

 2人は感謝の気持ちを伝えた。ユリアはマックスが庇ってくれたことに感動した。平民は嫌いだと言いながら、なんだかんだテトやユリアに酷い言葉は投げかけてはいないし、むしろ気にかけてくれている気がした。


「別に…俺は公爵様の判断を侮辱するような発言が気に入らなかっただけだ」マックスは腕を組み、ふんっと顔を逸らした。

「マックスは素直じゃないんだからなぁ」パトリックはマックスを見てニコニコ笑った。


「すみません。あの…なぜ土属性は馬鹿にされたのでしょうか…?前もあの方に土属性は役に立たないと言われたのですが…」ユリアはベリムスの馬鹿にした笑みを思い出し、パトリック達に尋ねた。


「あぁ…。彼が言っていたように土や石を扱う魔法士は、火属性や水属性など見た目が派手な技を使う魔法士と比べて地味だというイメージが貴族にはあるんだ。似たような理由でみどりの魔法士もそこまで評価は高くない。はぁ…精霊様の加護は等しく尊いものなのに。失礼な考えだよね」


「だが、地味なのは俺も思うぞ。みどりの魔法士は花なんかを品種改良して綺麗なものを生み出すからまだ土属性より評価が高いが、俺らは果実やじゃがいもなどしか育成できないし、石の加工とかだし。それに大概、土の魔法士は研究者気質な奴ばかりだから引きこもり、根暗のイメージが余計強くなってる」マックスはぶすっとして説明した。


「しかし、ユリア殿!土属性の魔法士は人数が少ないながらも、その功績は素晴らしいものですぞ!石の加工品は我々の生活のあらゆる場面で利用されておりますだ。人の生活を豊かにする手助けをしておりますです!果実だって、精霊様の好物であらせらるし、わたくしは素晴らしい仕事だと思いますです」テトは必死に土属性の良さをユリアに説いた。


 ユリアは話を聞いてほっとした。やはり馬鹿にされるようなものではない無いと改めて確認できたのだ。しかし、ベリアスという少年達とは可能な限り関わりたくないな…と心の中で思った。

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