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アウレリアの乙女達  作者: たぬきしっぽ
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土属性

「ほれほれ〜。これ長靴、で、帽子。あと軍手じゃの。」

 先生は籠から物をぽんぽん出しては、地面に置いていった。

「みな、準備せい。ありゃ?今日から新入りの子が来るんじゃったな」先生はユリア達を見渡した。


「ぉぉ…君か!なんだ見たことある面じゃな〜」

「ポポラ先生!わ、わたくしはテトでござりまするよ!新入りの方はこちらにおりまする、ユリア殿ですぞ!」

 先生は何故かテトを新入だと認識しているようだ。先生は、はて?という顔をしてユリアを見た。


「おぉー!君じゃったか。わし、トトラ・ポポラじゃ。新入りが来てくれてひじょーーーうに嬉しい!」

 ポポラ先生はユリアにウインクした。


「よ、よろしくおねがいします!」ユリアは大きな声で挨拶をすると、ぺこりとお辞儀をした。


「今日はのぉ、ほれ。あれだ。なんじゃったかの?」

 ポポラ先生は頭を叩いて思い出そうとする。今日の予定を完全に忘れてしまったようだ。それをみたパトリックがフォローする。

「先生。今日は土魔法の前準備として、じゃがいもを植えてみるって言ってたじゃないですか」

「あ〜そうじゃった。そうそう。サルトック、ありがとうありがとう」

「先生。こいつはパトリックですよ」マックスが冷静につっこんだ。


「あー、すまんすまんのぉ。とりあえず、皆準備じゃ。帽子と長靴、軍手を装備するのじゃ」

 パトリックは直ぐに準備にかかった。マックスは非常に嫌な顔をしながら、なんで俺がこんな格好しなきゃいけないんだとぶつくさ文句を言っている。ユリアも準備をしていると、長靴と軍手がぶかぶかなのに気づいた。


「すみません。先生。あの…サイズはこれしかないのでしょうか?とてもブカブカなのですが…」おずおずと先生に伝えると、

「ありゃー!すまんのぉ…男物しか用意してなかったぞぃ…次からマリーの分を用意しとくでな。今日は我慢できるかの?」申し訳なさそうにポポラ先生は言った。

「あっ…はい。わかりました」名前が違うことに気づいたものの、ユリアは訂正せず頷いた。


「ポポラ先生、そいつはマリーじゃなくてユリアです」

 マックスが名前を訂正してくれた。


(ユリアの名前覚えてくれてるんだ…!)

ユリアはちょっと嬉しい気持ちになった。



「さぁーて!まずは畑を耕してみよーかの。1年の最初の課題はジャガイモ作りじゃからなぁ。前回の講義ではジャガイモがどうやって育てられるか座学をしたの。ジャガイモが土の中で育つことも貴族は知らんのは、毎年の事だが、今年はジャガイモは茹でられたものしか知らんものがおったのぉ。傑作じゃな!わひゃわひゃわひゃ」

 先生は思い出し笑いが止まらなくなってしまった。横でマックスが顔を真っ赤にしてプルプル震えている。


「マックス殿!茹でられたジャガイモしか食べたことないが故に、知らないのは仕方ないであらせらるよ!恥ずかしいことじゃないですぞ」テトのフォローは逆効果のようだ。マックスはテトを睨みつけると頬を強くつねった。



「ルワン様、どうしてジャガイモを授業で育てるのですか?」

 ユリアはまだ実習が始まらなさそうだと判断し、パトリックに疑問を投げかけた。

「ユリアさん、僕のことはパトリックと呼んでください」

「え、あ、はい…」ユリアはコクリと頷いた。


「ジャガイモを育てるのは、土属性の魔法士の基本を学ぶためですね。あ、ユリアさんは座学はまだでしたよね?」

「はい。まだ何も知りません…」


「土属性の加護を受けたものは、土に関連する分野が得意なんです。そもそも加護の力と魔法は似ていますが、正確に言うと別のものです。精霊様の加護の力は祈りによって発動するものですが、操作はできないものです。一方で魔法は精霊様の加護を原動力に、術を発動し、自由に操作するものです。加護の力が強ければ、魔法も強くなるので、加護の力をいかに発動できるかが初めに候補生に求められることなのです」

 パトリックはそう説明すると、畑の土を指さした。


「そしてジャガイモを育てるのは、土属性の加護の力を引き出す練習のためです。僕たちはまだ魔法を扱う段階ではないため、加護の力の訓練がメインです」

「そうだったのですね。ちなみになのですが、土属性というのは野菜を育てるのが得意な魔法士ということですか??」

 ユリアは純粋な疑問をぶつけた。

「そうとも言えますが、そういうわけではありませんよ。土属性は野菜に関しては、土の中で育つ根菜だけしか扱えないんです。野菜や花などを扱うのは植物の属性、通称みどり属性の人達なんです。逆にみどり属性の方は植物全般を扱うのですが、果実の木だけは例外です。果実の木の育成などは僕たち土属性の分野らしいです」

「なんだかややこしいんですね」

 ユリアは一気に新しいことを聞いたので、頭がパンクしそうだった。あぁ、早く読み書きが出来れば、メモをして見返せるのだろうと思った。


「おぉーぺトラック、わしの代わりに授業してくれてたんかのぉ。ありがたいありがたい」ポポラ先生がひょっこりとパトリックの後ろから顔を出した。


「ペトロック、大事なことを忘れておるのぉ。土属性は、鉱物の加工も得意としておる〜。鉄や鉛、金も銀も魔法石も!魔法を上手に使えるようになると石ならなーんでも加工できるようになる〜すごいじゃろ?すごいじゃろ〜この前なんてな、わしの同僚の土属性の奴が…」ポポラ先生は得意げに土属性の凄さを語り出した。


「どうやら今日は実習始まらなそうだね」パトリックは苦笑いをして、先生の話をうんうんと聞き始めた。マックスとテトはまだ何か話している。と言っても、テトのおかしな発言にマックスが怒っているだけのようだが。


 

 実習は心配していたより、楽しそうだ。新しい情報が手に入ったことも嬉しかったが、土属性のメンバーが優しそうな人が多い事を知れたことが1番だった。


 (なんだか、うまくやっていけるかも!)


 候補生になってから、初めて少し気分が晴れたユリアであった。

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