お嬢様のお遊び
ジュリアと瓜二つの少女も意地の悪い表情を浮かべると履いていた絹で編まれたハイヒールでその下等兵らしき男の頭を踏みつける。
「あら本当に頭が高い男ね。
どうしましょうか。あら見てジュリア。
この男ったら、こんなに美味しそうに私の靴の裏を舐めていてよ。ほほほほほほ」
始めこそ諌めたものの、ジュリアと呼ばれる少女より楽しそうに靴の踵を男の顔に押し付け喉を反らせて笑う。
「ルナ。もういいんじゃないかしら…?」
始めは楽しそうに兵士を虐めていたジュリアも引くほどルナの言動はどんどんエスカレートしていた。
「あら、私ったら。ほほっ」
漸く解放された兵士は急所は外れていたため目立った外傷はない。
しかし、ハイヒールで踏まれ、蹴り上げられ、罵詈雑言を浴びせ続けられたため今日一日で白髪増えただろうなーとジュリアはひっそりと同情した。
「お嬢様方、どうもありがとうございました!」
ここだけ切りとったら危ないプレイをしてる人だよね私達とジュリアはいつの間にか傍観を決め込んでいた。
ルナがもう後はやってくれるだろう。
「構わなくってよ。大方、騙されて兵士にされていたのでしょう?
ジュリアも私も誰にでもこうしているわけではないわ」
そうなのだ。
ジュリアはたまたま愛馬のバロンに牧草を食べさせるために屋敷から出ていた。
そのとき、身なりの貧しそうな脱走兵を見つけたのだった。
この王国では身を尽くして国を守る者に対しては国を代表する立場として誇りを持つべく訓令がなされる。
身なりの貧しい官兵などいるはずがないからジュリアはこの私兵の脱走を助けてやることに決めたのだった。
私兵なんて捨て駒と同じだ。
「お嬢様方、かたじけない。
しかし、私め(わたくしめ)の身元は割れておりまして、妻や子供たちの元にも帰れないのでございます。」
脱走兵は悲しみにくれた瞳で途方に暮れていた。
そんな脱走兵を見てルナは高らかに笑う。
「あら。いくらジュリアが手を出していても、それだけで私は加勢したりしなくてよ。
私はね、お前の目が気に入ったの。
どう?ご家族も呼び寄せて私達に仕えなさい」
あ、ルナは善意の女じゃなかった。
どっちにしても強制労働なんだ。
見切り発車のわりにお嬢様がいい性格してます。