犯罪の見えない世界
小学5年生の高桐一真は疲れていた。
その目の下には立派なクマができており、太陽が燦々と降り注ぐ中、通学路を歩いていた。
その足取りは重く、近くを歩いている他の小学生と比べても覇気のない姿が見てわかる。
大人気のシューティングアクションゲームをして寝不足とか、宿題が終わっていなくて徹夜をしたから等ではなく、「学校に行きたくない」ただそれだけが頭の中でずっと考えていたら寝れなくなっていたのだ。
5年生になり新しいクラスになったが、よく話していた友達は別のクラスにいき、一真だけがぼっちの状態だった。
その状態を目につけられたのか、クラスの人気者からは下に見られ、いつしか見せしめのようになっていた。いつのまにか変な噂も流され、クラス中から陰口をたたかれクスクスと笑われているのが日常と化していた。
せめて少しでも話したくないように登校時間ぎりぎりに学校に着くように歩くようになっていた。
クラスに入ると誰も自分と会話しようとはせず、教室の隅にある自分の席に着いた。
すると後ろからいきなり肩をたたかれた。振り返るとそこには毎日俺をいじってくる
田川裕太がいた。
「おまえ今日も学校に来たのかよ。なんで毎日来るわけ?来る意味あるの?」
なぁ?と田川は周りに取り巻き3人に訪ねながら俺のことを笑っていました。取り巻きも笑い、クラスにいた他の奴も渡っていたり、こちらを見ようとはせず、無視をしていた。
ここで逆らってもより被害が増すため、俺はいつも下を向いて何も喋らなかった。
田川達はチャイムが鳴ると担任が来る前に自分の席に戻り、何も奈刈田のように振る舞う。
5年生になり、ターゲットが俺になってから毎日続いているが、いい加減我慢の限界だったが、どうやって解決すればいいのかわからなかった。同じように手を出せばいいのか、思い切り起こればいいのか考えてもわからなかった。
そんなことを考えていると担任が大きな段ボールを抱え、クラスに入ってきた。
「皆席についてるね。今日は全校生徒にある物が配ります。この箱を後ろの席の人まで渡していってね。」
そう言うとA5ほどのサイズの段ボールが全員に配られた。中を開けると銀色に輝く腕輪が入っていた。
「ではみなさん、箱を開けたらTVに注目してください。説明が流れます。」
担任はTVのスイッチをつけるとスーツ姿の男がTVに映った。
「みなさん、おはようございます。いきなりですが、みなさんの学校の生徒は当社のテスターに選ばれました。みなさんの手元にある腕輪は新型のケータイ電話です。2年間無料で使える物です。自分の腕に通して見てください。」
画面の男がそのように言うと、クラスから歓声が上がった。ほとんどがケータイを持っていなかったため、ケータイがもらえるとなると喜びの声も上がった。
「やべー!!」「ラッキー!」「私ケータイ欲しかったんだー」などの声が上がっていた。
担任から「うれしいのはわかりますが、まだ説明しているのでTVを見るように!」と言われると全員喋るのを止めTVの画面に注目した。
「腕輪を腕に通した後は真ん中に着いてあるボタンを押してください。このボタンを押すと自動的に設定されます。皆様の身体情報を記録するため1週間は操作は不能となっています。1週間後またTVで使える機能の説明をいたしますので腕輪はそのままつけた状態で日常をお過ごしください。では1週間後にまた会いましょう」
そう言うと説明していた男は画面から消え、TVの電源も消えてしまった。
「全員説明のあった通り、腕輪をつけ、ボタンを押してください。先生が確認したら直授業に移ります。」
クラスメイト全員が腕輪をつけボタンを押した。ボタンをおすと「せっていちゅう」と表示されたためこのままの状態で過ごすことになった。
俺もケータイは持っていなかったため早く触ってみたいと思っていたが、中休みの時間中
田川達がやってきておれの腕輪を取ろうとしてきた。
「こんなのにケータイなんてもったいないから俺によこせ!」といって取られてしまった。
腕から腕輪が取れ田川が離れていった時、教室中に響くアラームが鳴った。