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宇宙船の接近

「キリ、宇宙船が見えてきたよ」


 宇宙船のシグナルがモニターに映った。

 ダイーク号から0.1光年の位置にある。

 予想通り、宇宙空間を漂っている。


「ユイ、相手とコンタクト出来るか?」

「うん、有効通信範囲にあるよ。呼び掛けてみる」


 緊急修理依頼を出した船に間違いない。

 モニターに映る宇宙船は一隻。

 キリ達を除くと他に誰もいないようだった。


 キリ達が受信した緊急修理依頼には、エンジン故障、航行不能の内容と共に、宇宙船の型が記されていた。

 

 特定の誰かに宛てられたメッセージではない。

 不特定多数に向けた、オープン通信だった。

 通常、オープン通信の場合、相手の素性は分からない。

 だから、オープン通信で送られるメッセージは無視される。

 ほとんどがジャンクメッセージだからだ。


 キリ達も最初、疑心暗鬼だった。

 オープン通信による緊急修理依頼。それも、深刻を示す緑色だった。 

 ただ、メッセージの内容が簡素なだけに、リアリティがある。


 ジャンクメッセージは嘘に塗れている。

 テンプレートの嘘だ。

 人を騙すことを目的としている。

 だから、心に訴えかけない。


 一方、このメッセージは無味乾燥だ。

 宇宙船修理屋のキリ達からすれば、返って真剣に思えてくる。

 それに、オープン通信であることが深刻さを伝えているように思える。

 オープン通信は、宇宙のコミュニケーション方法の最終手段だ。

 そのオープン通信から自分たちを求める声がある。

 宇宙空間では、信頼が大切だ。


〈・・・こちらダイーク号、こちらダイーク号。聞こえますか?・・・・〉

〈・・・こちら、停止中の宇宙船だ。聞こえている〉

〈・・・私たちは0.1光年の距離にいます。そちらに向かっています〉

〈・・・ああ。連絡をくれた連中だな〉

〈・・・キリ宇宙船修理屋です。無事ですか?〉

〈・・・ああ。ただ、エンジンが故障して身動きが取れない〉

〈・・・了解しました。もうしばらくお待ちください〉

〈・・・ありがとう。待っている〉


 通信が終了した。

 緊急修理依頼を受信してから、数日経過している。

 無事だったようだ。


「キリ、今の遣り取り聞こえた?」

「ああ。生きているな」

「くすっ。そうだね」

 取り敢えず、無駄足に終わらずに済みそうだった。


 依頼相手の宇宙船が近づいてきた。

 宇宙を写すモニターにはその姿がはっきり映る。


 キリ達が見たことのない宇宙船。

 事前情報の通り、古い型の宇宙船だ。

 ブートの言葉通り、骨董品と言える船だ。


「ダイーク、減速してくれ。相手の船と相対速度を合わせてくれ」

「了解です。減速します」


 キリの合図に、ダイーク号は速度を落とした。

 瞬間、体に重力が働く。


 相手の宇宙船は完全停止状態でない。

 おそらく、故障したときの速度で動いている。

 接地するために、完全停止状態にしなければならない。

 まさか、高速移動場で修理は行えない。


「ダイーク。接近後、相手の宇宙船を完全停止させる。頼むぜ」

「了解」


 宇宙空間の事故の多くは、宇宙船の近接触によって起こる。

 高速移動の宇宙船接近は、真空の宇宙空間に引力を生む。

 完全AI制御の宇宙船であっても、予期せぬ事態が起こりうる。

 もし、高速移動下で完全接触すれば、宇宙船は一瞬に消し飛ぶ。

 まして、今回の相手の宇宙船は制御不能状態だ。

 宇宙船の高速移動は、人の手の制御の範囲外だ。


 AIだけが、高速移動をコントロールできる。


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